ChouChoの歌い方・発声|息を感じる柔らかさと、子音やリズムで出す強さ

歌声の強さと優しさについて語る2017年8月の取材に掲載されたChouChoの歌唱写真 ChouCho
歌声の強さと優しさについて語る2017年8月の取材に掲載されたChouChoの歌唱写真

ChouChoの歌は、共に歌うボーカリストにも、息を感じる心地よさとして受け取られていました。
fhánaのtowanaは、その声には空気を感じる成分が多く、一緒に歌ったときも、ふわっとした印象があったと話しています。
では、その柔らかい印象の声で、力強い曲を歌うときには何を変えているのでしょうか。

ChouCho本人の説明には、声の立ち上がりを弱める、音と言葉を滑らかにつなぐ、子音やリズムを強調するといった、具体的な選択が出てきます。
「薄紅の月」と「kaleidoscope」の歌い分けを中心に、声の柔らかさと強さをどう作るかを見ていきます。

息を感じる声と、滑らかにつながる音

2016年のfhánaとの対談では、towanaがChouChoと共に歌ったときの印象を話しています。
ChouChoの歌う部分になると、ふわっとした感じになり、それが心地よかったそうです。
空気を感じるという表現は、同じステージで歌ったボーカリストが受け取った、声の質感についての言葉です。

ここで注目したいのは、息を感じさせる質感と、音程のつながりが、別々の視点から語られていることです。
同じ対談で、ギターのyuxuki wagaは、ChouChoの歌では音と音の間を滑らかに移動しているように感じると話しています。
スラーやレガートという言葉で説明したのは、そのつながりの印象でした。

歌には、一つずつの音をはっきり示す場面も、音の間をつないで一つの流れにする場面もあります。
ChouChoの柔らかさを考えるとき、声の響きだけに注目すると、後者の工夫を見落としてしまいます。
声がどんな質感かと、次の音へどう移るかを、合わせて捉える必要があるのです。

そして、このつながりについては、ChouCho自身も後の取材で説明しています。
優しく聴こえる歌を作るために、音と言葉のつなぎ方を滑らかにする。
共演した音楽家の印象だけでなく、本人が意識する歌唱の選択としても確かめられます。

fhánaとの対談で声やリズムについて話す2016年2月の取材に掲載されたChouCho
fhánaとの対談で声やリズムについて話す2016年2月の取材に掲載されたChouCho。
画像出典:写真掲載元

「薄紅の月」は、歌い出しの強さを抑える

2017年の「薄紅の月」と「kaleidoscope」は、どちらも『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』の主題歌です。
同じ作品の世界を、違う曲調から表す二曲として、ChouChoは歌声の対比を意識しました。
本人は、その違いを優しさと強さとして説明しています。

優しく歌う方法として挙げたのが、アタックを弱めることです。
アタックとは、音が始まるときの立ち上がりを指します。
声が出た瞬間を強く押し出すか、穏やかに始めるかによって、同じ言葉でも受け取る印象は変わります。

本人の説明では、同じ子音を含む言葉でも、立ち上がりを弱くし、音と言葉の間を滑らかにつなぐと、優しく聴こえるというのです。
歌い始める強さと、次の音への移り方を変えることで、表現を選んでいます。

この話を踏まえると、「薄紅の月」を聴く際の注目点も具体的になります。
音が続いている部分だけでなく、言葉が始まる瞬間に耳を向ける。
一つの音を出したあと、次の言葉や音へどのようにつながっているかを追うと、本人が話す優しさの作り方を考えやすくなります。

息を感じる声という第一印象に、こうした立ち上がりやつながりの選択が加わっています。
ChouChoの柔らかさは、声の性質を説明する形容詞だけでは捉えきれません。
言葉をどう歌い出し、どう次へ運ぶかまで含めて、彼女の歌い方なのです。

