ジミン(BTS)の歌声はどう変わった?「Serendipity」の細やかさから、ソロで広げた声の表情へ

2021年の取材記事に掲載されたジミン(Weverse Magazine掲載) シンガー
2021年の取材記事に掲載されたジミン(Weverse Magazine掲載)

ジミン(BTS)の歌をたどると、独特の声を磨くだけでなく、曲のために歌い方を探し直してきた歩みが見えてきます。
細かな表情を録音に込めようとした「Serendipity」、声の出し方を研究し直した「Butter」、使う声の幅を広げた『MUSE』。
本人と制作陣の言葉をもとに、その変化を追っていきます。

「Who」公式ミュージックビデオ(2024年、『MUSE』収録)。

2013〜2017年|自信のなかった出発点から、声の細部を磨く段階へ

ジミンは2013年6月、BTSのメンバーとしてデビューしました。
後に振り返った本人は、メンバーの中で練習生期間が最も短く、当時は十分な準備や自信を持てていなかったと話しています。
歌手としての自信は、初めから完成していたものではありませんでした。

2021年の取材では、以前は足りない点を指摘されると、自分に腹が立っていたとも話しています。
それが、直すべきところを教えてもらえることをありがたいと思い、もっと努力したくなる気持ちへ変わっていました。
自分に厳しい姿勢を持ちながら、周囲の助言を次の練習に使うようになっていたのです。

2026年の取材でも、練習生の頃から自分の声を聴き、良さを伝え、歌う曲を薦めてくれたBTSのメンバーたちを、大きな影響を受けた存在として挙げています。
自分の声を知る過程には、身近にいる歌い手たちからの助言もありました。

2017年の「Serendipity」については、声のあらゆるニュアンスや表現の細部に、初めてそれほど集中して取り組んだ曲だったと説明しています。
録音でそれを形にするのは、簡単ではなかったそうです。
うまく歌うだけでなく、自分の声の細かな違いまで作品に残そうとする意識が、はっきり表れた一曲でした。

「Serendipity」『LOVE YOURSELF 承 ‘Her’』の公式カムバックトレーラー(2017年のイントロ版)。

2020年|「Life Goes On」で、今の気持ちをそのまま歌にする

2020年の『BE』取材記事に掲載されたジミン(Weverse Magazine掲載)
2020年の『BE』取材記事に掲載されたジミン(Weverse Magazine掲載)。
画像出典:画像掲載元

2020年の『BE』では、声の聞かせ方に別の向き合い方が生まれています。
「Life Goes On」の録音についてジミンは、どういう声で聞かせようかと考えるより、その時の浮遊するような気持ちを、そのまま録音したと話しました。

普段は曲のイメージを描いてから歌うものの、この曲では強く感情移入したため、特定の感情を見せようと構えることもなかったそうです。
声の細部を意識して作り込む経験を経たうえで、その時にある感覚を、自然に歌へ持ち込む方法も選んでいました。

背景には、予定していた公演ができなくなり、先が見えない時期をメンバーと過ごしたこともありました。
本人は当時、話す時間が増え、互いに元気づけていたと振り返っています。
「Life Goes On」は、その時の気持ちと遠いところにある役柄を作って歌う曲ではなかったのです。

BTS「Life Goes On」公式ミュージックビデオ(2020年)。

『BE』では、制作をまとめる役割も経験しました。
後の取材では、メンバーが一枚を作るために注ぐ時間と努力を見て、自分もそれだけ音楽作りに力を使いたいと思ったと説明しています。
歌う部分の完成に加え、曲やアルバムができるまでの仕事へ、関心が広がっていました。

2021年|「Butter」で、自分の歌い方を探し直す

2021年の「Butter」は、本人にとって初心に戻るような曲だったといいます。
それまでの歌い方では曲になじまず、もっとシンプルに声を出す方法を研究しました。
ジョングクにも相談しながら試し、使われなかったパートや新しいアドリブにも挑んで、自分の良い部分を探していました。

BTS「Butter」公式ミュージックビデオ(2021年のオリジナル版)。

自分だけの声の色を持つために努力してきたからこそ、そのやり方で行き詰まることもありました。
英語の発音や曲の感情の違いを受け、得意な表現をいったんほどいてみる。
ジョングクへの相談は、そのための具体的な試し方を一緒に探す時間だったのです。
本人は、新しい声が出る発見もあって、その過程は楽しかったと話しています。

2022年|「With You」で、力を抜いた先の感情を探す

2022年には、ハ・ソンウンと「With You」を発表しました。
ドラマ『私たちのブルース』のOSTに参加した曲です。

この録音でジミンは、一度仕上がってからも、何度も歌い直しています。
初めの歌唱はとても感情的だったため、少しずつ力を抜き、さらっとした歌の中に悲しさや切実さを残そうとしたそうです。

