Charの歌い方・発声|ハードロックに向かない声が武器になった理由

帽子をかぶったCharのポートレート Char

Charさんの歌声は、巨大な声量でバンドを押し切るタイプではありません。
むしろ本人は、自分の歌声がハードロックに合わず、やりたい音楽の中では最も向いていないかもしれないと語っています。

日本を代表するギターヒーローが、ロック向きの声ではない。
一見すると弱点ですが、ここにCharさんの歌が面白くなった理由があります。

声だけで勝とうとせず、ギターのフレーズ、ドラムの跳ね方、言葉を置く位置まで含めて一つの演奏にする。
Charさんの発声を理解する鍵は、声の太さより「歌とギターを同じ人が動かしている感覚」です。

ギターヒーロー本人が「ハードロックに向かない」と語った

Charさんは、本当はハンブル・パイのようなハードなバンドをやりたかったと振り返っています。
ところが、ギターではその音楽へ行けても、歌声が合わないと感じていたそうです。

この告白は、Charさんの声を考えるうえで非常に重要です。
高音を強く張り、低音まで重く鳴らす典型的なハードロック歌手を目標にしていたなら、本人の声は理想と違って見えたでしょう。

それでも歌をやめず、声に合う場所を演奏の中へ作りました。
歌だけを主役にしてギターを伴奏へ下げるのでも、ギターソロの合間に申し訳程度に歌うのでもありません。

声とギターが交互に話し、リズム隊がその隙間を動かす形へ音楽全体を組み替えたのです。
発声の弱点を克服したというより、弱点の意味が消える編成と曲を書いた、と考える方が近いでしょう。

Charの歌声はギターより前へ出ないから埋もれない

歌の上手さを「伴奏に負けない大声」と考えると、Charさんの魅力はつかみにくくなります。
本人はトリオ時代について、ステージには三人しかいなくても、それ以上の音が聞こえるアンサンブルを目指したと話しています。

三人編成では、歌が始まった瞬間にギターの動きをすべて止めるわけにはいきません。
反対に、弾きすぎれば言葉が消えます。
歌とギターの両方を担当するCharさんには、どちらを目立たせるかではなく、互いに邪魔をしない瞬間を作る必要がありました。

ファンや演奏者の記録では、Charさんの声をギターの延長、あるいは演奏全体の一部として捉える見方が繰り返し現れます。
これは声が弱いという評価ではありません。
声だけを額縁に入れず、バンドの揺れの中へ置く歌い方だということです。

椅子に座りギターを構えるChar

同じ時代のロック歌手でも、世良公則さんは言葉を観客へ投げる力が前へ出ます。
桑名正博さんは派手な曲と静かな曲をつなぐ色気が中心です。
Charさんはそのどちらとも違い、声と楽器の境界が曖昧になるところに個性があります。

「Shinin' You, Shinin' Day」は声の大きさより流れで成立する

「Shinin' You, Shinin' Day」は、Charさんの歌と演奏の関係を知る代表曲です。
本人は一音ずつ切り分けるのではなく、長く伸びる和音や開放弦の響きを曲作りへ取り入れてきました。

ここで大切なのは、難しいギター用語を覚えることではありません。
伴奏が伸びている場所では声も余白を持ち、楽器が細かく動く場所では言葉を詰め込みすぎない。
曲全体が呼吸するように設計されているのです。

音域だけを見れば、高い声を出せる歌手はほかにも大勢います。
しかしCharさんの場合、どの音を長く残し、どこで声を引くかがギターの響きと結びついています。
そのため、声だけを切り取って太さを真似しても、同じ雰囲気にはなりません。

トリオは歌い方を自由にしたのではなく厳しくした

Johnny, Louis & Char、のちのPINK CLOUDは、Charさん、ジョニー吉長さん、ルイズルイス加部さんによる三人組でした。
少人数だから好きに演奏できたように見えますが、実際には一人の小さなズレが曲全体へ直接響きます。

Charさんは、変拍子を不自然に聞かせず、三人以上の音が聞こえるような構成を細かく考えたと語っています。
そこでは歌も、拍の上へ正確に置くだけのものではありません。
少し後ろへ置く言葉、ギターと一緒に切る語尾、ドラムへ渡す沈黙までが編曲になります。

ステージで共演者とギターを弾くChar

一般に「ノリがよい歌」と言うと、感覚任せに聞こえます。
Charさんの音楽では、自然に聞こえる裏側ほど計算されています。
本人が初期の「Smoky」を聴き返し、当時の演奏が思っていた以上に緻密だったと再認識したのも、その積み重ねを示す話です。

日本語と英語を分けなくなったことも声を軽くした

Charさんの曲には英語詞が多く、日本語の曲とは歌い方が違うように感じる人もいるでしょう。
ところが近年、本人は作詞の段階で日本語か英語かを以前ほど気にしなくなったと話しています。

これは、英語風の発音を真似すればよいという意味ではありません。
先にメロディーとリズムがあり、そこへ無理なく乗る言葉を選ぶ考え方です。
言語を看板にせず、音として扱う自由さが増しています。

日本語を一語ずつ明瞭に立てる歌手とは、言葉の見せ方が異なります。
Charさんの場合、子音や語尾がギターの刻みと一緒に流れ、曲の速度を止めません。
歌詞の意味を弱めているのではなく、意味が演奏から離れないようにしています。

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真似するなら声のざらつきではなく役割の譲り合いを見る

Charさんらしさを出そうとして、声をわざとかすれさせたり、喉へ力を入れて低くしたりする必要はありません。
本人の長いキャリアで生まれた声質や、外見から受ける印象だけを再現しても、演奏との関係は残らないからです。

参考にしやすいのは、歌っていない瞬間です。
公式映像を見る時は、歌い終わった直後にギターが何を引き継ぐか、次の言葉の前にドラムがどれだけ空間を作るかへ注目してみてください。

奥田民生さんの脱力した歌い方にも、声を必要以上に押し出さず演奏全体で強く聞かせる共通点があります。
ただしCharさんでは、歌とリードギターを同じ身体で切り替えることが、さらに独特の間を生んでいます。

歌声の年代ごとの変化を知りたい人は、Charさんの歌唱変遷も参考にしてください。
ソロ歌手としての出発から、JLC、PINK CLOUD、50周年までを時系列で分けています。

Charの発声は、向かない声を音楽の中心へ置く発明だった

Charさんの歌声は、ハードロック歌手のような太さだけで説明できません。
本人が自分の声はやりたい音楽に合わないと感じたところから、歌とギターを一つの流れにする工夫が始まりました。

トリオでは声を楽器の一部として置き、開放弦や長い和音の中では言葉へ余白を作り、変拍子さえ自然に聞こえるよう組み立てます。
日本語と英語の境目も薄くなり、歌詞は演奏の外から説明するものではなく、演奏そのものへ近づきました。

Charさんの歌が教えてくれるのは、声の条件が理想と違っても、音楽を諦める理由にはならないということです。
声を無理に作り替える代わりに、曲、編成、間の取り方を声へ合わせる。
その発想が、ギターヒーローの横に隠れない、もう一人のCharさんを作っています。

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