EXILE TAKAHIROさんの歌声の変化は、「昔より高音が上手くなった」という一直線の物語ではありません。
約1万人のオーディションを武道館で勝ち抜き、完成されたグループの中心へ突然入った青年が、教えられた正解を必死に身につけ、その正解に縛られ、もう一度自分の歌い方を取り戻すまでの物語です。
武道館は、2006年に人生が変わった場所でした。
2023年にはソロ歌手としてそこへ戻り、歌う喜びを取り戻した作品を届けます。
2026年9月には、EXILE加入20周年を記念する四度目のソロ武道館公演も予定されています。
同じ会場へ戻る間に変わったのは、声の高さだけではありません。
「正しく歌わなければならない人」から、「整えない瞬間まで自分で選べる人」へ変わりました。
この記事では、EXILE加入、ACE OF SPADES、ソロ活動、長いスランプ、『EXPLORE』、20周年へ続く現在までを、本人の発言と記録をもとに年代順でたどります。
- 2006年、武道館で約1万人の中から選ばれた声
- 2007年、最初のツアーでは歌より先に緊張と戦っていた
- 2012年、ACE OF SPADESが声を「歌」から「バンドの音」へ変えた
- 2013年、『一千一秒』で一人の歌が物語を最後まで背負った
- 活動の途中から七年、低音まで遠くなったスランプ
- 2020年から2021年、過去の名曲が成熟した声の鏡になった
- 2023年、『EXPLORE』で安全に歌うことをやめた
- 2024年から2026年、ロックとEXILEが一つの経歴になった
- 変わらない声と、変わった「きれいさ」の意味
- まとめ|EXILE TAKAHIROの20年は、自分の声へ戻るための往復だった
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2006年、武道館で約1万人の中から選ばれた声
2006年9月22日、EXILE VOCAL BATTLE AUDITIONの最終決戦が日本武道館で行われました。
約1万人の応募者から選ばれたTAKAHIROさんは、その日からEXILEの新ボーカルになります。
歌手として少しずつ現場へ入ったのではありません。
すでに大きな支持を得ていたグループで、ATSUSHIさんの隣に立ち、多くの人が知る曲を歌う役目を突然背負いました。
周囲は声の良さとスター性を早くから感じていましたが、本人の内側には大きな自信があったわけではありません。
足りない経験を埋めるため、指示されたことを一度すべて受け止め、やれることは何でもやろうと決めます。
加入後最初のシングル『Everything』では、個性を強く押し出すより、EXILEのスケールへ新しい声をなじませることが先にありました。
この時期の丁寧さは、後に長所にも壁にもなる歌唱の土台です。

2007年、最初のツアーでは歌より先に緊張と戦っていた
加入翌年のツアーで、TAKAHIROさんは強い緊張を経験しました。
大勢の前で歌う技術だけでなく、長い公演を続け、毎回同じ責任を果たす身体の使い方を覚える必要がありました。
当時から睡眠時にマスクを使い、歌う前の酒を避け、大声で話さないなど、喉を守る習慣を続けています。
俳優活動を経験した後には、喉だけへ負担を集めず、身体全体で声を出す感覚も得たと話しました。
初期の変化は、派手な高音技術の獲得ではありません。
一回のオーディションで選ばれた声を、ツアーで何十回も届けられる声へ変えることでした。
2012年、ACE OF SPADESが声を「歌」から「バンドの音」へ変えた
2012年、GLAYのHISASHIさんらとACE OF SPADESを結成します。
ロックを愛してきたTAKAHIROさんにとって、EXILEとは違う身体感覚で歌える場所が生まれました。
バンドの録音では、自分の声を完成した伴奏の上へ美しく載せるのではなく、ギターやドラムと同じ一つの音として考えたと本人は語っています。
演奏へ声を合わせるだけでなく、演奏から受けた刺激を声で返す方法を覚えました。
EXILEのステージでは、二人のボーカル、ダンス、照明、物語を精密につなぐ必要があります。
ACE OF SPADESでは、荒い息や強い言葉も、その場の演奏に必要なら残せます。
後にTAKAHIROさんのきれいな声がロック作品でも薄くならなかったのは、この時期に声を主役として守るのではなく、バンドへ混ぜる方法を知ったからです。
2013年、『一千一秒』で一人の歌が物語を最後まで背負った
2013年の『一千一秒』で、EXILE TAKAHIROとしてのソロ活動が始まります。
グループではATSUSHIさんと声を受け渡せますが、ソロでは歌い出しから最後の余韻まで、一人の声で曲の人物を保たなければなりません。
バラードを丁寧に歌える強みが、ここでは全面へ出ました。
一方で、きれいに歌い切れることが期待されるほど、音程、声量、ビブラートを崩さない責任も大きくなります。
EXILE、ロックバンド、ソロという三つの場所を持ったことで、歌い方の選択肢は増えました。
しかし、できることが増えるのと、自由に歌えることは同じではありませんでした。
活動の途中から七年、低音まで遠くなったスランプ