ハ・ソンウンとは、いつか二人で歌を作って公開できたら意味があると話していたといいます。
実際の制作では頻繁に電話をし、録音が終わった後にも、ジミンから最初からやり直したいと申し出ていました。
友人と歌う念願の機会を、表現を細かく確かめる場にもしていたのです。

ジミンとハ・ソンウンの「With You」公式ミュージックビデオ(2022年、『私たちのブルース』OST Part 4)。

感情を強く歌い上げることに加え、力を抑えた声で、どこまで気持ちを伝えられるか。
声を変える目的が、曲に合う感情の伝え方を見つけることへ結びついています。
歌い直しは、ただ間違いを修正するためでなく、自分が届けたい表現を探す時間でもあったのでしょう。

同じ2022年の取材では、制作陣と、今後どんなメッセージや姿を見せたいかを話し始めていることも明かしました。
BTSで伝えてきた思いに加え、普段考えていることや、これまで出していなかった面も音楽にしたい。
一曲の歌い方を探す作業と並んで、自分の作品で何を語るかを考え始めていました。

2023年|『FACE』で、アルバム全体の表現を担う

2023年3月24日、初のソロアルバム『FACE』を発表します。
BTS作品の中でソロ曲を歌ってきた経験に加え、ここでは作品全体の中心となって歌を届けます。

「Like Crazy」公式ミュージックビデオ(2023年、『FACE』収録の韓国語版)。

カン・ミョンソクはアルバム評で、『FACE』のジミンが、曲のテーマや感情に応じて歌い方とトーンを変えていると捉えています。
特に「Like Crazy」では、ディスコのリズムを流れるように歌いながら、楽しさと憂鬱さの重なる感情を表す歌唱に注目していました。

同じ評では、「Set Me Free Pt.2」で歌とラップを交え、導入部とサビで声を変え、加工した声も使う構成を取り上げています。
一つの歌い方をアルバム全体へ当てはめるのではなく、曲や部分ごとに、伝えたいことに合う声を置く。
カンの評は、そうした声の配置にも、ソロ作品ならではの表現を見ています。

「Set Me Free Pt.2」公式ミュージックビデオ(2023年、『FACE』収録)。

ソロ作品になったことで、曲ごとの声の表情や、アルバムを通した表現の違いも、ジミン自身が担う部分として大きくなりました。

2024〜2026年|『MUSE』で声の幅を広げ、学びを次へつなぐ

2024年7月19日には、2枚目のソロアルバム『MUSE』を発表しました。
制作陣によれば、『FACE』と『MUSE』は近い時期に並行して準備していましたが、曲の雰囲気が異なるため、別のアルバムになりました。
発売順に作風が切り替わったというだけでなく、同じ制作の時間から違う方向の歌が育っていたのです。

プロデューサーのPdoggによると、今回は高音の出しやすさを中心にするだけでなく、中低音やファルセットの魅力も生かすため、曲のキーを何度も試したそうです。
得意な高音を持つ歌い手としての姿に、ほかの声の使い方も重ねていきました。

その背景には、『FACE』で思い描いたことを十分に実現できなかったという、本人の悔しさがあったとPdoggは説明しています。
『MUSE』の録音が終わってからも練習は続き、もう一度録る必要があるのかと思うほどだったそうです。
GHSTLOOPは、その練習の成果を残したくて、アコースティック・リミックスの録音につながったと話しました。

「Who (Acoustic Remix)」公式ビジュアライザー(2024年)。

2026年の取材記事に掲載されたジミン(Rolling Stone UK掲載/撮影:Pakbae)
2026年の取材記事に掲載されたジミン(Rolling Stone UK掲載/撮影:Pakbae)。
画像出典:画像掲載元

2026年の取材でも、本人は歌をもっと学び、練習して伸びていきたいという意欲を語っています。
ソロの経験を経てBTSの制作に取り組む際には、曲作りへの怖さが小さくなり、質問をためらわず試せるようになったと話しました。
個人でもより良い歌手になりたいという希望を、グループの中で果たす役割へ戻して考えていました。

ジミンの歌声の変遷は、声の個性が定まって終わるものではありません。
細部を磨くこと、自然な気持ちで歌うこと、曲のために力加減や声の出し方を探し直すこと。
その経験を重ねながら、声で表せるものを増やしてきた歩みだといえます。

録音での力加減や、キー設定と声の切り替えの話は、ジミン/Jiminの歌い方で詳しく取り上げています。

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