IRySの歌い方|低音の魅力と速い言葉を、曲の表情に変える

IRyS(2023年3月公開インタビューのビジュアル。© COVER) IRyS
IRyS(2023年3月公開インタビューのビジュアル。© COVER)

IRySの歌い方を考えるとき、高音の華やかさだけでなく、低い音で何を伝え、速い曲でどう言葉を運ぶかにも耳を向けたくなります。
さらに、同じ歌手がひとりで歌う場面と、誰かと声を合わせる場面では、歌の役割も変わります。
制作陣の具体的な証言と本人の考えから、その声の選び方を見ていきます。

低い音を入り口に、高い音の魅力を引き出す

『Quarter Bravery』の「Delight」について、作曲した藤田淳平は、IRySの得意な低い声を冒頭に置き、サビの高音との両方を生かしたと説明しています。

高い音に至るまでに、低い声がどんな印象を残すか。
最高音だけでなく、その前後の高さの違いから聴くと、この曲の魅力を捉えやすくなります。
声の高さと声色は別のものです。
高い音を出しているかに加え、その音が強く感じられるのか、柔らかく感じられるのかにも注目すると、聴くポイントが増えます。

IRyS(公式プロフィールのビジュアル。© COVER)
IRyS(公式プロフィールのビジュアル。© COVER)。
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速い歌でも、言葉の形を残す

「BERSERKER」は約BPM190。
制作陣は、速くても言葉が遅れず届く歌を評価しています。
英語も、曲への収まりに応じて自然な発音とカタカナ寄りの発音を選んだそうです。

さらに都丸椋太は、歌詞の意味に応じ、同じ曲の中で力強さと輝くような表情を使い分けた点を挙げています。
勢い一辺倒にせず、言葉で声の印象を変えるところが聴きどころです。

IRyS自身も、2026年の「Serendipity」に向け、速く早口言葉のような箇所を持つ曲の練習に苦労したと話しています。
曲名は明かしていませんが、速い歌が得意という評価と、練習で向き合う課題は両立しています。
完成した歌の滑らかさから、準備まで簡単だったと考えないことも、この歌い手を理解するうえで大切でしょう。

自分に合う音域で、感情の置き場所を作る

本人は、自分に合うキーでは気持ちを込めやすいと話しています。
英語詞の音節とメロディーの収まりにも、具体的に希望を伝えるようになったそうです。

声に合う高さと、言葉に合うリズム。
どちらも表情を作るための条件なのです。

「Gravity」の、声に引き込む歌いぶり

2023年の「Connect the World」でも、「Gravity」を歌い始めると、会場の空気が変わりました。
大きく歌を聴かせる一面が伝わる場面です。

2022年に発表された原曲でも、澄んだ歌声が魅力になっています。
苦しいときにも孤独ではない、という主題を持つ曲です。
その背景を知ると、迫力を受け取るだけでなく、声の中にどんな親しさや慰めを感じるかという聴き方もできます。
速い曲での明瞭さと、声に身を委ねる時間。
IRySの歌を楽しむ入り口は、曲ごとに変わります。

踊る曲では、声が観客の動きにつながる

「Carbonated Love」のステージには、また違う聴きどころがあります。
2024年の「Breaking Dimensions」では、力のある声と、パラパラを含むダンスを一緒に披露しました。
声で曲を進めながら、身体の動きでも拍を共有する場面です。
録音だけで聴くときとは違う形で、歌の勢いが客席へ伝わります。

「DIAMOND GIRLFRIEND feat.MOTSU」については、本人が、サビに観客の声が入って完成する曲だと話しています。
歌手の声をどこまでも大きくすることだけが、盛り上げ方ではないのでしょう。
聴き手が声を返せる場所を持つと、その反応も曲の力になる。
IRySのユーロビートを、歌い手と客席の掛け合いという面から楽しめる例です。

重なる声と、ひとりの声を使い分ける

共演では、IRyS自身が、他の人と練習する中で声の組み合わせを発見するのが楽しいと話しています。
ひとりで完成形を作るときとは違い、相手の声によって歌の姿も変わる。
共に歌うことへの関心は、目立つソロを任される歌手の、もうひとつの面です。

2025年の「All for One」では、オーロ・クロニー、常闇トワとの三人の声が、落ち着いた雰囲気を作りました。
同じ公演での「DIAMOND GIRLFRIEND」のソロとは、声が担う仕事が異なります。
前へ出て会場を動かす役割と、誰かの声と交わって空間を作る役割。
共演曲にも目を向けると、歌い方の幅が立体的になります。

IRyS(2026年10月6日、初ソロ公演での「Gravity(Trance Remix)」。撮影:Takashi Konuma、© COVER)
IRyS(2026年10月6日、初ソロ公演での「Gravity(Trance Remix)」。撮影:Takashi Konuma、© COVER)。
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2026年の初ソロ公演でも、アップテンポの伸びる高音や力強い発声と、ミドルテンポやバラードでの繊細な表情が対照を作りました。
「心臓が止まるまで」のような曲も含む公演の中で、曲に合わせて歌の表情を変えています。
一曲の派手な歌声だけでは捉えきれない、IRySの持ち味がここにもあります。

低音から高音への移り方、速い言葉の収め方、客席や共演者との関係。
声を一つの型に当てはめるより、曲のどこで何を伝えようとしているかに注目すると、IRySの歌の面白さが広がります。

制作やステージへの向き合い方の変化は、IRySの歌唱変遷でたどっています。

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