BTSのVには、低いパートを多く歌ってきたからこそ、高音を苦手に感じていた時期がありました。
「Dynamite」での苦戦を経て、「Butter」では曲のイメージに合う歌い方を選ぶ。
ソロアルバム『Layover』では、発声や発音を改めて試しています。
その歩みを、ソロ曲での表現づくりや、本人が自分らしいと感じる曲の変化も交えてたどります。
『Layover』収録「Love Me Again」(2023年)のMV。
「Singularity」では、低い声の持ち味をリズムに生かす
高音への挑戦を語る前に見ておきたいのが、2018年の「Singularity」です。
この曲の制作について、プロデューサーのPdoggは、当時のVがR&Bやソウルを好み、低い音を軸にした甘い声も、その音楽に合っていたと説明しています。
その持ち味を生かすにも、曲に合うリズムの取り方が必要でした。
Pdoggによれば、リズムを少し後ろへ置くような歌い方など、グルーヴを作るのが難しい曲でした。
色気のある雰囲気を引き出すため、照明をすべて消して録音したことも明かしています。
得意な高さの声を使いながら、歌うタイミングと気持ちの入り方を探っていたのです。
V自身は、パフォーマンスを考えて音節を詰めた「Singularity」と、自分で手がける「Scenery」などを区別しています。
後者では音節を増やしすぎず、歌の中に間を残すことで表せるものを大切にしていました。
ソロで歌う曲の中にも、身体の動きと結びつける歌と、余白を残す歌という選択があったのです。
「Singularity」(2018年)の公式カムバックトレーラー。
「Dynamite」の高音に苦戦し、練習を重ねる
2021年のインタビューでVは、低いパートを歌うことが多く、流れるように歌う傾向もあったため、高音を弱点だと思っていたと話しています。
その課題が表れたのが、前年に発表された「Dynamite」の録音でした。
サビの高音を思うように歌えず、腹が立つほどだったと、笑いを交えて振り返っています。
そのため、たくさん練習したという説明でした。
自分に馴染みのある歌い方から、曲が求める高さへ踏み出す必要があったのです。
BTS「Dynamite」(2020年)のMV。
「Butter」では、高音を曲のイメージにつなげる
2021年の「Butter」も、Vにとっては音が高い曲でした。
それでも本人は、その音を歌えたことを明るく話しています。
同時に意識していたのは、与えられたコンセプトに合うボーカルを考えることでした。
声自体を変えるというより、歌う技術やスタイルを切り替えるという捉え方で、自分の歌い方が曲のイメージに合ったことに、ある程度満足していたといいます。
難しい音を出せるように練習し、歌えるようになった音を曲の表情へつなげる。
この二曲の話からは、Vが高さと表現の両方に向き合っていたことが伝わります。
BTS「Butter」(2021年)のMV。

画像出典:画像掲載元
BTSの声と、ソロの声に違う役割を持たせる
2022年の取材では、BTSの音楽で使う声と、ソロの音楽で使う声は違っていてよいと語っています。
異なる人物像を作ることを、自分が見せられる魅力の一つとして捉えていました。
グループとソロで、違う表現を選んでいく考え方です。
『Layover』では、発声と発音を改めて試す
2023年のソロアルバム『Layover』の制作について、Vは発声練習を初めからやり直したような感覚だったと説明しています。
声をこう出すと新鮮でよい、この発音ならもっと声が出しやすい。
そう試す中で、自分だけの声を見つけた気がしたというのです。
自分の音域や歌い方についても、ソロ制作の過程ではっきり理解できたと話しています。
求められる音を歌うための練習に、自分はどう声を出し、どう言葉を発するとよいのかを知る経験が加わりました。

画像出典:VOGUE JAPAN
自分らしい曲も、「Winter Ahead」へと変わっていく
2024年には、パク・ヒョシンと歌う「Winter Ahead (with PARK HYO SHIN)」が発表されました。
BIGHIT MUSICは、二人の穏やかな声の色合いを生かしたジャズポップと紹介しています。
ソロアルバムで自分の歌を探った先には、もう一人の歌い手と作る作品もありました。
2025年12月公開のインタビューで、Vは自分らしいと感じる曲を尋ねられています。
若い頃は「4 O’CLOCK」、その後は「Scenery」、取材時点では「Winter Ahead」でした。
そして、最もVらしい一曲は、これから作るのだと思うとも話しています。
同じ取材では、さまざまな音楽を聴くことで刺激を受け、作りたい音楽の方向も変わってきたと語っていました。
一度、自分に合う声の使い方がわかっても、それで表現を固定するわけではない。
本人にとっての自分らしさも、聴く音楽や、作る曲とともに動いていたのです。
「Winter Ahead (with PARK HYO SHIN)」(2024年)のMV。
Vの変遷には、難しい音への取り組みと、曲に応じて表現を選ぶ歩みが重なっています。
低い声を生かすソロ曲、高音が課題になったグループ曲、声の出し方を試し直したアルバム。
それぞれの制作を知ると、一つの持ち味を磨く中にも、いくつもの課題と選択があったことがわかります。
「Love Me Again」のなめらかな歌や、声と言葉のつながりは、V(BTS)の歌い方で取り上げています。

こちらの記事もおすすめ

発声や発音を試した本人の話とともに、声の表現を見ていきます。

本人と制作陣の言葉から、ジミンの歌の歩みをたどります。




コメント