INIのシュウ・フェンファンは、曲の中で自分の声をどう生かすかを、少しずつ掴んできた歌手です。
強く歌うことから繊細な表現へ進み、息を含む声やR&Bに通じる歌い回しを、自分の持ち味として捉えるようになりました。
さらにソロ活動では、グループで普段使う声とは違う色も探っています。
この歩みを、単に歌唱力が上がったという言葉だけでまとめると、大切な部分が抜け落ちます。
変わってきたのは、出せる声だけでなく、曲に合わせてどの声を選ぶかという判断です。
初期の試行錯誤から、ソロ曲「Like Water」、近年のユニットでの歌まで、その変化をたどってみましょう。
高音への不安と、グループで担いたかった役割
2021年のオーディションには、歌で思うような結果を出せなかった経験もありました。
フェンファンは後年、高音を担当することになった課題で失敗したと振り返っています。
自分の力を見せなければならない場で、求められた歌を形にする難しさを経験していたのです。
同年11月のデビュー期には、すでに自分がどんな役割を果たしたいかも考えていました。
尾崎匠海、髙塚大夢、藤牧京介とは違う声の個性を、グループに加えたいという考えです。
ほかの歌い手と同じ方向へ揃えるだけでなく、声の違いをINIの魅力にしたいと捉えていました。
12月に発表された「Brighter(Acoustic Ver.)」では、尾崎、佐野雄大、髙塚、藤牧とともに歌っています。
ダンスを含む11人の表現とは別に、5人の声を中心に曲を届ける機会でした。
デビュー直後から、伴奏や人数を変えたときに、自分の声をどう置くかが活動の一部になっていたことがわかります。

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2022年、力強さの先にある繊細さを探した
2022年の「Polaroid」は、それまでの歌い方を見直す具体的なきっかけでした。
本人は、以前は力強く歌うことが多かった一方、この曲では繊細さが求められ、研究と練習を重ねたと説明しています。
声の勢いを増すだけでは、曲の求める表情に届かないと気づいた場面です。
同年の「Password」では、長いパートを任され、息を多く含ませる歌い方を探りました。
曲の雰囲気に声を合わせるための工夫で、髙塚も隣の部屋から聞こえる練習の熱心さに触れています。
繊細に歌うという課題が、声の質感をどう変えるかという、より具体的な選択へ進んでいました。
ここで大切なのは、強い声が不要になったわけではないことです。
曲が変われば、必要な力のかけ方も変わります。
この時期のフェンファンは、歌う強さを一方向に伸ばすだけでなく、声の表情を選ぶ幅を広げていたと考えられます。
自分らしさが、メンバーにも共有されるようになった
2023年には、R&Bや洋楽に通じる発声や発音を、自分の個性として捉えるようになったと話しています。
「Busterz」のような曲には、自分の歌い方が合うという手応えもありました。
ほかのボーカルと役割を分けながら、自分の声が曲に加えられるものを、以前より具体的に説明できるようになったのです。
その個性は、周囲からも認められていました。
「DROP」の制作を振り返った西洸人は、フェンファンの声に合うと考えていたことを明かしています。
本人も、こうした曲を歌いたかったという思いを話しており、自分の好みと、仲間が感じる声の魅力が重なった場面でした。
初期には、自分の違いをグループの力にしたいという希望がありました。
この頃には、どの曲でその違いが生きるのかを、本人とメンバーの双方が掴み始めています。
声の個性が、漠然とした印象から、曲や担当パートを考える手がかりへ変わっていったのです。
言葉を書くことで、歌のリズムにも踏み込む
2024年の「I'm a Dreamer」では、初めて歌詞制作に参加しました。
音数の多いR&Bの曲に、日本語をどう乗せるかを考えた作品です。
歌う段階でも、速いサビの滑舌や音程が課題となり、メンバー同士で聴き合いながら練習を重ねています。
同年の「THE FIRST TAKE」では、5人編成の「FANFARE」にも参加しました。
アコースティックギターを軸に、声を重ねる部分や、伴奏を抑えたブリッジを持つアレンジです。
原曲の勢いを残しながら人数と伴奏を変える経験は、ダンス曲の中で担当を歌うときとは違う、声同士の関係を見せる機会になりました。
曲の魅力を声で届けるだけでなく、言葉や編成が変わると歌がどう動くかにも関わるようになっています。
自分のパートの完成度を上げることと、曲全体の流れを考えることが、少しずつ近づいてきた時期といえるでしょう。
ソロ公演と「Like Water」で、声の色を広げた
2025年1月28日のソロ公演「浮遊生物」は、その広がりを一人で形にする場でした。
「I'm a Dreamer」やカバー曲に加え、「Drip Drop」をシティポップのアレンジで披露し、最後に「Like Water」を初披露しています。
グループの楽曲も別の伴奏で捉え直し、自分の世界の中へ置き直す構成でした。
この公演の背景には、固定されたイメージに縛られず、自分の表現を選びたいという思いがありました。
フェンファンは、これまでいろいろな場所で暮らしてきた自分を、水中を漂う生物に重ね、そこから公演のテーマと曲を作っています。
声色の違いも、ただ意外な歌い方を見せるためではなく、自分が描きたい世界を形にするための選択と考えられます。
本人は後に、一人で選曲や進行を担うことへの不安を振り返る一方、自分の考えを通して舞台を作れた経験を語っています。
担当部分を受け持つ立場から、公演全体をどう見せるかを決める立場へ移ったのです。
歌の前後に何を置くかも含めて、自分で表現を組み立てる経験になりました。
グループでは別のメンバーへ渡していた歌も、ソロでは自分一人でつなぐ必要があります。
その心細さと、やりたいことを実現できる自由を、本人は両方感じていました。
自分の声が曲の一部を彩る段階から、その声で一つの舞台を支える段階へ、経験の幅を広げたのです。

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4月に映像が公開された「Like Water」では、2ステップのビートに、水や光を思わせる世界を重ねています。
フェンファン自身も、普段のINIではあまり見せない声色に挑んだと説明しました。
得意な歌い方をそのままソロへ持ち込むだけでなく、作品の世界に合わせて、違う声を選ぼうとしていたのです。
6月発売のアルバム『THE ORIGIN』では、「DOMINANCE」や「Potion」のラップにも挑戦しました。
ソロで表現を広げる一方、グループ内でも役割は固定されていません。
歌うパートで培った個性を持ちながら、言葉をリズムで届ける別の役割へ踏み込んでいました。
近年は、誰と歌うかでも声を選ぶ
2026年1月、田島将吾と公開した「Nerdy Love」のカバーでは、二人の自然な空気が表現の軸になっています。
田島と曲の解釈を共有し、飾らない雰囲気を大切にした歌でした。
ソロとは違う、二人で声を合わせる表現へ向き合っています。
6月の「Sand Castle」は、全編英語で歌うINIのR&B曲です。
フェンファンは映像の日本語・中国語字幕の翻訳にも携わりました。
歌声で曲を伝える役割に加え、歌詞の意味を別の言葉で届ける部分にも、自分の表現を広げています。
フェンファンの変化は、力強さを捨てて柔らかくなった、という一筋の流れではありません。
繊細な歌、息を含む声、高音、ラップを、曲と共演者に合わせて選べるようになる過程です。
その使い分けを発声や言葉の置き方から見ると、シュウ・フェンファンの歌い方の魅力が、より具体的に見えてきます。







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