シュウ・フェンファンの歌い方|息を含む声と高音を、曲のリズムに合わせて選ぶ

2025年1月28日、ソロステージ「浮遊生物」のシュウ・フェンファン(©LAPONE ENTERTAINMENT) シュウ・フェンファン
2025年1月28日、ソロステージ「浮遊生物」のシュウ・フェンファン(©LAPONE ENTERTAINMENT)

INIのシュウ・フェンファンの歌を考えるとき、手がかりになるのは、声の柔らかさとリズムの関係です。
息を含む声や裏声を混ぜた表現を使う一方、曲の山場では高音も担います。
いつも同じ響きを押し出すのではなく、メロディーと言葉が自然に動く声を選ぶところに、歌い手としての工夫があります。

その特徴は、声が甘い、歌が上手いという印象だけでは捉えきれません。
どの曲で柔らかさを選び、どの場面で高音を生かすのか。
本人や共演者が説明した録音の工夫をたどると、発声を曲へ結びつける考え方が見えてきます。

息を含ませる声は、曲に合わせて探したもの

「Password」では、フェンファン自身が、息を多く含む歌い方を研究したと話しています。
長い担当パートを、曲に合う雰囲気で歌うための選択でした。
生まれつきの声質だけで決まるのではなく、どんな質感にしたいかを考えて練習していたことがわかります。

息の成分を伴う声は、音の高さだけでなく、言葉の触れ方にも関わります。
同じメロディーでも、輪郭を強く示すか、柔らかな印象を残すかで、曲の表情は変わります。
「Password」での工夫は、音を届かせることと、曲の空気を作ることを、一緒に考えたものと捉えられるでしょう。

裏声の柔らかさと、山場の高音を使い分ける

「Busterz」の原曲のAメロについて、髙塚大夢は、フェンファンと藤牧京介が柔らかく、裏声を交えた歌い方をしていると説明しています。
髙塚が自分のカバーで、よりリズムを強く出す歌い方を選んだときの比較です。
同じ曲でも、担当する人が変われば、声の強さとビートの示し方を変えられることがわかります。

ここでの柔らかさは、高い音が出ないために力を抜く、という意味ではありません。
原曲のAメロにどんな流れを作るかという、歌い方の選択として語られています。
フェンファンの声を、曲の入り口の表情を作るものとして捉えられる場面です。

一方、「FIRST」では、ブリッジ終盤のフェンファンの高音を、髙塚が好きな箇所として挙げています。
柔らかなAメロとは違い、曲の山場を担う声です。
高い音を出せるかどうかだけでなく、どこにその高音を置くかが、曲の印象を決めています。

2022年『M』発売時のシュウ・フェンファン
2022年『M』発売時のシュウ・フェンファン。
画像出典:画像掲載元

繊細さは、声を小さくするだけでは作れない

「Polaroid」では、普段の力強い歌い方とは違う繊細さを求められ、本人が研究を重ねました。
声の勢いをいつものまま持ち込むと、曲が求める感情と合わない場合があるからです。
この経験は、強く歌えることと、曲に合う強さを選べることが、別の課題であると示しています。

「What A Night」では、美しい歌詞を受け取ったことで、自然と綺麗に歌いたい気持ちになったと話しています。
先に声の形を決めてから歌詞を当てはめるのではなく、言葉が歌い方を導いた例です。
繊細さを声量の大小だけで考えるより、歌の中の言葉をどう扱いたいかと結びつけると、選択の理由が見えてきます。

この二曲を並べると、柔らかな表現にも、違う出発点があることがわかります。
「Polaroid」では曲に応えるための研究があり、「What A Night」では歌詞から生まれた気持ちがありました。
同じように優しく歌う場合でも、毎回同じ手順で声を作っているとは限らないのです。

日本語を、細かなメロディーの流れに乗せる

「I'm a Dreamer」の制作では、音数の多いメロディーに日本語を乗せる難しさがありました。
本人が歌詞に関わった曲ですが、実際に歌うと、速いサビの滑舌や音程も課題になります。
メンバーと互いの歌を聴き、助言しながら練習したという過程に、言葉とリズムを両立させる細かさが表れています。

言葉をはっきり言おうとすると、旋律の流れが止まってしまうことがあります。
反対に、音の流れだけを追えば、言葉が十分に伝わらない場合もあります。
この曲の工夫は、そのどちらかだけを優先せず、歌詞がメロディーの中で動く状態を探ることだったと考えられます。

本人が自分の個性として挙げるのは、R&Bや洋楽に通じる発声と発音です。
声の響きだけでなく、言葉がどう音楽に乗るかまで含めて、自分らしさを捉えています。

ラップでも、新しい声の出し方に取り組んでいます。
『THE ORIGIN』の制作を振り返った本人は、それまでと違う声色を出せたことを、挑戦の一つとして挙げました。
旋律を歌うときの持ち味を保つだけでなく、言葉を刻む場面では、声の表情を作り直しているのです。

「Like Water」では、普段と違う声色を選ぶ

ソロ曲「Like Water」は、2ステップのリズムを軸にした曲です。
本人は、INIではあまり見せない声色を使ったと説明しています。
グループの中で聴き分けられる声を、そのまま一人の曲に使うだけでなく、作品に合わせて別の色を出そうとした録音でした。

一人で歌えば、ほかの声との違いを示すことより、曲全体をどんな質感で包むかが重要になります。
「Like Water」での選択は、グループでの持ち味が、ソロでも唯一の正解になるわけではないことを示しています。
声の個性を持ちながら、それを作品に合わせて動かせるところに、表現の広がりがあります。

誰と、どんな伴奏で歌うかも表現の一部

田島将吾と歌った「Nerdy Love」のカバーでは、二人で曲の温度感を共有するところから表現を作っています。
フェンファンが大切にしたのも、二人らしい自然な空気でした。
共演相手がいる場合には、自分の声をどう際立たせるかだけでなく、二つの声でどんな雰囲気を作るかが、選択の軸になるのです。

5人で歌った「THE FIRST TAKE」の「FANFARE」には、声を順に重ねてハーモニーを作る場面があります。
原曲のロックの勢いを保ちながら、伴奏や人数を変えた表現でした。
一人の声で完結させず、重なったときの響きまで含めて歌を作るところにも、グループで磨いてきた力が表れています。

一方、ソロ公演「浮遊生物」では、「Drip Drop」をシティポップのアレンジで歌いました。
同じ曲でも、伴奏の方向を変えることで、自分の歌を置く場所を作り直しています。
「Like Water」で声色を変えたことと合わせると、フェンファンは声だけを独立して考えず、その声が生きる音楽の形も選んでいると捉えられます。

フェンファンの歌い方は、息を含む声、裏声、高音のどれか一つでは説明できません。
その声をどこで使い、言葉やリズム、相手の声とどう結びつけるかに、持ち味があります。
そうした選択が育ってきた道筋は、シュウ・フェンファンの歌唱変遷でたどっています。

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