LISA(m-flo)の歌声の変遷|変わった声で、あの頃の歌と新しい歌をつなぐ

LISA/2018年の取材掲載写真 LISA(m-flo)
LISA/2018年の取材掲載写真

昔の歌を、昔のまま届けたい。
その願いは、自分の声が変わったと分かっている歌手にとって、簡単なものではありません。
LISAはm-floへの復帰後、以前の曲の印象を保つために、歌う前の準備を重ねていると話していました。

m-floの声になる前から、自分で歌ってきた

LISAは18歳でソロ活動を始め、1998年にm-floへ加入しました。
グループがメジャーデビューしたのは1999年です。
ラップを担うVERBAL、トラックを作る☆Taku Takahashiとともに、その音楽の歌を担う存在になりました。
2002年にはソロ曲「move on」を発表し、同年にグループを離れています。
ただ、歌手としての歩みは、そこで途切れたわけではありません。

もともとLISAは、学校の聖歌隊で歌っていた人です。
m-floへ加わる前には、朝本浩文とのRam Jam Worldでも活動していました。
本人は、離脱後も楽曲提供やライブへの参加を続け、m-floの二人とも制作や共演を重ねていたと振り返っています。
表舞台への露出が減った時期を、そのまま歌わなかった空白と捉えると、この後の変化は見えにくくなります。

2003年のソロアルバム『JUICY MUSIC』では、自ら制作を担い、R&Bやヒップホップに加えてハウス、ロック、レゲエなどへ曲の幅を広げました。
「バビロンの奇跡」では東京スカパラダイスオーケストラとも組んでいます。
一つのグループを象徴する声から、さまざまな演奏の中で自分の歌を形にする歌手へ。
ここで起きたのは、活動名義の変更だけではなく、歌を置く音楽を自分で選ぶ機会の広がりでした。

2016年、声を作り替えずに童謡を歌う

英語の童謡を取り上げた2016年の『avex nico presents KID'S SONGS vol.1』は、その広がりを考えるうえで面白い作品です。
☆Takuが監修し、Mitsunori Ikedaがサウンドを制作しました。
「幸せなら手をたたこう」や「うみ」など、親しみのある曲がダンス音楽の感覚で編み直されています。

LISAは、別の声を作らずに歌ったと話しています。
求められた自分の声を、そのまま生かす考えでした。
それでも☆Takuは、いつもより優しく感じられる声を指摘します。
本人が理由として挙げたのは、優しい気持ちで歌っていたことでした。

☆TakuとLISA/2016年の対談掲載写真
☆TakuとLISA/2016年の対談掲載写真。
画像出典:画像掲載元

2017年12月、LISAのm-floへの本格復帰が発表されました。
復帰第一弾の『the tripod e.p.2』は、1999年のメジャーデビュー作を思わせる名前を持ちながら、現在の三人で新しい曲を作る出発点になっています。

復帰後は、昔の声を守りながら今の言葉を届ける

2018年のLISAには、長い時間の中で声が変わったという自覚がありました。
以前の曲を聴き手の記憶に近い形で歌うため、コンディションを整えることも大切にしていました。
懐かしい歌も、準備を経て届いていました。

一方、復帰後の「never」では、その時の自分だから伝えられる言葉へ向かいます。
LISAはこの曲を、仲間やファンに宛てた手紙のように捉えていました。
彼女の歌を受けてVERBALがラップを考え、☆Takuがトラックを組み立てる。
最初から決まった完成形へ声を当てはめるのではなく、歌の内容を中心に三人が応答する作り方です。
戻ってきた声は、昔を再現する役割だけにとどまりませんでした。

2019年、磨き直さない歌と新しい役割

アルバム『KYO』では、初期のm-floを懐かしむだけでは足りないという意識が、制作を動かしました。
☆Takuは二人へ、さらに先の表現を求めます。
LISAは、その要求に葛藤しながらも、完成した作品に冒険を感じたと話しています。
以前の持ち味を捨てるためではなく、それだけで次の曲を決めないためのやり取りでした。

その中の「PULSE」では、LISAの歌を録り直さずに残しています。
☆Takuが、その瞬間にしかできない歌い方だと感じたためです。
さらに☆Taku自身も歌い、二人のデュエットになりました。

新しさを求める制作が、すべて録り直しや修正へ向かうわけではありません。
出てきた声を残す判断によって、曲の個性が決まる場合もあります。
LISAは、歌詞の意味を説明せず、自由に感じてほしいと望みました。

同じアルバムでは、ラップにも取り組んでいます。
VERBALの助言を受け、日本語と英語を扱いながら、メロディを歌うときとは違う役割を引き受けました。
歌う部分はLISA、ラップはVERBALという分担の中へ、別の組み合わせが入ってきたのです。
柔らかな歌声だけで自分の居場所を決めない姿勢が、作品の幅を支えていました。

「come again」を歌い重ねた後の再録

2001年の代表曲「come again」は、その後も歌われ続けています。
2025年にはTHE FIRST TAKEで、アコースティック編成による一発録りを披露しました。
元の録音を流す企画ではなく、その時の三人が別の演奏条件で向き合う場です。

さらに2026年の「come again *Reloaded」では、櫻井翔を迎えるとともに、LISAとVERBALのパートも新たに録り直しています。
原曲に沿っていながら表情が豊かになったと指摘されたLISAは、何度も歌ってきたことを理由に挙げました。
VERBALも、多くのステージを経てからの録音では、感覚が違ったと話しています。

同じ旋律でも、最初の録音を終えた時点で解釈が固定されるわけではありません。
旧曲の印象を守ろうとする意識と、歌い重ねて増える表情。
その二つが、ここでは一つの再録に重なっています。

新しい歌が、今の声の使い道を増やす

2026年のアルバム『SUPERLIMINAL』でも、LISAは☆Takuの要求を受け、メロディや歌詞を作り直しました。
伝える内容をどこまで深くするか、曲へどう追いつくか。
そのやり取りによって、今までと違う自分を出せたと語っています。
VERBALから促され、自分でラップを書くことにも向かいました。
長く歌ってきたからこそ、得意な表現だけで曲を完成させない関係が続いています。

同年8月のソロ曲「fake.」では、力強さと鋭さを打ち出した歌が前に出ています。
柔らかな声を懐かしむ聴き方だけでは、現在のLISAを捉え切れません。

「fake.」のジャケット(2026年)
「fake.」のジャケット(2026年)。
画像出典:画像掲載元

この曲がドラマの主題歌に決まった際、本人は、先に書いていた歌詞が作品のテーマと重なったことを喜んでいました。
与えられた役柄だけで歌が生まれるのではなく、自分が書いた言葉が新しい場面に出会うこともあります。

LISAの歩みには、守るための準備と、変えるための試行が並んでいます。
昔の歌が今も届くことと、新しい歌で違う顔を見せること。
その両方を続ける姿に、この歌手の時間が表れています。

声やリズムの使い分けは、LISA(m-flo)の歌い方で詳しく取り上げています。

アイキャッチ:LISA/2018年の取材掲載写真/画像掲載元

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