超特急のタカシの歩みは、ボーカルが二人から一人になり、再び二人になる過程と重なります。
ただし、人数が戻ったからといって、歌まで以前に戻ったわけではありません。
一人で曲を成立させる工夫、松尾太陽としてのソロ録音、シューヤとの声の重ね方。
それぞれの経験が、歌うときに選べる表現を増やしてきました。
力強く歌えるようになった、という一方向の成長だけでは捉えにくい歌手です。
柔らかく届けることや、相手に合わせることにも、その変化が表れています。
本人の振り返りと作品ごとの発言を軸に、何を試し、歌との向き合い方がどう変わったのかをたどります。
出発点は、思い描いたように声が出ないもどかしさ
2011年に結成された超特急は、ダンサーが前に立ち、ボーカルが歌で支える独自の形を育ててきたグループです。
タカシは、デビューするまで歌もダンスも習った経験がなかったと明かしています。
2020年には、初期の声がこもっていたことを本人も振り返り、メンバーは、その頃と比べて歌とダンスの両方が堂々としたと語っていました。
最初から現在の表現を備えていた、という出発点ではなかったのです。
同じ2020年、タカシは頭にある理想と実際に出る声が一致しない悔しさにも触れています。
その後は、うまくいかないときに自分の方法を試し、解決しなければ周囲に意見を求めるようになったといいます。
悔しさそのものが消えたのではなく、次に試すことへつなげられるようになった。
この姿勢は、後の録音で歌い方を変えていく経緯にも通じます。
二つの個性で歌っていた時期から、一人の声で組み立てる時期へ
初期の相方はコーイチでした。
タカシは2017年、自分たちは歌い方もスタイルも異なり、コーイチには自分とは違う鋭さがあると説明しています。
二人の違いが、そのまま超特急の歌の個性になる時期でした。
同じメロディーを扱っていても、どちらが歌うかによって色が変わる。
その前提が、2018年に大きく動きます。
一人でボーカルを担うようになったタカシは、耳で楽しませる役割を自分だけが受け持つことになり、歌手として何ができるかを以前より深く考えるようになったと語っています。
それを本人は単純な負担とは表現していません。
「a kind of love」では、一人だからできる声の使い分けを、新たに形にしようとしていました。

