森愁斗の歩みを、最初から歌える人の活躍として眺めると、見落としてしまうものがあります。
BUDDiiSのSHOOTとして初めて録音した頃には、短い一節にも手こずっていました。
それが数年後には、曲の大事なつなぎを任され、ほかのメンバーへ歌のパートを提案し、曲作りにも加わっていきます。
何が増えたのか。
歌声の派手さよりも、録音で求められることと、彼が引き受ける役割の変化からたどります。
歌うことが身近でも、初めての録音は難しかった
兄のMORRIEこと森英寿と、子供の頃から歌っていた愁斗。
兄弟でハーモニーを作ることもあり、音楽は日常の中にありました。
ただ、職業としての歌を意識するまでには、もう一段階あります。
中学生の頃にBTSのパフォーマンスにひかれ、さらに兄のライブを見たことが、自分もステージに立ちたいと思うきっかけになりました。
兄弟で気軽に歌う楽しさと、観客へ届ける歌への憧れが、活動の入口で重なっています。

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2021年のデビュー曲「CLICK ME」では、最後のサビへ入る直前の一節を担当します。
独学で歌ってきた本人にとって、録音の場で指示される細かな歌い方を実現するのは簡単ではありませんでした。
スタッフと練習し、直しながら、何度も録り直しています。
曲の雰囲気を変える大切な場所だからこそ、一節を歌えれば済むわけではなかったのです。
8LOOMでの経験を、自分のグループへ持ち帰る
2022年のドラマ『君の花になる』では、期間限定のグループ、8LOOMとしても活動しました。
BUDDiiSを離れて別の歌手になったのではなく、二つの活動を並行する経験です。
本人はその重さを感じながらも、両方の仲間に支えられたと振り返っています。
そして、外で得た経験を使ってBUDDiiSをもっとよくしたいと考えるようになりました。
新しい居場所を得たことが、元のグループで何ができるかを考え直す機会にもなったのです。
同年の「her+art」の録音には、その姿勢が具体的に表れています。
SHOOTは、自分の担当ではないものの、歌ってみたいパートを家で練習していました。
実際に歌う機会が訪れると、その準備が採用につながります。
KEVINも、さまざまな現場を経験した彼の成長を、この録音で感じていました。
決められた一節を仕上げるだけでなく、急に任された場所にも応えられるようにしておく。
歌い手としての準備の範囲が、担当箇所の外へ広がっています。
全員が歌う「Magic」で、声を受け渡す側へ
2023年の「Magic」は、10人全員が歌う曲として、新たな挑戦になりました。
制作したUTAとは、SHOOTにとって8LOOMから続く縁があります。
録音前にはデモを聴き込み、曲に込められた意図をつかんで、現場で求められたことへすぐ対応できるように練習しました。
デビュー期にも修正を受けながら歌っていた彼が、今度は修正に応えるための準備を自分で整えている。
録音の前後を見渡すと、そこに経験の積み重ねが見えてきます。
UTAは、それぞれの歌い方を尊重する作り手でもありました。
デモを覚えることと、本人らしく歌うことは対立していません。
意図を理解したうえで、その場の助言に応えられる柔軟さを育てていたのです。
さらに「Magic」では、FUMINORIの声が合うと思った場所を、SHOOT自身が提案しています。
自分がどこで目立つかだけでなく、誰の声なら曲に合うかまで考えた録音でした。
全員の歌をつなぐ曲だからこそ、他人の声を聴く耳も、歌い手としての仕事に加わったわけです。
もちろん、成長しても、難しい曲がなくなるわけではありません。
同年の「Glow Gold」では、SHOOTもサビの音程や旋律の動きに苦労しています。
歌いやすい音の並びとは違うからこそ、練習を重ね、形になったときには手応えがありました。
新しい曲を任されることは、完成した得意技を披露する機会であると同時に、まだ慣れていない歌い回しを覚える機会でもあったのです。
短い準備でも応える声と、自分で選ぶ切なさ
2023年のアルバム『BRiLLiANT』に収められた「Lack」では、SHOOTは曲の切なさを感じ取り、歌い回しを自分で考えています。
同じサビを歌う兄との違いも意識していました。
指示へ正確に応える力に、自分の声をどう置くかという判断が重なっていきます。
2024年の「JUBiiLEE」は、24時間で曲を作る企画から生まれました。
鎌倉で集めた体験を歌にするため、録音の準備に使える時間も限られています。
そんな条件でも、KEVINは、自分の求めた歌い方にSHOOTが応えてくれると信頼していました。
難しい旋律でも、ほしい形で返ってくる。
初めての録音で一節を何度も直していた頃と比べると、制作を進める側が彼へ寄せる期待も変わっています。
短時間で済ませたことより、短時間でも任せられる関係が育ったことに意味があります。
本人は、音や節回しを曖昧にすると、曲に自分の歌がはまらないと感じていました。
時間が短いぶん、一回ずつデモを聞き直す集中が必要でした。

