Hikaruの歌い方|鋭い声と息を含む声を、曲の中でどう使い分けるのか

2020年のH-el-ical//インタビューに掲載されたHikaru Hikaru(Kalafina)
2020年のH-el-ical//インタビューに掲載されたHikaru

Hikaruの声には、強さと切れ味があります。
Kalafinaでは中音から高音を担い、澄んだ高音のWakana、低音を支えるKeikoと異なる個性を示してきました。

その力強さを、ただ大きな声で歌うことだと考えると、肝心な部分を見落とします。
言葉をどれだけ細かく区切るか。
旋律をつなぐか、輪郭を立てるか。
息の成分や声色を、どんな場面で変えるか。
Hikaru自身が語った曲作りには、その選択が具体的に表れています。

鋭さを生むのは、言葉の輪郭を選ぶこと

「メルヒェン」について、Hikaruは言葉を一まとまりにするより、一文字ずつ独立した音として響かせる意識を説明しています。
意味を持つ言葉になる前に、一つずつの音を置いていくような歌唱です。
この考え方なら、言葉を流して歌う場合と、音の並びの感触が変わります。
声量を上げ続けなくても、発音の区切りを聴かせることで、鋭さを作る方向が見えてきます。

本人は同じ曲について、歌詞の物語を一つに決めすぎず、言葉を明確に歌おうとしたとも話しています。
聴き手が考える余地を残しながら、音としては曖昧にしない。
語り尽くさないことと、はっきり発音することが両立する歌なのです。

歌を聴くときは、声が強く聞こえた箇所で、どの音が前へ出てきたのかにも注目できます。
長く伸ばした音の大きさだけでなく、言葉が始まる瞬間や、次の音へ移る刻み方を追うと、印象の理由を考えやすくなります。

「百火撩乱」で、滑らかさと鋭さを分ける

「百火撩乱」では、全体に滑らかな歌い方を多く用いる一方、中盤には梶浦由記の求めに応じて、リズムを鋭く刻む箇所を置いています。
ここでいうレガートは、音から音へ途切れを目立たせずにつなぐ歌い方です。
同じ一曲でも、すべてを鋭くするのでなく、その前後との違いを作っていました。

Hikaruにとって、この曲は好きだったゲームがアニメ化された作品の主題歌でもありました。
うれしさで気持ちが入る一方、録音では力が入りすぎないようにするのが難しかったと話しています。
好きな作品だから、強く歌えばよいわけではない。
熱のある気持ちを、曲に必要な声へ整える工程がありました。

滑らかさの中に鋭い箇所が現れると、その場面を一つの変化として受け止められます。
いつも最大の強さで歌ってしまうと作りにくい対比です。
Hikaruの歌を考えるうえでは、強く聞こえる瞬間と同じくらい、その前の声の扱いが大事になります。

2016年のHikaru(撮影:菊池貴裕)
2016年のHikaru(撮影:菊池貴裕)。
画像出典:画像掲載元

息継ぎも、言葉を届けるために決める

「The Sacred Torch」は言葉が多く、特にBメロの息継ぎをどこに置くかが課題でした。
Hikaruは呼吸の位置を決め、言葉をしっかり届ける意識で録ったといいます。

一息で長く歌えれば、それだけで説得力が出るわけではありません。
言葉を途中で崩さず、次のフレーズにも意図を残すには、息を入れる場所も曲の一部になります。
強く聞こえる歌を考えるとき、鳴っている声だけでなく、その声をつなぐ呼吸にも目を向けたいところです。

太い声と柔らかい声で、人物の違いを描く

「Determination」では、一番と二番で人物の視点を分けています。
一番は胸のあたりに響きを感じる太い声、二番は明るめで柔らかい音色。
最後のサビは力強くし、下のハーモニーも目立たせて、二人が歌うようなイメージにしたと説明しています。

胸の響きという言い方は、本人が歌う際の感覚です。
その一言から発声器官の働きまで決めつけることは出来ませんが、音色を選ぶ目的は明確です。
人物の視点が替わったことを、声の違いで伝える。
音の高さを正しくなぞるだけでは届かない情報を、声色にも担わせています。

一番と二番を比べるなら、人物の視点が替わるところで、声の印象もどう変わるかを追えます。
同じ歌い手の声色が、曲の物語を読み分ける手がかりになるのです。

息を混ぜる場所には、歌詞との関係がある

「JUST DO IT」では、意味を重ねた言葉に息を多めに含ませ、色気を感じさせるようにしたといいます。
曲の格好よさを主軸にしながら、歌では別の表情も試す。
伴奏と声が、同じ性格だけを強調する必要はないという考え方です。

「IMPOSSIBLE LOVE」でも、英語の箇所に息を多く混ぜたと説明しています。
若い主人公の気持ちを描きながら、音色には少し大人びた雰囲気を加えていました。

息を含む声を、弱い声だから劣ると扱う必要はありません。
どの言葉をどんな表情で伝えるかによって、芯を強く示す声とは違う役目を持てます。
逆に、すべての箇所を同じように息っぽくすれば、曲の中の違いは薄れます。
息の多さそのものを特徴にするより、どこでその声を選ぶかにHikaruの工夫があります。

「JUST DO IT」発売時のHikaru。2022年の取材掲載写真
「JUST DO IT」発売時のHikaru。
2022年の取材掲載写真。
画像出典:画像掲載元

「Altern-ate-」では、最初に届く言葉を何にするか、伝えたい内容をどの順番で置くかも、自ら考えています。
主役の気持ちに入る箇所と、少し離れて物語を見る箇所を、歌詞の段階で作っていました。

声の表情を後から付け足すだけでなく、どの立場から何を伝える歌なのかを決めておく。
音色の変化が単なる技巧に終わらないのは、こうした言葉の設計も伴っているからだと考えられます。

ハーモニーでは、自分の存在と主旋律を両方考える

Kalafinaでほかのメンバーが主旋律を歌うとき、Hikaruは相手とのバランスを大切にしていました。
同時に、自分が歌っていることも客席へ届く必要があると考えていたといいます。
支える声になったからといって、個性をすべて消すわけではないのです。

三人の声を聴き分けるときには、主旋律だけを追う聴き方から、重なっている声へ意識を移してみるのも面白いでしょう。
一人の声の強さと、全体の中での存在感は、必ずしも同じものではありません。
相手がいるから選ばれる声もある、と考えると、ソロとは異なる判断が見えてきます。

録音とライブで、繊細さの届け方を考える

「JUST DO IT」のライブでは、録音と同じ繊細さで歌うと、かえって伝わりにくい部分があると話しています。
強い箇所と細かな表現を、舞台でどう組み立てるかを考える必要がありました。

以前からHikaruは、自分の気持ちを一方的に伝えるだけでなく、客席の表情や気持ちを受け取り、それを踏まえて歌うようになったと語っています。

録音の細部をそのまま再現することと、その場にいる人へ伝えること。
両方を考えるからこそ、歌は会場でも動いていきます。
鋭い言葉、滑らかな旋律、太さの違う声、息を含んだ音色。
Hikaruの歌い方は、それらを曲の人物や相手に合わせて選ぶ姿勢から捉えると、力強さの先まで見えてきます。
その選択が広がった歩みは、Hikaru(Kalafina)の歌唱変遷でたどっています。

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