ORANGE RANGEのRYOは、三人で歌う自分たちを「三人そろって一人前」と感じていました。
一人でも客を盛り上げられる歌手になりたい。
2014年に始めたソロ活動には、その思いがありました。
ところが、経験を重ねた2022年には、三人の中で低い声を担う役割へ、一周して戻ったようだと語っています。
一人で歌う挑戦は、バンドの自分に何をもたらしたのでしょうか。
2003年――まずは、三人で歌い続ける場所を作る
RYO、HIROKI、YAMATOが歌うORANGE RANGEは、2003年に「キリキリマイ」でメジャーデビューしました。
低い声を担当するRYOにとって、複数の声を入れ替えながら一曲を作ることが、歌手としての出発点です。
自分が歌う箇所を受け持ち、次の声へ渡す。
その編成の中で、長く活動していきたいと考えていました。
デビューした頃には、30歳になっても同じペースで音楽を続けていたいという願いがあったそうです。
一方で、すぐに姿を消してしまうのではないかという不安もありました。
RYOはライブを増やしたいと周囲に伝え、先輩バンドのように、ステージを続けていけば活動も続けられると考えます。
ライブ中心の活動が軌道に乗ると、その不安は薄れていきました。
次に浮かんだのが、自分一人では何ができるのかという問いです。
三人で作る曲が盛り上がることと、一人で観客を引っ張れることは、同じではありません。
RYOは、一人でもそれができるようになったうえでORANGE RANGEを続けたら、もっとよくなるはずだと考えていました。
2014〜15年――ライブの最初から、一人で引き受ける
2014年、RYOは「Tim Don!-Don! feat. DJ KEIN」を発表し、ソロ名義の活動を始めます。
地方のイベントへ事前の告知なしで出演し、そこで聴いてくれた人との関係を作るところから進めていったそうです。
三人でステージを支えるときとは違い、まず自分一人の歌で、その場の人を振り向かせる必要がありました。
翌年のソロアルバム『DELIGHT』で軸にしたのは、分かりやすさと、その時の自分です。
2015年のうたまっぷの取材では、当時のバンドには架空の設定やひねった発想の曲が増えている一方、ソロでは最初に浮かんだ旋律や言葉をなるべく生かしたと説明しています。
自分が中心になるからこそ、何を届ける曲なのかをはっきりさせようとしていました。
「Pump it up」は、一人のライブを始めるための曲として作りました。
客が乗りやすいテンポと分かりやすいサビを考え、当初は気軽に始められる曲を目指したそうです。
ところが制作が進むと、勢いを止めずに走るような曲になった。
実際のイベントで観客が踊る姿を見て、本人も手応えを得ています。