「kaleidoscope」と「薄紅の月」の歌い分けを語る2017年8月の取材に掲載されたChouCho
「kaleidoscope」と「薄紅の月」の歌い分けを語る2017年8月の取材に掲載されたChouCho。
画像出典:写真掲載元

「kaleidoscope」は、子音とリズムを前に出す

対になる「kaleidoscope」で、ChouChoが表そうとしたのは強さでした。
そのために、リズムと子音を強調したと話しています。
優しい曲で弱めた声の立ち上がりや、言葉の輪郭に、今度ははっきりした働きを持たせています。

ここでの強さは、声量についてだけの説明ではありません。
母音を長く伸ばす部分に加え、言葉の始まりにある子音や、リズムの中で声が出る位置にも関わります。
ChouChoは、何を強調するかを選ぶことで、違う曲調に対応しているのです。

二曲を比較すると、柔らかい声と力強い声を、別々の持ち声のように考える必要はなくなります。
同じ歌手が、言葉の立ち上がりを抑えて滑らかにつなぐことも、子音やリズムを際立たせることもできる。
本人の説明は、その違いを歌唱の技術として捉えています。

ChouChoは、曲調や歌詞から導かれるものに加えて、歌唱の技術を意識することで表現を変えられると話しています。
伝えたい強さや優しさが先にあり、それを声の出し方へ落とし込んでいるのです。

「空想トライアングル」で意識した2拍目と4拍目

リズムを変える具体例は、2016年の「空想トライアングル」にもあります。
ChouChoは、いつもの歌い方では曲の鋭さが出なくなると感じ、ビートを意識して、2拍目と4拍目を強く歌ってみたと説明しています。
四つ打ちの曲を歌う経験が、それまであまりなかった中での工夫でした。

2拍目と4拍目という説明からは、フレーズ全体を一様に強くするのではなく、強さを置く場所を考えたことが分かります。
同じ長さのフレーズでも、どこを強く歌うかによって、リズムの感じ方が変わる。
言葉を滑らかにつなぐ歌手にも、拍を強調する選択があるのです。

対談相手のkevin mitsunagaは、サビの歯切れのよさを感じていたと話し、本人の説明を聞いて納得しています。
柔らかな声の質感だけを意識して聴くと、こうしたリズムへの働きかけを取り逃がしてしまいます。
歌声の響きが心地よいことと、歌がビートをはっきり示すことは、両立していました。

ChouChoの歌を聴き比べるなら、音のつながりと、拍に置かれる強さの二つを追うと面白くなります。
声が途切れず流れる場所と、言葉やリズムの輪郭を示す場所が、曲によってどう選ばれているか。
そこに、声の印象を変える本人の工夫があります。

軽やかな印象でも、「灯火セレナード」には力が要る

声の柔らかさとは別に、歌うために要る力についても、ChouChoは具体的に話しています。
2022年の「灯火セレナード」は、録音が大変だった曲でした。
ロングトーンが多く、息切れしながら歌い、サビでは力を出し切る気持ちで取り組んだそうです。

この曲は、声を長く保つことと、表現の起伏に向き合うことが、本人の話の中で結び付いています。
沈む部分と盛り上がる部分の差が明確で、それを表そうと頑張ったと説明しています。
滑らかに聴こえる歌にも、声を出し続けるための負担や、強い表現を支える力があるのです。

「薄紅の月」では立ち上がりを弱めてつなぎ、「kaleidoscope」では子音やリズムを強調する。
「空想トライアングル」では拍に強さを置き、「灯火セレナード」では長い音と大きな起伏に向き合う。
曲が変わるたびに、声で担う役割も変わっていました。

ChouChoの歌の柔らかさと強さは、息を感じる質感だけで説明するより、音の始まり、つながり、言葉、リズムから見ると具体的になります。
持っている声を一つの印象に固定せず、曲が必要とする表現へ使い方を変えることが、その歌い方の特徴です。
こうした選択が、デビュー曲の再録や声への自己認識にどうつながったかは、ChouChoの歌唱変遷でたどっています。

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