マネスキンで力強い歌を届けてきたダミアーノ・デイヴィッドは、ソロで、もっと個人的な面も歌に表すようになります。
ラビリンスと声を混ぜて作り込んだ「Silverlines」、ささやきから表現を膨らませる「Solitude (No One Understands Me)」。
その背景には、バンドで見せていた姿に収まりきらない自分と、以前から持っていた音楽の好みがありました。
2021年の「Zitti e buoni」からソロ初期の録音へ、声の選択を広げていく過程をたどります。
「Silverlines」(2024年)のMV。
力強い歌の姿と、その内側にあった別の自分
2021年、マネスキンは「Zitti e buoni」でユーロヴィジョンを制しました。
ソロアルバム『FUNNY little FEARS』を評したSara Oteroも、以前のダミアーノを、この曲をとどろかせるように歌う人物として振り返っています。
その迫力を知っているからこそ、ソロで聴かせるささやきや弱さを見せる表現が、大きな変化として映ったのです。
マネスキン「Zitti e buoni」(2021年)のMV。
ただ、バンドで見せていた姿だけで、本人のすべてが表されていたわけではありません。
2024年のオランダのラジオ局の取材では、バンドの中で出せずにいた一面を、自分の音楽で表したいと説明しています。
長く隠していた自分の面を見せ、アルバム制作を通じて、一人の人間としての自分を見つけ直したという話でした。
何を歌に表し、どんな人物として聴き手に向き合うか。
ソロへの移行では、その前提も問い直していました。
もともとのポップスへの好みを、ソロで広く試す
ソロ制作を振り返った2025年の取材で、ダミアーノは、バンドの4人の中でも自分はポップス寄りだったと話しています。
ロックの中で歌っていても、自分が作る歌のメロディには、もともとポップな性格があったというのです。
ソロの音楽がポップスへ向かったことは、過去の自分と切り離された出来事ではありませんでした。
一方で、最初から完成形の音が決まっていたわけでもありません。
本人によれば、どんな音になるかは、試すことと、そのときにひかれるものを追うことで見つかっていきました。
その過程では、多くの作家に会い、誰と組むか、自分の意見を押し出すか、相手の考えを聞くかも選ばなくてはなりませんでした。
初めてのソロ作品を一人でやり切れるか、不安もあったといいます。
自分の好みを表に出せる自由と、それを作品としてまとめる判断が、同時に求められていたのです。

画像出典:Man About Town
「Silverlines」は、何を声で表すかという問答から作られた
2024年9月、初のソロシングル「Silverlines」を発表します。
制作を担当したのはラビリンスでした。
本人が特に細かく取り組んだと説明したのは、二人の声を混ぜ、試す作業です。
ラビリンスは、ダミアーノが声で何を表現したいのかを尋ねたといいます。
歌い手が望む表現を聞くことから始め、声を重ねたときの形を探っていました。
力強い主役の声を前に出すことに加え、別の声と混ざることで生まれる表情も、録音の課題になっていたのです。
「Silverlines」は最初に出した曲ですが、本人にとっては、感情の上では旅の終わりに当たる曲でもありました。
自分と向き合った先に、安らぎを見つける歌として捉えていたのです。
歌の中で到達したい気持ちと、それをどういう声で届けるかが、一つの制作の中にありました。
同じ取材では、その後のアルバムについて、個人的で、劇的で、芝居のような作品になるとも説明しています。
親密な面を出すことは、表現を小さくまとめることだけを意味していませんでした。

画像出典:画像掲載元
「Solitude」では、会話のような声から解放へ進む
2025年の『FUNNY little FEARS』では、「Solitude (No One Understands Me)」の歌い方を本人が具体的に説明しています。
会話や日記のような曲と捉え、ささやきから終わりへ向けて表現を盛り上げるのが自然だったといいます。
その動きは、本人にとって解放へ向かう感覚でもありました。
この曲では、話し始めの距離感から終盤の感情へ進むために、声の強弱を使っていました。
曲の進み方と、声の届け方が結びついていたのです。
『FUNNY little FEARS』収録「Solitude (No One Understands Me)」(2025年)の公式ビジュアル映像。
アルバムの最後にこの曲を置いた理由についても、ダミアーノは話しています。
初めて自分を知る人への自己紹介であると同時に、バンドから聴いてきた人にも、自分自身のために作った作品だと示す曲でした。
ささやきを使う歌にも、歌い手として何を伝えたいかという意思が込められていたのです。
「Tangerine」には、昔から好きだった歌い方を持ち込む
同じアルバムの「Tangerine feat. d4vd」には、以前から惹かれていた歌唱への思いがあります。
ダミアーノは、柔らかく語りかけるようなクルーナースタイルを、少し現代的な歌詞の、自分らしい曲で試したかったと話しています。
ソロで新しい表情が出た背景には、昔からの好みを作品へ持ち込めるようになったこともありました。
「Tangerine feat. d4vd」(2025年)のリリック映像(Filtr Music Brasil公開)。
Oteroはこの曲について、d4vdが加わることで、陰りのあるR&Bの色合いと深さが生まれたと評しています。
ソロ作品でも、本人の声だけで完結するわけではありません。
「Silverlines」で声を混ぜて試した作業と同じように、誰と歌うかも、表情を作る選択になります。
ダミアーノのソロ初期の歩みには、自分の好みを確かめ、作り手と相談し、曲の内容に合う声を選ぶ過程があります。
力強く歌えることに、ささやくこと、声を重ねること、親密に語りかけることが加わっていく。
その変化は、同じ自分のどの面を届けるかを広げたものと捉えられます。
一曲の中での感情の動かし方や、ファルセット、共演者との声の組み合わせは、ダミアーノ・デイヴィッドの歌い方で掘り下げています。

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