ウィル・ラモス(Lorna Shore)の歌い方|「To the Hellfire」の息の使い分けと、残した最初のテーク

Lorna Shore(2022年の「Loudwire」掲載写真/中央がウィル・ラモス/撮影:Mike Elliot) ウィル・ラモス(Lorna Shore)
Lorna Shore(2022年の「Loudwire」掲載写真/中央がウィル・ラモス/撮影:Mike Elliot)

「To the Hellfire」の声を考える時、息の方向と、録音で残した表現は具体的な手がかりになります。
2021年の「Loudwire」の取材では、ウィル・ラモス自身が、その声をどう出し、どのテークを選んだかを語っています。
2025年の客演曲でクリーンな歌声を提案した話とともに、曲の中での声の選択を見ていきます。

『…And I Return to Nothingness』(2021年)収録の「To the Hellfire」のミュージックビデオ。

ほとんどは吐く声、スノートだけは吸う声

吸う息と吐く息を混ぜているのかと尋ねられたラモスは、鼻を鳴らすようなスノートだけは吸い、そのほかの声は吐いて出すと説明しています。

ラモスの説明では、激しい声の中にも、息の使い方を分けている音があります。
その説明を知ると、叫びの高さや荒々しさに加え、どの種類の音を組み合わせているかにも目が向きます。

最後の声は、最初のテークを残した

曲の終盤にある動物の声のようなパートについて、ラモスは、最初に一度でできたものだったと話しています。
バンドの仲間が気に入り、彼自身はもっとよくできると試しました。
しかし制作側は、最初のものをそのまま残すよう勧めています。

本人の感覚でも、やり直すほどよさが薄れていました。
考えすぎるより、最初のテークを残そうという判断です。

もっとよくしようとする意識と、最初に出た表情を残す判断。
この録音では、後者が選ばれました。
強烈な声の印象は、出し方だけでなく、どの表現を完成版に採るかという判断にも支えられています。

叫びの終わりに、歌う声を少し残す

強烈な声の中に、あえて人の声らしい表情を残すこともあります。
2025年の『HARD FORCE』の取材では、ヴァランタン・ポシャールが、「Glenwood」などで言葉の終わりに少しかすれたクリーンな声が聞こえる点を尋ねています。
ラモスは、感情をより強く伝えるため、意識して行ったと答えました。

最後まで同じ叫びの質感で押し通すだけでなく、言葉が終わる前に声の表情を変える。
その小さな変化によって、叫んでいる人物の気持ちを近くに感じさせようとしているのです。
本人は、フレーズを叫ぶ時、自分の中にある感情を解き放っていると感じられることを大切にしていました。

ここで注目したいのは、異なる声を使う長さです。
曲全体をクリーンにするのでなく、言葉の一部分にその成分を残すだけでも、歌の印象は変わります。
荒々しい声と、感情を伝える声を、別々のものとして扱っていないことが分かります。

同じ取材で「War Machine」を語る際には、速い歌唱を詰め込むことより、よいギターリフと歌のラインを作る必要があったとも説明しています。
激しい曲でも、何もかも複雑にする必要はない。
声の種類だけでなく、どれだけの言葉を置くかにも、抑制を選ぶ場面があります。

Lorna Shore(2025年の「Loudwire」掲載写真/中央がウィル・ラモス/撮影:Mike Elliot)
Lorna Shore(2025年の「Loudwire」掲載写真/中央がウィル・ラモス/撮影:Mike Elliot)。
画像出典:画像掲載元

音程のあるスクリームで、叫びにメロディを持たせる

ラモスがピッチ・スクリーミングと呼ぶ表現も、歌うことと叫ぶことをつなぎます。
2026年1月の『Radiofreccia』の取材で、2025年作『I Feel the Everblack Festering Within Me』には、以前のLorna Shoreの曲では使っていなかったこの表現を多く取り入れたと語りました。
叫びの中に音程を持たせることで、曲の感情を強める選択です。

本人にとっても、完全に慣れきった表現ではなかったそうです。
ただ、クリーンな歌を一気に中心へ置くのでなく、叫びながら音程を出す形が、学習や試行の中から自然に生まれたと説明しています。
激しさを残しながら、メロディとしても受け取れる声を探していたのです。

この取材でラモスが望んでいたのは、声の技術だけが目立つことではありません。
切迫した気持ちで叫んでいる人物として聞こえ、声を通して感情が届くことを重視していました。
どんな特殊な音を出したかに加え、その音で何を伝えるかが、表現を選ぶ基準になっています。

「Atonement」では、クリーンな声も自分から選ぶ

Employed To Serveの「Atonement」では、相手のバンドがデモの段階からラモスの声に合うパートを用意していました。
「Sherwood」の取材によると、曲を渡した際にはアイデアを伝えつつ、彼自身のやり方に任せています。
クリーンに歌う案はラモスから出たものでした。

共演相手が考えた役割に、本人が声の選択肢を加える。
メロディをクリーンな声で歌うことも、彼が曲に持ち込める表現なのです。

Employed To Serve『Fallen Star』(2025年)収録、ウィル・ラモスが参加した「Atonement」のミュージックビデオ。

ギターが前へ出るところでは、声を詰め込みすぎない

一方、声を出せるだけ出すことが、よい歌唱につながるわけではありません。
『Metalleux de France』の取材でラモスは、『I Feel the Everblack Festering Within Me』では、ギターのよいフレーズに場所を譲ることも意識したと話しています。
ギターが前に出て、次に自分が歌い、またギターへ渡す、というやり取りです。

大量の言葉とギターの音を同時に詰め込むのでなく、それぞれが聞こえる間を作る。
本人は、そうした細部は気づかれにくくても、自分たちが取り組んだことだと説明しています。
これは息を吸う位置を指示した話ではなく、曲の中で歌が占める時間についての判断です。

「To the Hellfire」の終盤のように、声の存在感を強く印象づける場面もあれば、楽器のフレーズを聴かせる場面もある。
その対照があることで、次に入ってくる声の役割も分かりやすくなります。
スクリームの多彩さと同じくらい、出番をどう配置するかが曲を支えています。

「Lionheart」では、一人の特殊な声より大勢の声を重ねる

同じ取材では、「Lionheart」の録音についても具体的に話しています。
ラモスは、バンドのメンバーだけでなく、プロデューサーや写真家も部屋へ集め、声を録ったと振り返りました。
サビの直前にある、声が幾重にも重なる部分を作るためです。

普段は歌わない人たちまで参加する光景が、本人にとって印象深い体験になりました。
強い響きを作る方法は、自分一人の声をさらに激しくすることだけではありません。
大勢の声を組み合わせることで生まれる厚みも、曲に必要な表現として選ばれています。

最初のテークを残す、言葉の終わりで声を変える、楽器へ場所を譲る、別の人の声を加える。
ラモスの歌い方を曲の中で見ていくと、特殊な音の出し方だけでは説明できない判断が続いています。
その判断が、強烈な声を、感情やメロディを伝える歌へと結びつけているのです。

高い叫びをつかんだ経験や、クリーンな歌の学びがスクリームにもつながった歩みは、ウィル・ラモス(Lorna Shore)の歌唱変遷でたどっています。

シンガー人気投票。投票ページはこちら

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました