Beverlyの歌い方は高音だけ?速い曲のリズム、語尾、声色の選び方

黄色い背景の前に立つBeverly Beverly

Beverlyの「I need your love」では、強い高音が最初に印象に残ります。
けれども本人が日本デビュー後に課題として挙げたのは、最高音を更新することではなく、速い曲のリズムをどう取るかでした。
バラードを多く歌ってきた彼女にとって、アップテンポの曲は新しい挑戦だったのです。

「どこを強く出すか」だけで歌い方を説明すると、Beverlyが曲ごとに選んできた工夫が抜けます。
短い言葉をはっきり置く、必要なフレーズだけを高くする、同じ高音にファルセットを混ぜる、知っているカバー曲でも新しい拍に乗せ直す。
本人が制作時に語った曲を手がかりに、その判断を見ていきます。

「I need your love」で難しかったのは、高さだけではない

「I need your love」はドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』を通して多くの人に届きました。
Beverlyは高い声を出せることを自分の強みとしていましたが、この曲については、フィリピンで慣れていたスローなバラードと違うアップテンポの歌で、最初は心配だったと話しています。
後に初期の録音を見返した本人も、リズムの取り方や音程には課題があったと語りました。

高音が長く続くサビだけを切り出して「力で押す歌」と受け取ると、その前後で言葉を拍に合わせる仕事を見落とします。
歌い出しからサビへ勢いを作るためには、音の高さに到達することと、次の言葉を遅らせずに渡すことの両方が要る。
本人が速い曲のリズムを大きな課題として説明しているからこそ、高音に向かうまでの言葉の運びにも注目したい曲です。

2019年のライブで歌うBeverly
2019年のライブで歌うBeverly 出典:avex portal

「LOVE THERAPY」は、軽さの中で高い声を置く

2018年の「LOVE THERAPY」は明るいR&Bです。
本人は、録音時にリラックスして歌え、高い声も気持ちよく出せたと話しました。
好きな人を思い出し、笑顔で歌ったとも語っています。
ここにある高音は、深刻さを増すためだけのものではありません。
曲の軽さを壊さずに、明るい気持ちを押し上げる役割を持っています。

Beverlyはこの時期、ジャズ、EDM、J-POPなどを聴き、ジャンルごとの歌い方を試したといいます。
「LOVE THERAPY」でリラックスして高音を出せたという本人の話は、同じ歌手でも曲調によって声の前提を変えていることを示します。
高い音を難所として構えるだけでなく、その歌が持つ楽しい気分を自分にも作る。
笑顔で録音したという話は、声の表情と、歌うときに思い浮かべる相手とのつながりを教えてくれます。

「Fly in the sky」と「尊い」――伸ばす場所と刻む場所

『24』収録の「Fly in the sky」について、Beverlyは高い部分がかなり高かったと認めています。
ただし本人が言うように、その高さが続くのは二つのフレーズです。
高い音が二つのフレーズに凝縮されるからこそ、その前後との違いにも耳を向けられます。
ずっとその高さで歌うのは大変だ、と笑った発言からも、どこで使うかという設計が分かります。

同じ歌手でも、2019年の「尊い」は別の課題でした。
岡崎体育が作詞・作曲したディスコ歌謡で、短い言葉が繰り返されます。
本人は、その言葉を明瞭に歌いながら、観客が口ずさめる軽さを保つことに苦労したと話しています。
伸びる一音で驚かせる「Fly in the sky」と、短い音を歯切れよく並べる「尊い」。
高さだけで二曲を評価すると、後者の難しさは消えてしまいます。

英語と日本語をまたぐとき、言葉の区切りを変える

Beverlyは英語詞と日本語詞を歌い、2022年の『from JPN』では過去の曲の英語版と新曲の日本語版を並べました。
本人は、英語では多少ゆるく音に乗れる一方、日本語では明瞭に発音しないと意味が届きにくいと説明しています。
単純に「日本語がうまくなった」で終わる話ではなく、歌詞のどこで音を区切るか、どの母音を聞かせるかの判断が必要です。

取材では、自分の日本語の「キ」や「イ」が曖昧に聞こえると指摘され、録音を重ねて練習したとも語りました。
本人は、舌が少し巻いてしまうことで母音が曖昧に聞こえるらしい、と説明しています。
単にもっと強く発音するのではなく、慣れた舌の動きが、日本語の聞こえ方にどう影響するかを確かめる課題だったのです。

英語と日本語の混ざる「All I Want」のような曲では、一行の中でも言葉の置き方が変わります。
音を滑らせる心地よさと、聞き手に意味を伝える明瞭さの両方を探しているのです。

ライブでマイクを持つBeverly
ライブで歌うBeverly 出典:avex portal

「VOWS」では、強い高音だけに頼らない

「VOWS」はBeverly自身が言葉を書いたウェディングソングです。
2022年の本人は、高音はデビュー時からの特徴だが、今はもっと制御したいと話しました。
助言を受けて、同じ高い音域でもファルセットを混ぜ、声の表情を増やそうと練習したといいます。
大きな音で歌い続けるほど感情が伝わる、という発想ではありません。

結婚式で歌ってみたいと本人が話すこの曲では、誓いの言葉が主役です。
声が前へ飛ぶ場面と、柔らかく言葉を置く場面を分けることが、歌の内容に合います。
本人が明かしたのは「高音をなくす」選択ではなく、高音の中に違う質感を作る選択でした。

その高い声自体も、最初から本人が自在に扱えていたわけではありません。
14歳ごろ、先生から渡された高い曲を無理だと思いながら試し、声が出たことに自分でも驚いたと話しています。
自分の声で可能なことを知る経験と、その声を曲に合わせて選び直す経験。
「VOWS」でのファルセットの練習は、後者を深める取り組みだったのでしょう。

カバー曲では、知っている旋律を新しい拍へ移す

2024年の「If I Ain’t Got You」カバーで、Beverlyは思いがけない壁に当たりました。
慣れた原曲の三連の感覚が、JU!iEによる8ビートの編曲で変わったのです。
本人は最初、歌い方が分からず制作者に尋ね、教わりながら録音したと振り返っています。
原曲を歌えるから新しいアレンジでも同じように歌える、とは限りません。

「Killing Me Softly with His Song」では、逆に冒頭の声の重ね方が課題でした。
Beverlyは原曲の感触を大切にしながら、ハーモニー、ユニゾン、オクターブを組み合わせて自身の版を作ったと説明しています。
一人の高音を前へ出すより、複数の声がどの幅で重なるかを考える。
カバーを通しても、声の選択肢は広がっています。

名曲を歌うときには、作り手との会話も大事にしています。
小室哲哉やYOSHIKIの曲を歌う際には、まず本人たちとやり取りし、どのように歌ってほしいのかを確認したと話しました。
高い声を持っていることを出発点にしながら、その曲の主役にする表情は、相手の意図を受け取って決める。
カバーのリズムを教わり直す姿勢にも通じる、Beverlyの歌への向き合い方です。

Beverlyの歌い方を一言で「ハイトーン」と呼ぶことはできます。
しかし曲を追うと、速い歌のタイミング、短い言葉の明瞭さ、英語と日本語の発音、ファルセット、編曲が変えた拍への対応まで、別々の判断があります。
高い声をどこで使い、何を聞き手に届けるか。
その選び方がどう育ったかは、Beverlyの歌唱変遷で時期を追って読めます。

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