TAKAHIROさんは、長い活動の途中で七年ほどのスランプを経験したと明かしています。
低い話し声を持つのに低音が出なくなり、歌うことが怖くなり、辞めることまで考えました。
本人は当時、尊敬するATSUSHIさんへ近づこうとしていました。
デビュー時には右手で持っていたマイクも、いつしか左手になっています。
技術や姿勢を学ぶことが、自分にとって自然だった形を失うところまで進んでいたのです。
転機は、夢の中で自由に歌う自分が右手でマイクを持っていたことでした。
実際に右手へ戻すと身体の向きや声の飛び方が変わり、歌が楽しいという感覚も戻ったと語っています。
医学的に右手が正解という意味ではありません。
自分ではない誰かの正解を守ることと、自分の身体で歌うことの違いに気づいた出来事でした。
2020年から2021年、過去の名曲が成熟した声の鏡になった
2020年から始まったEXILE RESPECTでは、EXILEの名曲を一人で歌い継ぎます。
若い頃にATSUSHIさんと分け合った曲へ、ソロ歌手として向き合い直す企画です。
2021年に公開された『Lovers Again』の一発撮りでは、初期からある滑らかな声を残しながら、深いビブラートやファルセット、言葉を置いた後の余韻が注目されました。
原曲と同じ若さを再現するのではなく、その後に得た経験を古い曲へ持ち帰っています。
昔の曲を歌うことは、昔へ戻ることではありません。
初期に教えられた正確さと、ロックやソロで覚えた自由が、同じメロディの中で出会う時間になりました。
2023年、『EXPLORE』で安全に歌うことをやめた
ソロ活動10周年のアルバム『EXPLORE』は、スランプを抜けたTAKAHIROさんが、自分の歌を探し直した作品です。
本人は、音程を正しく、声量を均一に、美しく歌うことを最優先にしなくなったと語っています。
かつては自分に足りないものを探し、他の歌手へ憧れる意識が強くありました。
この時期には、足りなさだけを見ることをやめ、自分の人生を丸ごと歌へ入れる方向へ変わります。
美しい声が消えたのではありません。
必要なら荒くし、息を乱し、言葉が先に飛び出す瞬間を残せるようになりました。
正確さは守らなければならない規則から、曲に応じて使う道具へ変わります。

同年には、歌手人生が始まった日本武道館で初のソロ公演を開催しました。
1万人の中から選ばれた場所へ、今度は誰かの代わりではなく、自分の名前で戻ったのです。
2024年から2026年、ロックとEXILEが一つの経歴になった
2024年の武道館公演『GLORY』では、ACE OF SPADESが再び集まりました。
初期には別の顔に見えたEXILEのボーカル、ソロ歌手、ロックバンドの三つが、一つの公演の中で並びます。
2025年には三年連続となる武道館公演『HERCULES』を行い、新曲『COIN』も制作しました。
録音映像では、完成した歌を披露するだけでなく、マイクの前で声を作っていく現在の姿が公式に残されています。
2026年9月25日には、EXILE加入20周年を記念する四度目のソロ武道館公演『JUBILEE』が予定されています。
この記事の公開時点では未来の公演であり、内容を先回りして評価することはできません。
ただ、デビューの審査会場だった武道館が、節目ごとに自分の歩みを確かめる場所へ変わったことは確かです。
変わらない声と、変わった「きれいさ」の意味
TAKAHIROさんの声には、初期から明るさと華やかさがあります。
丁寧な音程、滑らかな高音、語尾のビブラートも、長く続く特徴です。
変わったのは、そのきれいさとの距離です。
加入直後には、完成されたEXILEへ入るための規律でした。
スランプ期には、崩してはいけない正解として本人を縛ります。
現在は、バラードなら余韻に、ロックなら演奏の中で際立つ輪郭に変えられる道具です。
現在の高音、地声と裏声、ビブラートの特徴は、EXILE TAKAHIROさんの歌い方・発声分析で詳しく整理しています。
EXILE ATSUSHIさんの歌唱変遷と並べると、同じグループを支えた二人が別の時間を通って声を変えてきたことも分かります。
まとめ|EXILE TAKAHIROの20年は、自分の声へ戻るための往復だった
2006年、TAKAHIROさんは約1万人の中から日本武道館で選ばれました。
加入直後は教えをすべて受け入れ、ツアーで歌い続けられる基礎を身につけます。
ACE OF SPADESでは声をバンドの一音にし、ソロでは一人で物語を背負いました。
その一方で、正しく美しく歌おうとする意識と憧れが重なり、七年ほど歌に苦しみます。
夢をきっかけに右手でマイクを持つ自分へ戻り、『EXPLORE』では安全に歌うことをやめました。
2026年には、人生が変わった武道館で加入20周年を祝う予定です。
変遷の中心にあるのは、声が別物になったことではありません。
他者から学ぶ、自分を見失う、自分へ戻る、その上でもう一度仲間と混ざる。
TAKAHIROさんのきれいな声は、その往復を通ったからこそ、現在のロックでも生きた温度を失わないのです。
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