赤西仁の歌を「Eternal」で知った人と、ダンス曲で知った人では、思い浮かべる歌手像がかなり違うかもしれません。
前者には、甘い声で大切な人への思いを歌う姿。後者には、ビートに合わせて会場を躍らせる姿があるでしょう。
この二つをつないでいるのが、曲を作る段階から歌のリズムを考え、曲に合わせて声の質感も変えていく赤西の姿勢です。
同じ声を持っていても、長く伸ばす言葉と、短くリズムに乗せる言葉では、その魅力の伝わり方が変わります。
甘い声を、どんな音楽の中で、どう聴かせるのか。そこまで自分で決めてきた歌手なのです。
「Eternal」の甘い声から、その先へ
2011年のソロシングル「Eternal」は、大切な人への感謝や祝福を歌ったバラードです。
カップリングには、以前からファンに親しまれていた「ムラサキ」が収められました。
ソロ歌手として踏み出す一枚に、赤西の声を待っていた人にとって大事な曲が並んでいたわけです。
赤西の声にひかれたファンの感想には、伸びる高音だけでなく、柔らかさや、声を伸ばしたときの甘さが挙がります。
強い声で圧倒されるというより、声をもう少し聴いていたくなる。
バラードは、そうした魅力にゆっくり触れられる曲です。
ただ、本人にとって「Eternal」は、歌声を披露するだけの作品ではありませんでした。
後年には、アレンジャーと自由に作業でき、当時やりたかったことがかなった曲として振り返っています。
歌い手としての出発点に、すでに「自分の望む音楽を作る」という実感もあったのです。
ダンス曲を含む赤西の音楽を考えるうえでも、この点は大事です。
彼は、歌う音楽そのものを作りたい人でもあります。
好きなビートや音色を組み合わせ、その中で自分の声をどう聴かせるかも考えてきました。
メロディより先に、キックとベースを作る
赤西が2013年に説明した曲作りは、まずキックとベースを打ち込むところから始まります。
キックは、ドラムの低い音で拍を刻む部分。その低音とベースを土台にして、音色や短いフレーズを加え、伴奏を組み立てていきます。
メロディと歌詞を乗せるのは、そのあとです。
最初に言いたい言葉を書き、そこへ曲を付ける方法とは、歌が生まれる順番が違います。
赤西の場合は、歌が入る前から、体をどう動かしたくなるかを左右するリズムがある。
歌声も、そのリズムと一緒に聴いて気持ちがよくなるように作っていけます。
英語を先に使う理由も、海外に向けて歌うから、というだけではありません。
本人には、英語のほうがメロディを作りやすいという感覚がありました。制作仲間が日本語を話さないことも、その方法につながっています。
ここを知ると、日本語詞と英語詞の違いが、歌の意味をどの言語で伝えるかだけではないと分かります。
短く切る音、伸ばす音、言葉を置くタイミングまで、歌の印象に関わる。
赤西が作っているのは、意味のある文章であると同時に、伴奏と組み合わせて歌うための言葉なのです。

「日本語が書けない」のは、伝えたいことがなかったからではない
2016年の『Audio Fashion』制作時、赤西は日本語の歌詞が書けないと発信していました。
その曲は「Pinocchio」。結局、英語詞になりました。
難しかったのは、表現したい内容を、メロディに収まる文字数の日本語にすることです。
さらに、先に英語で作ったときのリズムも、できるだけ生かしたかった。
意味が通る日本語を書けば完成、とはいかなかったのです。
同じ内容でも、言葉が長くなれば、短い音の中へ詰め込まなければなりません。
逆に短くすると、伝えたかったことが抜けるかもしれない。
言葉の意味と、口にしたときの気持ちよさを、一緒に満たそうとする難しさがあります。
「Eternal」のように日本語の思いを届ける歌も持ちながら、別の曲では英語を選ぶ。
赤西にとって言語は、歌の外側に付く飾りではなく、メロディの動きに関わるものなのでしょう。
歌詞を読んだだけでは分からない、歌ったときの収まりまで考えているところに、作り手としてのこだわりが見えます。
声の甘さも、曲に合わせて使い方を変える
言葉のリズムに加えて、どんな声で歌うかも赤西のこだわりです。
2017年の『Blessèd』の頃、赤西は、曲に合わせて意識的に声質を変えていると話しました。
うまくはまったときには気持ちがよく、もっと練習してうまくなりたいとも考えていました。
もともとの声に魅力があっても、そのまま歌えばどの曲にも合う、とは本人は考えていなかったのでしょう。
『Blessèd』には「Fill Me Up」や「One Addiction」、メロディを聴かせる「Yesterday」などが並びます。
同じアルバムでも、勢いよく進む曲と、旋律の余韻を味わう曲では、声に求められる役割が違います。
たとえば、バラードでは一つの言葉を長く伸ばすことで、声の柔らかさをじっくり感じられる場面があります。
一方、踊れる曲では、その声がどのタイミングで入り、どこで切れるかも楽しさにつながります。
これは甘さを捨てるということではなく、甘い声の聴かせどころが変わるということです。
赤西の歌を曲ごとに聴くときも、高い音が出たかだけを追うより、言葉の長さや、声が伴奏に入るタイミングに目を向けると、比べる楽しみが増えます。
歌声を一つの特徴に固定しないから、曲が変わるたびに、その声の別の使い方に出会えるのです。

昔のバラードも、今のステージの中で歌う
2023年の独立10周年ライブは、「ムラサキ」「Care」「Eternal」という初期の曲から始まりました。
思い出の歌で幕を開けながら、その先には、ダンス曲が続く時間もあります。
以前から大切にされてきた歌と、会場を踊らせる曲を、一つのステージで歌っています。
終盤の「Love Song」では、独立前に書いたこの曲に、ファンへの思いも込めていたことを明かしました。
会場を盛り上げたあとで、再び、言葉と歌声を受け止める時間になる。
赤西の二つの姿は、一回のライブの中にもあるのです。
甘い声を長く聴いていたい気持ちと、その声が入った音楽で体を動かしたい気持ち。
どちらも、赤西仁の歌を楽しむ理由になります。
「Eternal」にひかれたなら、次は声と言葉がビートにどう乗るかを聴いてみる。ダンス曲から入ったなら、バラードで伸びる声を聴いてみる。
赤西仁の甘い声は、バラードの中だけにあるものではありません。
ビートを作り、言葉を選び、声質を変えながら、体を動かしたくなる音楽の中でも、その声を生かしてきたのです。







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