るぅと(すとぷり)の歌声の変遷|歌える表情を増やし、昔の曲へ戻った理由

るぅと、国立代々木競技場第一体育館公演(2026年3月1日) るぅと(すとぷり)
るぅと、国立代々木競技場第一体育館公演(2026年3月1日)

昔の自分が書いた歌に、今は同意できないところもある。
それでも、大切な日に届けたい。
2026年3月1日、るぅとは「今日も空は眩しいから」を歌う前に、そんな思いを話しました。

新しい曲を作り続けてきた人が、昔の歌へ戻る。
そこには、過去と同じ気持ちを再現することとは違う、歌との付き合い方があります。
すとぷりでの活動とソロ作品を行き来しながら、るぅとは声に何を託すようになったのでしょうか。

カバーへの反応から、自分の言葉で歌いたくなった

出発点は、歌ってみた動画に届いた感想でした。
高校2年生のころ、カバーを聴いて感動したという人がいるなら、自分の言葉とメロディーでも曲を作りたいと思ったと振り返っています。
最初は動画で制作方法を調べ、その後、音楽の専門学校で知識を学びました。

曲作りは、自分には難しいとも感じていました。
歌うことと作ることが、最初から一つだったわけではありません。
聴き手の反応が、自分で書いたものを歌う方向へ背中を押したのです。

2018年のミニアルバム『君と僕のストーリー』から、2019年のフルアルバム『君と僕の秘密基地』へ。
本人はこの1年を、曲の幅だけでなく、歌詞に表れる自分の考え方も変わった時期として捉えています。
普段の感情や活動への思いを、その時々の作品に残していました。

かわいらしさに加え、暗さや格好よさも届けようとした2019年の作品。
その試みは、声を聴く身近な人にも伝わりました。

ななもりは2019年、「&you」の洒落た曲調と声の組み合わせを、新しい魅力として挙げています。
声そのものを別人のように変えるより、今ある声が生きる曲の幅を増やす。
この曲は、そんな変化を考える一例になります。

2020年、弾き語りとラップで広がった歌う役割

2020年1月6日のZepp DiverCity公演では、舞台上で初めてギターの弾き語りに挑みました。
緊張で手が震えると話しながら、「むしがむり」、そして「君と僕のストーリー」を披露しています。
「君と僕のストーリー」では、客席の表情を確かめ、一言ずつ大切に歌っていました。

客席を盛り上げる場面と、楽器を弾きながら言葉を渡す場面を、自分のライブに共存させたのです。
弾き語りは、後年になって突然加わった方向ではありません。
この日に練習を重ねて持ち込んだ試みが、6年後にも求められることになります。

るぅと、Zepp DiverCity公演(2020年1月6日)
るぅと、Zepp DiverCity公演(2020年1月6日)。
画像出典:画像掲載元

同じ2020年、すとぷりの「Next Stage!!」では、別の挑戦がありました。
本人は当時、6人全員のラップ曲を作ったことに触れ、自分と莉犬にとっては初めてではないかと話しています。
旋律を歌う以外の役割にも踏み出した時期でした。

グループで歌う経験には、声の違うメンバーが同じ曲のキーに合わせる難しさもありました。
2020年、ななもりは、それぞれが調整する力を身につけ、いつもの組み合わせ以外でも歌を受け渡せるようになったと説明しています。
自分に合うソロ曲を作ることと、皆で一曲を歌うこと。
両方を経験しながら、歌う役割を広げていたのです。

『僕は雨に濡れた』『忘れ愛』で、明るさの内側を歌う

2020年8月のEP『僕は雨に濡れた』では、伝える感情も複雑になります。
表題曲は、明るい音楽でありながら、内側には暗い思いを抱えています。
本人が説明したのは、学生時代にも覚えがある、元気なふりをする気持ちでした。
楽しそうな曲に乗る声が、そのまま心の晴れやかさを意味するわけではないのです。

「ジェスター」や「夜桜非行」のように、それまでと雰囲気の異なる作品が受け入れられるか、不安もありました。
聴き手が楽しんでくれたことは、次への手応えになりました。
爽やかな自分を見せるだけでなく、寂しさや陰りも歌の中に置けるよう、作品の世界を広げていきます。

翌2021年の『忘れ愛』では、人に言うほどではないのに消えない感情へ、さらに目を向けました。
ライブやイベントで直接会えない時間が増え、本人は制作にも自分自身にも向き合う時間が増えたと説明しています。
「クロマト」では、要領よく進む人を羨む気持ちと、自分の中にもあるずるさを題材にしました。

一方、「よるのあるきかた」は、働く同級生から聞いた話が出発点です。
自分の感情を明かすことには恥ずかしさがあっても、他者の話なら物語を紡ぐように書けるといいます。
歌の主人公をすべて本人と重ねると、この広がりは見えにくくなります。
自分を語る声と、誰かの気持ちを引き受ける声の両方を、作品に持ち込んだのです。

「クロマト」には、穏やかなAメロから、陰りのあるBメロを経て、サビで高まる流れもあります。
本人が説明したこの構成からは、一曲の中でも感情の温度を動かそうとする考え方がうかがえます。
一つの声色を印象づけるだけでなく、曲が進むにつれてどう表情を変えるかが、聴く楽しみになっていきました。

2025年、声を選ぶ過程まで聴き手と共有する

以前は、制作中の苦労が聴き手に見えにくいことも悩みでした。
2020年には、何を作っているかを明かせず、頑張っているとしか言えないもどかしさを本人が話しています。
完成した曲を届けるまでの時間は、活動が止まって見える時間でもありました。

2025年8月には、「ゆるふわ樹海ガール」のカバー制作を生配信で公開しました。
公開したのは、録音からテイク選びまでの作業です。
作り込む姿まで共有する場ができたのです。
歌の上達を示す比較ではありませんが、声を作品にする仕事が見えるようになりました。

2026年、昔の歌を今の自分で引き受ける

2026年1月には、2枚目のフルアルバム『君と僕の約束』を発表。
2月28日と3月1日には、国立代々木競技場第一体育館で4公演を行いました。
長く続けてきた曲作りを、大きな舞台に持ち寄る機会になったのです。

るぅと、国立代々木競技場第一体育館でのピアノ演奏(2026年3月1日)
るぅと、国立代々木競技場第一体育館でのピアノ演奏(2026年3月1日)。
画像出典:画像掲載元

3月1日の最終公演では、ピアノで「今日も空は眩しいから」を歌いました。
本人は、6年以上前に感じていた、聴き手との関係の儚さを映した曲だと説明しています。
今はすべてに同意できなくても、その歌を大切な日の一曲に選んだのです。

2018年の原曲音源。

公演の終盤では、新しいアルバムの表題曲「君と僕の約束」も、冒頭をピアノの弾き語りで届けました。
初期曲と新曲が、同じ舞台で今の自分の歌になる。
新しい作品だけで歩みを語らないところに、この公演の意味があります。

2025年の原曲MV。

かわいらしい声に似合う世界を増やし、自分の陰りや他者の物語も歌い、昔の気持ちとは距離ができても歌い直す。
るぅとの変遷は、過去の自分を上書きするより、その時々の歌を持ったまま進む歩みとして捉えられます。
曲の中での声の切り替えや録音の選択は、るぅと(すとぷり)の歌い方で詳しく扱っています。

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