ターヤ・トゥルネン(元Nightwish)の歌声の変遷|Nightwishの声から、自分の歌を作るまで

2005年、Nightwish在籍期のターヤ・トゥルネン(Pukkelpop) シンガー
Carina Verbist / CC BY 2.0

若いころから、ターヤ・トゥルネンの声には、周囲を驚かせる力がありました。
けれど本人は、Nightwishで歌い始めたころ、その声を曲に合わせて自由に使えずにいました。
聴き手がターヤらしさとして覚えた声を、歌っている本人は、まだ使いこなそうとしていたのです。

そこから何が変わったのでしょうか。
声の強さを調節できるようになり、ソロでは歌詞も伴奏も自分で考え、やがて、かつて同じバンドで歌った仲間のために旋律を書くようになります。
1999年の「Sleeping Sun」から2026年の「Leap of Faith」までをたどると、歌唱の上達と、曲を作る立場の変化が重なって見えてきます。

1996年、メンバーが知らなかったターヤの声

Nightwishは、初めから現在のような重い音楽を目指していたわけではありません。
1996年にトゥオマス・ホロパイネンが考えたのは、アコースティックギターやピアノなどに女性の歌を合わせる、穏やかな音楽でした。
歌手として声をかけたターヤは、以前からの知り合いです。
メンバーの記憶には、昔の柔らかい声が残っていました。

ところが、録音に来たターヤの声は、その記憶と大きく違っていました。
彼女はクラシックのレッスンを受け、力強く響く声で歌うようになっていたのです。
メンバーは、その間に彼女の歌い方がどれほど変わったかを知りませんでした。

この予想外の声から、重い音楽と組み合わせる発想が生まれます。
ほかのメンバーにはメタルの経験があり、バンドはエレキギターとドラムを加える方向へ進みました。
オペラを思わせる声が生楽器に合わないからではなく、彼らが考えていた歌とは違うものに出会い、自分たちの得意な音楽で生かすことを選んだのです。

ただ、バンドの方向が決まっても、ターヤの苦労は続きました。
本人によれば、当時はまだクラシックの声楽を学び始めた段階で、声を柔軟に使う力が足りませんでした。
Nightwishの曲をどう歌えばよいのか、答えを教えてくれる人もいなかったといいます。

手がかりになったのは、レッスンを続けることでした。
クラシックで上達すると、バンドの歌も歌いやすくなる。
その関係に気づき、自分で試しながら歌い方を探していきます。
ステージで自信を感じ始めたのは、本人の振り返りでは2002年ごろです。

1999年の「Sleeping Sun」を録音したのは、舞台での自信をつかむ前のことです。
作品を発表しながらも、ターヤは曲に合わせて声を使い分ける方法を探していました。

2007〜2010年、歌以外のことも自分で決める

2008年、ブエノスアイレスのObras Stadiumで歌うターヤ・トゥルネン
2008年、ブエノスアイレスのObras Stadiumで歌うターヤ・トゥルネン。写真:Wikipedia user ReyBrujo / CC BY-SA 3.0

2005年にNightwishを離れ、2007年にロックのソロアルバム『My Winter Storm』を発表します。
「I Walk Alone」は、この時期を代表する曲です。
名前も声も広く知られた歌手としての出発でしたが、アルバムを作る仕事では、初めて経験することが多くありました。

それまでのターヤは、バンドで歌った経験は豊富でも、一人で曲を作った経験がありませんでした。
ソロになると、どんな曲を歌うかに加え、誰に何を演奏してほしいか、作品をどんな音にしたいかまで、周囲に説明しなければなりません。
レコード会社、プロデューサー、演奏者に自分の希望を伝えることが、最初の大きな課題になりました。

歌の録音を終えても、作品全体について判断する仕事が残ります。
自分の声を支える演奏はこれでよいか、欲しかった音に仕上がっているか。
ターヤは、自分の名前で作品を出すことの意味を、制作の一つ一つで学んでいったのです。

この経験を経た2010年の『What Lies Beneath』では、自らプロデュースも手がけます。
『My Winter Storm』の制作が最も大変だったと振り返る一方、『What Lies Beneath』の制作は楽しかったと話しています。
自分の歌を中心に、演奏や音の仕上がりまで決めていく仕事に、少しずつ自信がついていました。

2019年、高音が楽になった歌手が、軽やかな歌も選ぶ

2019年の『In the Raw』を発表したころ、ターヤは、高音が以前よりも楽に出ると話していました。
日々の訓練を重ね、40歳を過ぎて自分への自信も増した時期です。
このアルバムを聴き、初期のNightwishより軽く歌っていると感じた聴き手もいます。

