コリィ・テイラーの歌い方|叫び、速い言葉、柔らかな旋律が同居する理由

コリィ・テイラー(2023年インタビュー掲載写真、撮影:Marina Hunter) コリィ・テイラー
コリィ・テイラー(2023年インタビュー掲載写真、撮影:Marina Hunter)

コリィ・テイラーの歌には、荒い声、言葉を畳みかける勢い、メロディーを歌う明るさが同居しています。
スリップノットとストーン・サワー、さらにソロで活動する人ですが、その違いを名義だけで分けると、一曲の中で起きる声の選択を見落としてしまいます。
どこで荒さを使い、どこで旋律を渡し、どんな気持ちで声の色を変えるのか。
そこから、コリィの歌い方を考えてみます。

荒い声からメロディーへ、一曲の中で移る

コリィは、激しい声とメロディアスな声を行き来することについて、活動の中で方法を見つけてきたと語っています。
本人もその具体例として認めたのが、スリップノットの「The Nameless」でした。
激しい導入から旋律を歌う部分へ変わる曲で、本人もその例にうなずいています。
別々のバンドで声を使い分ける以前に、同じ曲の中に異なる声を置けることが特徴なのです。

ここで注目したいのは、強さの物差しを音量だけにしないことです。
荒い声では切迫した質感が前に出る一方、旋律を歌う場面では音の流れを受け取れます。
「The Nameless」の対比は、その二つが同じ歌い手の表現としてつながる例です。
荒さを減らす部分があるからこそ、再び荒い声を選ぶ意味も生まれます。

叫ぶか、旋律を歌うかは、曲ごとに決めている

『Iowa』の制作についてのコリィの話は、その選択をよく表しています。
「Everything Ends」のサビは、もともとメロディアスな形でしたが、プロデューサーのロス・ロビンソンが、叫ぶほうが衝撃を与えられると考えました。
反対に「The Shape」では、すでに叫ぶ部分があっても何かが足りず、メロディーを加えたことで曲が満たされたと本人は説明しています。

同じアルバムで、逆向きの判断が行われていたわけです。
まず叫ぶ声があり、それ以外を飾りとして足す、という作り方ではありません。
曲に必要なものが鋭さなのか、音程を持つ線なのかを見極め、声の役割を決めています。
コリィの荒い声は、曲の選択肢の一つとして見ると、使う場面の意味がはっきりしてきます。

「Spit It Out」は、言葉を押し出すリズムにも注目

「Spit It Out」の歌唱をラップのようだと問われた際、コリィはそれを認めながら、ハードコアの曲であり、バッド・ブレインズのH.R.からの影響があると答えています。
本人にとっては、ジャンルの名前以上に、育ってきた音楽の勢いを言葉へ移すことが大切だったのでしょう。
短い言葉を次々に送り出す声にも、彼の音楽的な出発点が表れています。

メロディーを長く伸ばす曲と比べるなら、この曲では言葉がどのように連なり、リズムの一部になるかが手がかりになります。
声の高さや荒さだけを追うと、語り口が生む推進力を拾いにくくなります。
叫びと普通の歌の二種類だけでなく、言葉そのものを前へ運ぶ歌い方も、コリィの表現の一角を担っているのです。

メロディアスな曲にも、怒りは入っている

ストーン・サワーの「Through Glass」は、声の表情と感情を一対一で結びつけないための大切な曲です。
コリィはこの曲を、テレビで目にした、外見が優先される音楽のあり方への怒りから書いたと説明しています。
歌い手が自分の曲を作り、その内容を届けることへの思いが出発点にありました。
メロディーを歌う曲でも、その内側にあるのは穏やかな感情ばかりではありません。

この背景を知ると、柔らかな歌を単に休息の場として扱わずに済みます。
言いたいことを叫びの質感へ直接変える以外にも、旋律に乗せ、曲の形を通して届ける道がある。
「Through Glass」は、コリィのメロディアスな側面にも、主張を失わない強さがあることを考えさせます。

コリィ・テイラー(2020年「CMFT」評掲載写真、撮影:Ashley Osborn)
コリィ・テイラー(2020年「CMFT」評掲載写真、撮影:Ashley Osborn)。
画像出典:画像掲載元

穏やかな曲でも、ざらついた声が表情になる

2020年の配信公演『Live at The Forum』では、「Silverfish」のゆったりした旋律と持続するギターの中で、コリィのざらついた声が際立ちます。
「Snuff」も、ギターと歌で始まってバンドが加わる構成と、切望するような歌声の組み合わせに、聴きどころがあります。

こうした場面から見えるのは、伴奏を穏やかにすると、声そのものの手触りが表現を担いやすくなることです。
荒さを使う方法には、強く叫んで押し出す場合もあれば、旋律の中にざらつきを残す場合もある。
どこまで滑らかにするかという選択も、コリィの歌にある感情の伝わり方を考える手がかりになります。

静かな伴奏で、声の大きさが課題になることもある

ソロの「Home」は、コリィが妻のために書き、ピアノの演奏にも取り組んだ曲です。
一方、このピアノ・バラードでは、コリィの大きな声が曲の器に収まりにくいと感じる聴き方もあります。
歌唱全体の良し悪しというより、静かな伴奏と声の存在感をどう受け止めるかという違いです。
それでも、強い声を持つ人が静かな曲を歌うとき、伴奏との釣り合いが問われることをよく示しています。

コリィの歌を考えるうえで、力を出せることと、曲に合う力の出し方を選べることは、分けて見たいところです。
すべての曲に同じ密度の声が適するわけではありません。
声の存在感が魅力になる場面もあれば、聴き手によっては、その存在感が曲の小さな表情を覆うように感じられる場面もあるのです。

「Midnight」と「Someday I'll Change Your Mind」の声の色

『CMF2』について、コリィは、曲に応じて声の音色が変わると具体的に話しています。
「Midnight」では、とくに前半で沈んだ気持ちを帯びた声になる。
一方、「Someday I'll Change Your Mind」は喜びのある曲なので、自然に声にも軽やかさが出るという説明です。
さらに「All I Want Is Hate」では、そこからまた異なる叫びの表情が現れると述べています。

これは、曲ごとに別人を演じるという説明ではありません。
本人は、いずれも自分の中にある面だと捉えています。
沈んだ気持ちを置くのか、喜びを渡すのかで、必要な声の重さは変わる。
荒い声か、きれいな声かという区分の内側にも、感情に応じた選択があるのです。

コリィ・テイラー(中央)とソロ・バンド(2023年「CMF2」インタビュー掲載写真、撮影:Pamela Littky)
コリィ・テイラー(中央)とソロ・バンド(2023年「CMF2」インタビュー掲載写真、撮影:Pamela Littky)。
画像出典:画像掲載元

「Midnight」には、気持ちが沈んだときに車を走らせ、音楽を聴いていた自身の経験が関わっています。
本人はこの曲を、苦しさそのものに加え、自分がそれにどう対処しているかを描く曲として説明しています。
沈んだ声の表情には、単に暗い雰囲気を添える以上の役割がある。
曲の中でどんな時間を過ごしている人なのかを、歌声からも伝えようとしているのです。

コリィの歌い方を捉える手がかりは、声の種類を数えることに加え、その声が曲の何を担っているかにあります。
「Everything Ends」と「The Shape」では逆の判断をする。
「Midnight」と「Someday I'll Change Your Mind」で声の色を変える。
その選択の積み重ねが、激しさと旋律を一人の表現として結びつけています。
こうした歌を広げてきた時期ごとの歩みは、コリィ・テイラーの歌唱変遷でたどっています。

シンガー人気投票。投票ページはこちら

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました