Tokyo Tanakaの歌声には、強く前に出る存在感があります。
ただ、その強さがいつも同じ表情になるわけではありません。
サビを受け持つ時、一曲を通して歌う時、別の歌手と声を重ねる時では、求められる働きが違います。
MAN WITH A MISSIONの曲と共演の制作背景から、声質と歌い方の関係を考えてみます。
力強さと、声を荒くすることは別に考える
2014年の幕張メッセ公演でのTanakaの歌声には、力強さとクリーンさの両方がありました。
ここでいうクリーンさは、激しい曲でも旋律のある歌として声が前に出る、その質感を表す言葉です。
伴奏が激しいことと、歌声まで常に荒いことは同じではありません。
Johnnyのラップと並ぶことで、Tanakaが担う旋律の輪郭も捉えやすくなります。
一方、2025年の「Vertigo」では、Tanakaの声の深みやハスキーな質感、Johnnyとの重なりも魅力になっています。
先ほどのクリーンさと、必ずしも矛盾はしません。
旋律を明瞭に運ぶことと、声にざらついた風合いがあることは、別の側面だからです。
これらは各作品の声から受ける印象であり、声帯の使い方を測った説明ではありません。
サビで交代する声には、言葉を強くする役目がある
「My Hero」では、サビを歌うTanakaへ交代する際、歌詞の世界も変えることをJohnnyは意識していました。
サビに強い言葉を置き、声質の差と意味の変化を重ねる。
声の存在感を、曲の設計でも生かしています。
この分担は、作曲家の澤野弘之も注目した特徴です。
Johnnyと別の作品を作った際、マンウィズではJohnnyがAメロやBメロ、Tanakaがサビの主旋律を担い、Johnnyがハーモニーに回る形が多いと話していました。
すべての曲に当てはまる規則ではありませんが、二人を聴き分ける手掛かりになります。
主旋律が交代する時には、声の質感とともに、もう一人が何を支えるかも変わります。

画像出典:画像掲載元
「Find You」では、一人の気持ちを最後まで運ぶ
「Find You」は、Tanakaが全編の日本語詞を歌うバラードです。
サビの登場で印象を変える曲とは異なり、曲の始まりから終わりまで、一つの声が聴き手と向き合います。
声が出てくる瞬間の強さに加え、同じ人物の気持ちを持続させることが、歌の大切な役割になります。
2017年12月の公演でのこの曲には、温かさと力強さの両方を見いだせます。
強い声が、相手を圧倒する方向へだけ働くわけではないのです。
一曲を一人で支える場面では、その確かさが、気持ちを預けられるような温かさとして受け取られる。
バラードだから声の個性を薄める、と考えずに捉えたい歌唱です。
切なさを引き出す声と、周囲で支えるハーモニー
KYONOとの「YOAKE」では、Tanakaの声が加わったことで切なさが増した、とKYONO自身が述べています。
曲は新たな始まりや未来に向けた現在を扱っていますが、前向きな題材がそのまま明るい声だけを求めるわけではありません。
先へ進む歌に切なさが残ることで、感情の一面だけに閉じない響きになったと考えられます。
その録音で低音と高音のハーモニーを歌ったのはKYONOです。
声の重なりを、すべてTanaka一人が出した低音・高音として捉えることはできません。
KYONOはゲストの声質に応じて音量の釣り合いや左右の位置を変えたと説明しています。
歌い手の声そのものに加えて、周囲の声をどう配置するかが、仕上がった歌の豊かさを作っています。
「YOAKE feat. Tokyo Tanaka」— 2018年作品・公式フルMV(2020年公開)
別の共演でも、声同士の釣り合いは評価されています。
東京スカパラダイスオーケストラの「S.O.S.[Share One Sorrow]」には、TanakaとJohnnyの二人が参加しました。
谷中敦は二人のバランスを高く評価し、初披露のライブでは緊張もしていたと振り返っています。
慣れた相方との組み合わせでも、別のバンドの演奏に加わる時には、新たな場面として歌うことになるのです。
相手の声を残したまま、一緒に前へ出る
「絆ノ奇跡」では、miletの声と並ぶことで、Tanakaの声の働きも変わります。
両者を共に戦う存在として捉えると、その関係が見えてきます。
違う声を一つの色にそろえるより、互いの存在感があるまま同じ方向へ向かう関係として捉えられます。
一人の声だけで曲の強さを作る場合とは、聴きどころが異なります。
制作時にも、miletが歌うことは初めから想定されていました。
Johnnyは彼女の声について、優しさや力強さ、美しさとともに暗い面もあり、複数の感情が伝わる点を評価しています。
この発言が示すのは、共演相手の声の個性まで曲作りの材料にしていることです。
Tanakaの歌い方を考える時にも、相手の声が置かれる余地と、その声との関係を外すことはできません。
声を出す条件と、聴き手へ渡す判断
『Break and Cross the Walls I』制作時には、ライブがないぶん喉の調子がよかった、とTanakaは話しています。
声の出来には、その時の条件も関わる。
一つの録音での実感を、普段の発声法やケアの方法にまで一般化せずに受け止めたいところです。

画像出典:画像掲載元
ステージでは、歌う役目を客席へ渡すこともあります。
2025年のSATANIC CARNIVALでは、「Raise your flag」でマイクを客席へ向けて応答を起こし、「FLY AGAIN」でも客席を指しながら歌いました。
自分の声で押し切るだけでは生まれない、相手の声が入る場所を作っています。
歌い手が前に出る時と、聴き手を前に出す時の選択です。
同年の京都大作戦で歌ったDragon Ashの「Fantasista」も、分担がよく分かる例です。
Johnnyがラップを、Tanakaがコーラスの部分を担い、Kamikaze Boyの掛け声と観客の声も加わりました。
一曲を盛り上げる役目が、歌う人ごとに分かれています。
Tanakaの力強さも、その中で旋律を受け持つからこそ、ほかの声と結びつくのです。
本人は、バンドで何をどう届けるかを考える一方、ライブでは自分が気持ちよいと思うことを優先すると話しています。
曲を受け止める視点と、実際に歌う場面での勢いが共にある。
Tanakaの声の魅力は、強い一色の声として固定するより、誰と、どの曲の、どの役割で歌うかまで見ると分かりやすくなります。
その役割が広がった過程は、Tokyo Tanakaの歌唱変遷でたどれます。

こちらの記事もおすすめ

初期から2025年まで、作品と制作の言葉からTokyo Tanakaの役割の広がりをたどります。

低くスモーキーで、英語は滑らかに流れ、日本語へ…




コメント