写真出典:音楽ナタリーの2015年取材
バンドの制作と同時に進める曲もあり、気持ちの切り替えには苦労しました。
それでも、自分の曲が増える喜びや期待が上回ったと振り返っています。
私立恵比寿中学へ提供した「夏だぜジョニー」を自分で歌う際には、キーを下げたトラックを改めて録ってもらいました。
一部分だけを担当する歌から、自分の声で一曲を成立させる歌へ、準備の範囲も広がっていたのです。
「夏だぜジョニー」2015年、RYOのセルフカバーMV(しゃれおつ涼名義)。
即興で歌う人を見て、書き続ける意味が変わる
この時期にRYOが目標として挙げたのは、現場で見たTEEでした。
その場で音に合うリズムを作り、言葉を乗せ、韻まで踏んでしまう。
しかも旋律が耳に残ることに驚いたそうです。
用意した自分の曲を歌い切るだけでなく、その場で歌を生み出せる自由さにひかれていました。
そこへ近づくには、間を空けずに言葉を書き、曲を作り続ける必要があるとRYOは考えます。
ソロアルバムを完成させることが最終地点ではありませんでした。
同じ2015年の取材では、並行して作っていたバンドのアルバム『TEN』にも自分から案を持ち込んだ曲があり、ソロの経験が反映されていると話しています。
自分が中心になる曲ならどうしたいか、どう分かりやすく客を盛り上げるか。
一人で試したことで、バンド内で担いたい仕事も具体的になりました。
2018年――空いているラップの場所へ、自分の経験を入れる
2018年の『ELEVEN PIECE』では、NAOTOやYOHから届くデモのラップ部分が空いていて、そこへ詞を乗せて返すという作り方を説明しています。
自分を中心に一曲を作るソロとは異なり、ほかの人が作った音の流れへ、自分の言葉を入れる作業です。
その中でも「Theme of KOZA」は、まだ歌詞のない状態で届きました。
題材を地元のコザにすることは決まっていたため、言葉はすぐに浮かんだそうです。
一時は寂しくなっていた街が少しずつ元気を取り戻す様子や、飲食店の人、ヒップホップをする人たちの個性が、本人の中にありました。
自分が経験したことを、聴き手にも届く言葉へ変えていく。
バンドから渡された空白が、RYO自身の見てきた街を歌う場所になりました。
さらに、録音後の仕事もあります。
曲をライブのどこに置き、どう見せるかは、三人のボーカルがスタッフの意見も聞きながら考えていました。
RYOは空いた時間にスタジオへ入り、音に合う声を探し、詞を書いてラップすることも続けています。
そうしていないと、舞台で言葉が自然に出てこなくなる気がすると話しました。
2015年に語った、書き続けてその場で歌える力をつけたいという思いは、バンドの曲に取り組む日常にも通じています。
2022年――一人で歌ったから、三人のバランスが分かる
コロナ禍でツアーが止まったとき、RYOは最初の数カ月こそ混乱したものの、その後は気持ちを切り替えたといいます。
歌詞を書く際の考え方を最初から見直し、力を底上げできた時期だったそうです。
2022年のVocal Magazine Webの取材では、音を聴きながら声に合うリズムを探し、その後に言葉を入れる作り方も話しています。
漁港で作ってみると調子がよく、以後もそこで詞を書くようになりました。
『Double Circle』の「Illusion feat.ペチュニアロックス」では、言葉の強さに気を配りました。
メッセージを曖昧にしたくない一方、選び方を誤ると人を傷つけるかもしれない。
何度も聴き直し、考えたそうです。
低い声で勢いを作るだけでなく、その声で何を言うかも、作り直していたのです。

左がRYO、右がYAMATO。
写真出典:USEN encoreの2022年取材
歌への意識の変化を聞かれると、何度も変えようと挑戦した末、一周して元へ戻った感覚があると答えています。
曲の場面が変わるところに入り、低い声で色をつける。
NAOTOやYOHが作る曲から、自分に求められる役割が分かるようになったそうです。
バンドを始めたときにも考えていた役目を、以前より強く自覚していました。
三人で歌うことへの見方も深まっています。
ソロだと自分が全部歌い切らねばという責任を背負う一方、三人のライブでは、歌い切ることと客を楽しませることの配分がちょうどよい。
一人でやってみたからこそ、その違いを実感できたのです。
同年の「Pantyna feat.ソイソース」では、得意な作風だと考えた仲間から作詞を任されています。
自分の持ち場を知ることは、その中だけに閉じこもることではなく、仲間から渡される仕事も引き受けることでした。
2025年――自分の一節から、次の場面までを考える
アニメ『戦隊大失格』の主題歌「マジで世界変えちゃう5秒前」でRYOが歌うのは、二番のAメロです。
一番のサビとストリングスの後に入り、音数が減る次のBメロへつなぐ必要がありました。
どれくらいの速さと熱量で歌えば、その前後に合うのか。
本人は試行錯誤し、途中でリズムの運びを切り替えたと説明しています。
言葉にも、前の場面との違いを作りました。
曲の前半には遊びのある言葉が多いため、自分の箇所ではふざける必要はないと考えます。
アニメの主人公が持つ強さと、少しの迷いを描きたい。
曲の流れが変わるところで低い声を使うという役割が、リズムと歌詞の両方に具体化していました。
同年の『THE FIRST TAKE』の「花」では、歌い出しが元の音源と違う版を披露しています。
RYOによれば、ライブで取り組んできた形だったため、手応えがありました。
録音を作った時点で終わらず、舞台で試してきた届け方を、別の場にも持ち込めるようになっていたのです。
「花」2025年、『THE FIRST TAKE』。
一人で客を盛り上げようとした経験が、三人で歌う意味も改めて教えてくれました。
自分が引っ張る曲も、仲間の声を受けて次の場面へ渡す曲も、その中で何を担うかを考えられるようになりました。
RYOの変遷は、自分一人の歌を作った先で、三人だからできる歌を選び直してきた歩みです。
一節の譜割や発音、ほかの音との入り方は、RYOの歌い方で掘り下げています。

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