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裏声を使う曲では、歌と動きを両立させる
2024年の「Instinctive Love」では、別の難しさに向き合いました。
SHOOTが挙げたのは、高めに声を出す感覚と裏声を使う歌を、ダンスと一緒に成立させることです。
録音で声を作れても、身体を動かす舞台では同じ条件になりません。
本人はこの曲を好みながらも、裏声の多い歌を踊りながら歌う難しさを話しています。
好きな曲だから自然にできる、という話ではありません。
声の表現を広げるほど、ステージでそれを保つ課題も具体的になっていきました。
翌2025年の「Iris」では、曲の入り口をSHOOTが担います。
KEVINは、冒頭の彼の歌によって作品の世界が立ち上がることを魅力として挙げました。
サビ前の一節を学んでいた歌い手が、第一声で曲の印象を決める役割を任されるようになっています。
ただし、この曲でも新しい歌い方への戸惑いはありました。
MORRIEは、自分とSHOOTが、慣れない息の使い方に苦労したと説明しています。
任される役割が大きくなっても、歌い方の学び直しは続いていました。
「RUN」で、歌を形にする段階にも加わる
その前段には、2025年の「LÖVE ME」があります。
SHOOTはこの曲の歌詞をすべて担当し、好きだと伝えられない恋心を題材にしました。
歌い手として与えられた言葉を表情にするだけでなく、自分で歌の言葉を用意する。
曲への関わりは、2026年を待たずに、作る側へも広がっていたのです。
2026年のアルバム『THIS IS BUDDiiS』には、KEVINとSHOOTが初めて共作した「RUN」が収められています。
二人は曲の方向を相談し、従来のかわいらしさとは違う、歌とダンスの格好よさを生かす作品を目指しました。
出来上がった歌をどう表現するかという段階から、どんな歌をグループで届けるかという段階へ。
SHOOTの関わる範囲が、ここでも広がっています。
共作したKEVINは、SHOOTの理解の速さと周囲を見る力を評価しています。
新しい試みへの期待に加えて、二人で作ったことで、これまでとは違う要素が曲に入ったという手応えがありました。
歌うときに培ってきた相手の意図をつかむ力が、共同制作の場でも生きていると受け取れます。
SHOOT自身も、このアルバムを作るうえで、自分たちが関わらないという選択は考えにくいと話しています。
何を届けたいかを、当事者としてよく知っているからです。
用意された作品に歌声を入れるだけでなく、作家と一緒に自分たちの要素を濃くしていく。
そこまで含めて、いまの彼が考えるグループの表現になっています。
初期の苦戦と後年の信頼をつなぐのは、急に声が別人のようになったという物語ではありません。
一節の指示を覚え、担当外も準備し、ほかの声を考え、曲の入口やつなぎを引き受ける。
その積み重ねが、制作にも意見を出せる歌い手へとつながっています。
現在の声の使い方は、森愁斗の歌い方で、具体的な歌唱の場面から掘り下げています。

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