佐々木李子は、自分の歌い方を、低音を響かせるものとして捉えています。
一方、2025年の「Majestic Catastrophe」では、主旋律と違う声の出し方で、ファルセットを使ったコーラスも歌いました。
一人の歌手が、同じ曲の中で、異なる役割の声を担っています。
低音の響きを持つ歌手が、重なるコーラスや力強い長い音では、どんな選択をしているのでしょうか。
本人が説明した声の使い分けと強弱の調整、2026年の「花邑 -Hanamura-」で取り組んだリズムから考えます。
低音の響きは、本人が別の声から知った特徴
佐々木が自分の低音について語ったのは、2025年6月のリスアニ!の取材でした。
普段とは違う、アイドルのようにかわいいキャラクターの声で歌ったことで、自分は低音を響かせる歌い方だと気づいたと説明しています。
これは、歌える最低音の数字についての話ではありません。
本人が知ったのは、いつもの自分が、声のどんな特徴を使って歌っているかということです。
違う声を保って歌うと、普段とは異なる部分で歌う感覚があったとも話しています。
役の声との違いが、ソロでの声の使い方を知る手がかりになりました。
この本人の説明を踏まえると、佐々木の歌を考える際には、声の高さと声色の両方に目を向ける必要があります。
低い音を歌っているかどうかに加え、曲の中でどんな声を選んでいるか。
「Majestic Catastrophe」の主旋律とコーラスは、その使い分けを本人が具体的に話した例です。
主旋律とは違う出し方で歌う、コーラスのファルセット
「Majestic Catastrophe」のコーラスは、当初は別の歌い手が担当する予定でした。
ところが佐々木は、その部分を気に入って自分でも練習していました。
録音現場で試してみると、その声で挑戦しようという話になり、コーラスもすべて本人が歌うことになったのです。
2025年のUSENの取材では、合唱のように声を重ねたコーラスの中で、ファルセットの部分は集中して、細かな感覚を研ぎ澄ませて歌ったと説明しています。
いつもの主旋律を歌うときとは、声の出し方を少し変えたとも話しました。
この曲の一人の歌には、主旋律で使う声だけでなく、重なる声に合うよう選んだ発声があります。
ファルセットは、一般に裏声と呼ばれる歌い方です。
ここでは、本人がコーラスの一部をどのように歌ったかを説明する言葉として使っています。
曲全体の高音を、すべて同じ発声で歌っているという意味に広げず、声を重ねる部分での選択として捉えると具体的です。
そして、主旋律とコーラスでは、表したい存在も違いました。
主旋律では、その世界を導く強い存在として歌い、コーラスでは、それを仰ぎ、共に戦う人たちの気持ちで歌ったそうです。
声の出し方を変えることが、一曲の中で違う役割の人物を表すことにもつながっています。
佐々木の発声を聴くときは、前に出ている一つの旋律だけでなく、その後ろに重なる声も追うと面白くなります。
本人が別の声の出し方を選んだ部分を、主旋律との関係で捉える。
重厚なコーラスを、最初から別の歌手の声だと考えずに聴くことで、一人の声の使い方の幅に注目できます。

画像出典:写真掲載元
力を抜くことで、強さを際立たせる
「Majestic Catastrophe」の録音は、声を強く出し続ければ完成するものでもありませんでした。
佐々木は、最初は気合いが入りすぎて、歌うときに力が入っていたと思う、とSPICEの取材で振り返っています。
強い存在として歌わなくてはいけない、という気持ちが強かったそうです。
何度か歌ううちに、そこで気づいたのが強弱の大切さでした。
力を抜いたほうが、強さが際立つと感じたのです。
強い曲を歌う中にも、力を抑える選択がありました。
この話では、歌の主人公として持つ意志の強さと、実際に声を出すときの力加減が分かれています。
強い気持ちを保ちながら、歌い方には弱さや繊細さを置く。
その変化があるから、強く歌うところも目立つと本人は捉えていました。
曲を初めて聴いたときには、力強さに加え、繊細なピアノの旋律の美しさも感じたと話しています。
AメロやBメロ、Dメロなど、優しい強さを込めたい部分では、その気持ちにこだわって録音しました。
伴奏の音色から受け取ったものも、どんな強さで歌うかを選ぶ理由になっています。
アニメイトタイムズの取材でも、祈りを表す部分では、それまでの声色と雰囲気を変えたと説明しています。
その後の最後のサビでは、闇を極めるような力強さを意識しました。
一曲の中で、気持ちの違いを声色と強さの変化にしているのです。
長い音を、途中から強めていく
SPICEの取材では、佐々木はロングトーンの扱いも説明しています。
音をそのまま伸ばすだけでなく、クレッシェンドしていく感じを、ディレクターの意見も聞きながら一緒に作りました。
クレッシェンドは、音を徐々に強めていくことです。
長く伸ばす音は、声が始まった瞬間だけで表現が決まるわけではありません。
声が続いている間にも、強さの変化をつけられます。
この曲では、本人がその変化を、録音で意識的に作っています。
佐々木の説明からは、長い音を強く出すことと、長い音の中で強さを育てていくことを分けて考えられます。
声を保つ時間の中に、どんな動きをつけるか。
歌い手とディレクターが、伸ばす音の表情まで一緒に決めたのでした。
佐々木は、声の出し方を選ぶだけでなく、声が続く時間の中にも表情をつけています。
音を伸ばす力が、変化のあるフレーズを作るために使われていました。

画像出典:写真掲載元
「花邑 -Hanamura-」では、リズムを身体になじませる
2026年のアルバム『RI PATHOS』に収録された「花邑 -Hanamura-」については、違う難しさが語られています。
激ロックの取材で、佐々木はこの曲を、アルバムの中で大きな挑戦だった一曲として挙げました。
5拍を一まとまりにする5/4拍子で、繊細な奥行きを意識して歌った曲です。
本人は、そのリズムを身体になじませるまでに時間をかけ、刻み込んで歌ったと説明しています。
録音にも大きな集中力が必要でした。
曲のリズムの中で歌える感覚を作ることが、録音への取り組みの一つだったのです。
歌唱で意識したのは、淡々としながらも、内側から湧いてくる思いでした。
音楽に身を委ねる気持ちと、確かな歩みを重ねるような気持ちで歌ったと話しています。
ここでも、表したい感情と、歌うために身につける感覚が一緒に語られました。
曲の声を考えるとき、音の高さや強さに加え、フレーズがどんな拍の流れの中に置かれているかにも注目できます。
佐々木が時間をかけたのは、その流れを歌える状態へなじませることでした。
低音を響かせる持ち味があっても、曲ごとの歌を支えるには、それぞれのリズムへの取り組みが必要だったのです。
佐々木李子の歌い方には、コーラスで選ぶファルセット、力を抜く強弱、長い音の途中で強める表現、リズムを身体になじませる準備があります。
低音の響きを持つ一人の歌手が、声の役割と曲の流れに合わせて、その使い方を選んでいました。
役の声で歌う経験から、こうした表現の幅と自分の声への理解をどう広げてきたかは、佐々木李子の歌唱変遷でたどっています。







コメント