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変化は、録音だけで完結しません。
新体制初期のライブについて、タカシは楽しみながらも改善点を考えていたと振り返っています。
客席で歌う人や、声援を送る人の姿に助けられ、落ち着いて歌えたことも明かしました。
一人で引き受ける範囲が広がったからこそ、客席の反応を受け取りながら歌を成立させる経験が、より切実なものになっていたのでしょう。
「a kind of love」の録音では、愛情を強く押し出すより、隣で話すような距離を選びました。
新体制の出発を、声の大きさだけで示そうとはしていないのです。
聴く人を笑顔にしたいという目的から、どの程度の強さで、どの距離から届けるかを考える。
歌を一人で担うことは、表現を強くするだけでなく、細かく選び直す契機にもなりました。
同年8月の「EBiDAN THE LIVE」では、超特急の登場を飾ったのが「Feel the light」でした。
タカシのファルセットとダンサーの表現が、幻想的な世界を作りました。
一人のボーカルで曲を支える時期に、柔らかな声を生かす楽曲がステージの入口にもなった。
歌を厚く埋めるだけではない見せ方が、舞台でも形になっていたことが分かります。
ソロ活動で出会った、歌い慣れた方法が合わない曲
2020年には、本名の松尾太陽としてミニアルバム『うたうたい』を発表します。
2019年のソロライブを経て生まれた活動ですが、デビューの話を受けた当初は、すぐに決心できたわけではありませんでした。
本人は、グループの外でも学び、得たものを超特急に持ち帰りたいと説明しています。
名義を変えること以上に、慣れた場所の外で歌を試す意味があったのです。
その具体例が、大塚愛の提供曲「mellow.P」です。
最初は曲の明るさに合わせてポップに歌ったものの、録音を聴き返すとしっくりこなかった。
大塚から揺れるようなイメージを伝えられ、浮遊感を意識して録り直すと、本人の中でも納得できたといいます。
曲が明るいから明るく歌う、という最初の答えを変えた経験でした。
声の勢いだけでなく、曲の中でどう漂わせるかが、新しい選択肢になっています。
翌2021年のアルバム『ものがたり』では、好みの音楽を示すだけでなく、自分の内面に触れてもらう意識が強まります。
「デジャヴの夜」には、好きだったラップやジャズの要素に加え、初めて試すオートチューンも取り入れました。
ここでの変化は、生の声がどう高くなったかという話ではありません。
歌、ラップ、録音上の音の加工まで含めて、自分を表す方法を広げたことにあります。
ソロの場は、超特急での役割だけでは見えにくかった嗜好を、作品にできる場所でもありました。
2022年、再び二人で歌うことを選んだ理由
一人で歌う期間には、自由が増える一方で、元々二人の掛け合いで作られた曲をどう届けるかという課題もありました。
ユーキは2022年、一人で歌うために省かざるを得ない部分があり、タカシのダンス量も増えていたと説明しています。
タカシ自身も新しい経験の楽しさは認めつつ、歌を中心に据え、長く活動する可能性を広げたいと話しました。
新しいボーカルを迎える判断には、人数を増やす以上の、歌の表現を取り戻し広げる狙いがありました。
2022年8月にシューヤが加入し、再びツインボーカルへ。
同年には既存曲の再録も行っています。
タカシは2023年の『B9』について、過去曲を新しい声で作り直し、大きなライブを経験したことで、新曲に向かう際のグループの色が共有できていたと説明しました。
再録は、昔の担当箇所に別の声を入れるだけの作業ではなかった。
二人になった超特急が、どう歌うかを確かめる工程でもあったのです。
『B9』の制作でタカシが語ったのは、自分の声への新しい発見でした。
相手と同じ曲を歌うことで、高い方も低い方も、思っていた以上に使えると気づいたといいます。
ただし、音域が実際に広がったのか、元々あったものを見つけたのかは、計測していないので分からないとも明言しています。
確かな変化として受け止めたいのは、相手と共有するため、一つ一つの音やリズムを以前より細かく捉えるようになったことです。
アコースティックの場で、同じ曲を歌い直す楽しさへ
2024年には、タカシとシューヤによる「せぶいれのうた」が始まります。
二人の呼び名は、それぞれの7号車、11号車に由来します。
タカシは、ユニゾンや視線から相手の支えを感じ、不調なときにも助けられたと語りました。
自分の歌を完成させてから隣に並ぶだけでなく、歌っている最中にも互いの状態を受け取り合う関係になっています。

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2025年の「せぶいれのうた」では、「a kind of love」で一方のアレンジにもう一方が応じる場面がありました。
「refrain」や「Thinking of You」も、前年と同じ選曲ながら、編曲と二人の表現によって違う顔を見せています。
同じ曲をもう一度歌うことが、前回を再現するだけではなくなっている。
生演奏や相手の声との関係から、その場の歌を作れることが、この時期の広がりです。
また、2025年の「メタルなかよし」の録音では、複数のキャラクターを試しながら歌ったと話しています。
新しいジャンルの要素に向かうときも、タカシが考えたのは超特急らしさとの接点でした。
ソロで表現を掘り下げ、二人で呼吸を合わせる経験を重ねても、グループの遊び心を歌にする役割は残っています。
タカシの変遷には、一人で担う力を身につけたあと、再び相手と歌うことで見つかった表現があります。
そこにソロでの試行錯誤が加わり、柔らかさも、浮遊感も、掛け合いも使えるようになってきた。
どの時代が優れているかを決めるより、それぞれの時期に、歌うための選択肢がどう変わったかを見ると、この歩みが立体的になります。
具体的な声の使い分けは、タカシ(超特急)の歌い方で掘り下げています。

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