サナの声を思い浮かべたとき、TWICEの「CHEER UP」の愛らしい一節が浮かぶ人は多いでしょう。
その一方で、コブクロの「卒業」では静かなバラードを歌い、MISAMOでは高いキーのソロ曲を選び、ラップにも挑んでいます。
親しみやすい声が、どんな曲を引き受けるようになったのか。
初期の発音にまつわる出来事から、本人が歌いたいものを選ぶ現在までをたどります。
2016年、短い一節がサナの声を広めた
2015年にTWICEとしてデビューしたサナが、一躍広く知られるきっかけになったのが、翌年の「CHEER UP」です。
本人は、英語の発音がうまくできず、あの「シャシャシャ」という響きになったと説明していました。
予想外の反応に最初は照れながらも、多くの人に好かれたことを喜んでいます。
制作側も、その響きをサナの個性として受け止めていました。
事務所の関係者は、速いリズムの中で生まれた発音が可愛らしく、普段の愛嬌も生かしたと説明しています。
声量の大きさで圧倒する場面ではなく、ひとつの言葉の響きが本人の顔を思い出させる。
その特徴が、曲とともに広まった時期でした。
2017〜2019年、日本語でも歌の言葉を作り直す
日本デビュー時の『#TWICE』では、韓国語で歌ってきた曲を日本語で録音します。
母語だから楽に歌える、という周囲の予想とは違い、サナには慣れるための時間が必要でした。
覚えた曲に別の言葉が入る違和感があったのです。
日本語版の歌詞には物語があるとも話していました。
2019年の『#TWICE2』の頃には、日本語で録音すると素が出て、関西弁で話すような調子で歌ってしまうと明かしています。
言葉に戸惑った話の次に、今度は日常の話し方が歌に顔を出す話が出てくる。
母語で歌う経験が増えても、話す声と歌の関係は単純ではありませんでした。
同年の「Feel Special」では、サナはメンバーそれぞれの本当の気持ちを届けたいと説明しました。
明るい恋の歌で親しまれたグループが、自分たちの思いを作品へ持ち込む節目です。
また、サナは「FANCY」を、それまでの曲とは雰囲気が違い、覚えるときにもわくわくした曲として振り返っています。
2019年は、親しみのあるヒット曲を日本語で歌い直す一方、新しい雰囲気の曲も自分たちのものにしていく時期でした。
声の持ち味を生かせる範囲は、グループの新しい曲との出会いによっても広がっています。

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2021年、「卒業」で一人の歌声をじっくり届ける
2021年2月、サナはコブクロの「卒業」をカバーしました。
自分の中学卒業や友達との場面を思い出し、歌詞に共感したといいます。
グループの曲の一部を受け持つときとは違い、自分の記憶と重ねたバラードを歌う機会でした。
カバー音源に加えて、伴奏のないアカペラ版も発表されています。
3月には、サナの歌にコブクロの二人が声を重ねた共演版が登場します。
コブクロは、世代の違いから新たな背景が浮かぶよう、原曲とはハーモニーを変えたと説明しました。
男性二人の原曲から、彼女の声を含む三人の歌へ作り直されています。
この頃のサナには、「卒業」のしっとりした歌唱と、「BETTER」のサビで見せる気高さという両面がありました。
「SWEET TALKER」冒頭の親しみやすさと合わせて考えると、すでに可愛らしさだけに収まらない役割を担っていたことがわかります。
MISAMOでのソロ曲を待たずに、声の印象は曲ごとに広がっていたのです。
2021〜2023年、甘さとは違う感情を引き受ける
この間のTWICEの曲では、「CRUEL」のサビも見逃せません。
相手を突き放す言葉を歌っていても、サナの声には温かさが残るという聴き方があります。
明るい歌で親しまれた声が、複雑な感情を扱う曲の中でも働くようになっていました。
ミナ、サナ、モモによるMISAMOの『Masterpiece』では、三人で音楽の方向から考えました。
サナは「Rewind you」の作詞で、TWICEの「CRY FOR ME」が見せた、それまでと異なる感情に着想を得ています。
自分の恋愛体験をそのまま書いたのではなく、あの曲がファンに届いた手応えから、近い気分の作品を作りたいと考えたのでした。
リード曲もすぐには決まりませんでした。
「Do not touch」と「Behind the Curtain」で悩み、歌の録音はアメリカへ出発する日まで続いたとサナは振り返っています。
三人の最初の作品をどんな歌で届けるか。
選曲と録音をぎりぎりまで重ねた制作でした。
サナらしさを、明るい性格だけで決めてしまうと、この選択は見えにくくなります。
歌の中で引き受けたい感情は、普段の人柄と同じでなくていい。
親しみやすい印象を持つ人が、別れの気持ちを描く側にも回ったことで、聴き手が出会うサナの姿が増えました。
2024年、歌いたいバラードより舞台の「Mirage」を選んだ
『HAUTE COUTURE』のソロ曲を決めるとき、サナにはバラードと「Mirage」という候補がありました。
歌いたい気持ちではバラードに惹かれながら、舞台で見せたいという基準では「Mirage」を選びます。
ただし、本人にとってキーが高く、歌うのは大変だったそうです。
歌いたい曲にそのまま決めず、見せたい舞台を優先した選択でした。
ここまでの歩みを振り返ると、その決断の意味が見えてきます。
「卒業」ではバラードを歌う機会を得ていました。
そのうえで、今度は別の曲調をソロの舞台に持ち込んだのです。
静かな歌を歌えることと、それを次の作品にも選ぶことは同じではありません。
すでに経験した表現を持ちながら、次に何を見せたいかを考えるようになっています。

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2025〜2026年、ソロの中にも違う表情を増やす
TWICEの10周年アルバムに収めた「DECAFFEINATED」について、サナは魅力的な女性を思わせる強い曲だと話しています。
ソロの経験が多くないからこそ、今も初めて挑戦できることが楽しい。
活動歴を重ねた後にも、まだ試したいことがあるという実感が、新しい曲につながっています。
2026年のロサンゼルス公演での同曲には、温かな息の響きとなめらかな歌い方によって、親密な雰囲気を作ったという現地評もあります。
強い曲を選んだことが、そのまま声を強く押し出すことにはならない。
ソロの舞台では、声の柔らかな表情も曲の魅力として伝わっています。
2026年のMISAMO『PLAY』では、「Ma Cherry」を選びました。
いくつか届いた候補の中で最初に心をつかまれ、ステージやパフォーマンスの様子がはっきり浮かんだ曲だといいます。
「Mirage」に続いて、歌をどんな舞台にしたいかが選曲の決め手になっていました。
さらにサナは、「Ma Cherry」で初めてラップに挑戦したと説明しています。
経験や感情を身につけ、今の自分を輝かせるというテーマを、アップテンポな曲で表す。
甘い声の印象を保ちながら、言葉をリズムに乗せる表現へも踏み出しました。
サナの変遷は、可愛い声を捨てて大人の声になったという話ではありません。
短い一節の響きで親しまれた人が、バラードの時間を受け持ち、曲の感情を自分でも考え、高いキーやラップにも挑むようになった歩みです。
声の持ち味を残しながら、任せる曲も、自分で選ぶ曲も変わってきた。
その広がりが、いまのサナの歌を形作っています。
曲ごとの声の選び方は、サナ(TWICE)の歌い方で掘り下げています。

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