その聴き手は、澄んだ響きや声の力を保ちながら、ずっと強く押し出す歌い方にはしていないと評しています。
特に「Railroads」では、軽やかな歌から、オペラを思わせるサビへ進む展開を挙げていました。

初期には、声を曲に合わせて柔軟に使うのが難しかったと、ターヤは振り返っていました。
「Railroads」に寄せられた評では、軽く歌う部分と大きく響かせる部分を、一曲の中で使い分けていることが評価されています。

同じアルバムの「You and I」は、ピアノを中心とするバラードです。
長く彼女を追ってきたファンの評では、この曲の歌と言葉に、アルバムを聴き終える前から心をつかまれたと書かれていました。
ピアノを中心とする静かな伴奏の中で、声の迫力に加え、歌と言葉の伝わり方にもファンの関心が向いていました。

1999年の「Sleeping Sun」と「Railroads」は、曲も伴奏も違います。
比べて分かるのは、同じ条件で声がどう変わったかではなく、それぞれの時期にどんな歌を作品にしていたかです。
曲の中での声色の切り替えや、クラシックとロックでの具体的な使い分けは、ターヤ・トゥルネンの歌い方でも掘り下げています。

自分で書いた歌詞だからこそ、歌うのがつらい曲もある

2016年、Amphi Festivalで歌うターヤ・トゥルネン
2016年、Amphi Festivalで歌うターヤ・トゥルネン。写真:Atamari / CC BY-SA 4.0

『In the Raw』では、技術とは別の難しさにも向き合いました。
制作前のツアーを終えて帰宅したとき、ターヤは心身ともに疲れ切っていました。
曲はできているのに、歌詞にはまだ手をつけていない。
締め切りが迫るこの時期に書いたのは、自分や身近な人に起きた出来事をもとにした歌詞でした。

「Silent Masquerade」は、とりわけ苦しかった曲でした。
家族に関わるつらい出来事と結びついていて、書くことだけでなく、ライブで歌うのも難しくなるだろうと感じていました。
完成した録音を聴いたときには、泣いてしまったと話しています。

ここで歌いにくいのは、高い音に届かないからではありません。
自分の経験を歌詞にしたために、それを歌うことにも強い感情が伴います。
歌いたいことを自分で決められるようになったターヤは、選んだ言葉を実際に歌う難しさも引き受けるようになったのでした。

それでも、気持ちを歌詞にしたことは、本人にとって解放になったといいます。
苦しい出来事を書いた歌を、聴き手には自分自身の物語に重ねて受け取ってほしい。
個人的な曲でありながら、歌詞の意味を自分だけの経験に閉じないようにしていました。

2026年、昔の仲間の声を思い浮かべて曲を書く

2026年の『Frisson Noir』には、ターヤが作曲家としてどこまで歩いてきたかを示すデュエットがあります。
「Leap of Faith」で共演したのは、Nightwishで一緒に歌っていたマルコ・ヒエタラです。

ターヤがバンドを離れた後、二人は長い間会っていませんでした。
再会を経て交流が戻り、マルコの曲「Left on Mars」にターヤが参加します。
そのとき、ターヤは、自分の曲にも歌いに来てもらう約束をしました。
「Leap of Faith」は、その約束が形になった曲です。

ターヤはこの曲を、最初からマルコとのデュエットとして作りました。
今の彼の声を想定しながら、歌詞も、彼が歌う旋律も、二人の声が重なる部分も書いています。
本人によれば、最初から特定の共演相手を考えて一曲を作るのは、初めての経験でした。

Nightwishの初期には、自分の声をバンドの曲の中でどう使えばよいかを探していました。
今度は、自分ともう一人の歌手が歌う曲を、白紙から作っています。
同じ二人が歌う組み合わせでも、ターヤが担う仕事は大きく変わりました。

『Frisson Noir』の歌の録音では、発声の技術を細かく考え続けるより、歌詞の感情に集中できる場面が増えたと話しています。
技術的に難しい部分は意識して歌うものの、自分で書いた歌詞なら、どんな気持ちを込めたのかを録音前から理解しています。
個人的な歌詞に感情が揺さぶられる難しさはあっても、何を伝えたいのかを一から探す必要はないのです。

Nightwishで歌い始めたころのターヤは、曲に合わせて声を使う方法を探していました。
レッスンと舞台経験を重ね、ソロでは歌い方だけでなく、歌詞や演奏も自分で考えるようになります。
かつては彼女の声を聴いた仲間が、バンドの音楽を変えました。
今はターヤ自身が仲間の声を思い浮かべ、その人と歌うための曲を書いています。

今入れる? 近くで入りやすい飲食店がわかる混雑予報マップ

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました