DOUBLEの歌には、耳元に届くような声の近さと、幾重にも広がるコーラスの華やかさがあります。
その両方を育ててきた歩みは、姉妹二人で歌い始めた時代から続いています。
一人で活動するようになってからも、声を重ねることへのこだわりは消えませんでした。
ジャズの演奏家に身を委ねる経験や、他の歌手との共演を通じて、声に持たせる役割を増やしてきたのです。
どんな場面で歌の表情が広がったのか、代表的な作品とともにたどります。
姉妹の声と、日本語のメロディーから始まった
R&Bへの入り口には、家族からの影響がありました。
アメリカに留学していた一番上の姉が現地の音楽を伝え、それを受け取ったSACHIKOとTAKAKOが歌う側になっていきます。
デビュー以前から、海外の音楽への関心は、姉妹の日常の中にあったのです。
1998年、姉のSACHIKOと妹のTAKAKOは「For me」でデビューしました。
同年の「BED」、翌年の「Shake」と作品を重ねる中、1999年にSACHIKOが亡くなります。
TAKAKOは翌2000年、一人になってもDOUBLEの名前を引き継ぎ、再び歌い始めました。
初期の「BED」の魅力は、姉妹の声が重なる豊かさと、湿度を感じさせる歌にありました。
アメリカのR&Bの様式を取り入れながら、日本語の響きや歌謡曲に通じるメロディーが、感情を身近にしています。
海外の音楽に近づくことと、日本語で心情を伝えることが、最初から一つの歌に同居していました。
2000年、ささやく声とコーラスが一人の世界を広げる
ソロとして再始動した時期には、アメリカのR&Bの作り手との制作が続きます。
「handle」にはブライアン・アレクサンダー・モーガン、「U」にはエディ・Fとダレン・ライティ、「Angel」にはアンジェラ・ジョンソンが関わりました。
一つの曲調に留まらず、異なる制作陣と自分の声を組み合わせる時期でした。
その中で「Angel」は、甘いバラードとして、ささやくような主旋律と、伸びやかなコーラスの対比を際立たせます。
一人の声が近くで語る部分と、重なった声が空間を広げる部分。
姉妹による歌を知る人にも、新しいDOUBLEの繊細さと華やかさが伝わる組み合わせでした。
2004年、歌うことそのものに立ち戻ったジャズ作品
自分の歌いたい曲を歌うため、制作にも深く関わってきたTAKAKO。
『Life is beautiful』で歌い手に徹したことが、歌う楽しさの再発見になりました。
この作品には「Moon River」や「Lullaby of Birdland」といったスタンダードと、自身の曲「BED」の別アレンジが並びます。
新しい曲を歌うだけでなく、すでに持っていた歌を違う音楽の中に置き直す機会にもなりました。
録音はバンドとのセッションを軸に進められ、ソウライヴや大野雄二ら、さまざまな演奏家が参加しています。
声を作り込んで重ねるR&Bとは別に、演奏家たちとのセッションの中に歌を置く経験が加わったわけです。
ジャンルの変更だけでなく、歌い手として周りの音を受け止める姿勢にも、広がりが生まれた時期でした。
2007年、声を積み重ねる作品と、人に委ねる作品
「SPRING LOVE」では、本人の声を百声以上重ねたコーラスと、クラシカルなピアノが中心になりました。
歌声が主旋律を運ぶだけでなく、曲を包む大きな響きそのものにもなっています。
一人で活動していても、声の重なりを豊かにする可能性は、むしろ広がっていました。
「残り火―eternal BED―」では松尾潔と再び制作。
自分の個性が確立したからこそ、人にも任せられるという考えが、この共作につながりました。
それでも録音では、歌唱指導のOKが出たあとも、自分で納得できない箇所は歌い直しています。
2010〜2011年、親密な歌と、新しい加工を使う歌
2010年の『Ballad Collection Mellow』には、以前の録音と新曲が並びます。
新曲「For You」は、本人が初めて姉SACHIKOについて歌ったと語った作品です。
長く歌い続けてきた人が、身近な相手への気持ちを歌にする節目でもありました。
もう一つの新曲「ストレンジャー」では、作曲と編曲を担った川口大輔のスタジオに、TAKAKOと松尾潔が集まり、方向を話し合っています。
人に制作を委ねることは、自分の希望を引っ込めることではありません。
曲を用意する側と歌う側が相談しながら、DOUBLEの歌を形にする関係が続いていました。
翌2011年の『WOMAN』では、歌の見せ方がさらに広がります。
「Tattoo」は歌謡曲のような情緒と、Auto-Tuneによる加工を組み合わせた曲です。
本人にとって以前なら選ばなかったような挑戦で、声の自然な質感だけに頼らず、加工も含めて感情を表す方向へ踏み出しました。

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一方、アルバムには「History of love」のように、簡潔なビートとピアノの音を軸にした曲もあります。
「Count 3」の華やかな共演曲やミディアム曲も収められ、一つの派手な音作りで押し通す構成ではありません。
強い刺激と落ち着いた歌を並べることで、声の表情を選ぶ幅を見せています。
映画の物語、そして自分自身の明るさを歌う
2015年の「Circle of Life」は、映画『呪怨―ザ・ファイナル―』の主題歌として作られました。
童歌の要素を取り込み、映画の世界に合わせた不穏な言葉も歌に含めています。
恋愛の感情を近くで伝える歌とは異なり、物語の空気を担う役割が加わった作品です。

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2018年には、SILVA、SUGARSOULと『UPLOAD』を制作しました。
DOUBLEのソロ曲「Good Day」には、完璧を求めて足りない点を見つけるより、小さな幸せを受け取ろうとする気持ちが表れています。
本人も、自分の内面がこの曲に出たと話しており、整ったイメージの奥にある、生活の中の明るさへ歌の主題が開いていきました。
2025年、昔からの曲を新しい共演の場へ
2025年2月の木梨憲武の公演では、「残り火―eternal BED―」を歌い、木梨とのデュエットにも参加しました。
さらにAI、Full Of Harmonyらと声を合わせる場面もありました。
一人で曲を届ける役割と、仲間の歌に加わる役割が、同じ舞台に並んでいます。
同年公開のセッションでは、Full Of Harmonyと「handle」、そして「Let's get together」を披露しています。
後者は、もともとHIROを迎えて発表した曲です。
年月を経てグループ全体との共演になり、過去の曲を新しい顔合わせで歌う機会になりました。
DOUBLEの変化は、声が強くなった、柔らかくなったという一本の線では捉えきれません。
声を重ねること、自分で作品を作ること、人の演奏や歌を受け入れること。
その選択肢が増えるにつれ、同じDOUBLEの声が受け持つ表情も広がってきたのです。
曲ごとの声の使い分けは、DOUBLEの歌い方で掘り下げています。







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