ジャスティン・ホーキンス(The Darkness)の歌声の変遷|高音が得意なのに、高音へ曲を合わせなくなった理由

2004年のジャスティン・ホーキンス シンガー
Roger Woolman / CC BY 3.0

ジャスティン・ホーキンスが2025年の「Cold Hearted Woman」で低い声を前に出したのは、昔の高音が出なくなったからだろうか。弟でギタリストのダン・ホーキンスが2021年に語ったことは、その想像とは逆です。ジャスティンには高い声で歌う部分のほうが楽で、そこへ上がる前の低いヴァースが難しいのだという。

それでもジャスティンは、アルバム『Dreams on Toast』を作るとき、毎曲のサビを自分の高音に合わせて設計するのをやめたいとメンバーへ頼みました。高音が出なくなったという説明ではありません。使える声を一つの「正解」に閉じ込めたくなかった。この選択に至るまでには、曲を作るときの考え方と、歌い続けるための方法の両方に変化がありました。

2003年――大げさな歌声は、曲を考えるための声だった

2003年の『Permission to Land』に収められた「I Believe in a Thing Called Love」は、ジャスティンの高音をThe Darknessの顔にしました。けれども本人が初期を振り返って語ったのは、「目立つために高く歌おう」と考え抜いた話ではありません。デモで歌の旋律を考えるときには、大げさに歌うほうがアイデアを出しやすく、仲間もその歌い方を気に入った。曲作りの現場で役に立った声が、そのままレコードにも残ったのです。

このサビを初めて聴いたダンの戸惑いと、バンドがどう曲として成立させたかは、ジャスティン・ホーキンスの歌い方で詳しく扱っています。ここで追いたいのは、いったん代表曲になった声を、新しい曲でも求めるようになった後のことです。

ジャスティンは後年、The Darknessらしい曲に仕上げる際、サビが自分の特徴的な高音に届くようキーを探すのが定番だったと明かしています。キーとは、曲全体の音の高さのこと。サビを上げれば、その前のヴァースも同じだけ動きます。目立つ高音を曲の到着点にすると、歌のほかの部分にも、その選択の影響が及ぶのです。

2015年――低く歌うことと、高音を捨てることは違った

2006年にバンドを離れたジャスティンは、再結成後の2012年に『Hot Cakes』を出しました。本人は後に、この作品には公演の機会に間に合わせる必要があり、次の『Last of Our Kind』では時間をかけて強い曲をそろえたかったと語っています。2015年のアルバムについて問われたとき、彼は歌い方の選択を曲の出来と結びつけました。

曲にもう少し勢いがほしいとき、高い声を使うことがある。だが今回は曲そのものが強かったので、低い声も含めて自由に歌えた――本人の説明はそういうものでした。合うキーを探すことにも時間を使っています。ここで低い歌が初めて生まれたわけではありません。ジャスティン自身、二作目と三作目にも低い声で歌う箇所があったと話しています。ここで注目したいのは、「The Darknessならまず高い声」と決めず、曲の出来に応じて声を選ぶ理由を本人が語り始めたことです。

高音を曲の強さにする歌手が、「曲が十分に強ければ、その高音に頼らなくてもよい」と語るのは意外です。2015年の彼は高い声を捨てようとしていたのではなく、いつ使うと曲が生きるのかを見極めようとしていました。キーを探すこと自体と、サビの高音だけを目標にキーを決めることは、同じではありません。

ただ、2015年にすべての歌が楽になったわけでもありません。「Open Fire」の録音で声を荒くする歌い方は非常にきつかったと、本人は後年振り返っています。低い声も選べるようになった時期に、別の曲では、力を込めた声をどう出すかという問題が残っていました。

高音より低いヴァースが難しい――声を使い続ける方法を学び直す

ジャスティンはその後、声帯のポリープの手術を受け、スイスで歌唱の指導を受けました。本人は「Open Fire」のきつい録音を、声への負担の一つとして思い出します。ライブで歌いにくい時期を経て、声を荒らす方法と公演前後の準備を学び直しました。

ダンによれば、ポリープを抱えたまま歌った期間は約4年に及びました。代表曲を歌い続けながら、ただ開演前の準備を長くするだけでは解決しない時期があったのです。

2019年、ダブリン公演のジャスティン・ホーキンス
2019年、ダブリン公演のジャスティン・ホーキンス。写真:Toxicarrow / CC BY-SA 4.0

2019年の本人取材では、以前は開演前の声の準備に約1時間かけていたのが、指導後は20〜25分ほどで、しかも効果的になったと話しています。長く準備して勢いで乗り切るのではなく、必要なことを狙って行うようになった。

同じ年の『Easter Is Cancelled』では、アコースティックの導入から大きなロックへ転じる「Rock and Roll Deserves to Die」を発表しました。ジャスティンは取材で、ファンが求めるものだけを作る存在にはなりたくない、たとえファンを失う可能性があっても表現の自由を守りたいと話しています。舞台へ上がる前の準備は精密にしながら、曲の行き先は決めつけない。その二つを同時に進めていた時期です。

興味深いのは、手術を経て高い声から低い声へ移った、という単純な経過ではないことです。ダンは2021年、高い声の部分はジャスティンにとってむしろ歌いやすく、低いヴァースが難しいと説明しました。手術後の声は以前より整い、高いところにも届くようになったというのが、ダンの見方です。だから、後年の低い歌を「高音を失った結果」と読むと、この本人たちの証言と食い違います。

2025年――「高く歌える」ことを、曲の条件から外す

2021年の『Motorheart』では、国外にいたジャスティンが録音した自分のパートを、ほかのメンバーへ送って制作していました。その後、20周年の『Permission to Land』公演を挟み、四人は時間を見つけて集まり、『Dreams on Toast』を約2年半かけて書きました。ジャスティンは、弟の伴奏に後から歌を重ねるだけでなく、全員で曲を作れたことを大きな違いとして挙げています。

一人で何時間も積み上げたコーラス案を、ほかのメンバーが気に入らず、やり直すこともあったといいます。手間は増えても、一人の案で終わらせず、四人で曲の形を見つけていく。その共同制作で「サビはいつもの高音で」という前提にも、ジャスティンは異を唱えました。

そこで彼がメンバーへ頼んだのは、いつもの高音が映えるキーを追わないことでした。以前はサビを思い切り高く歌える位置や、声が切り替わるぎりぎりの位置まで曲を動かしていたという。歌っていて楽しいからではなく、聴き手が求める「ジャスティンらしさ」に応えるための選択でもありました。今回は一曲を通して、自分の声のいろいろな高さで感情を伝えたい。高音を封印するのではなく、高音だけを出発点にしないという提案です。

その違いが演奏にまで及んだのが「Cold Hearted Woman」でした。低く歌うヴァースに、いつもの大きなギターを重ねるのは合わないとジャスティンは考えます。レゲエ風、Hall & Oates風などを試した末、カントリーの形に落ち着いたと本人は説明しています。プロデュースしたダンも、この曲を無理にロックへ引き寄せるのではなく、曲が向かう先を探したと語りました。声の高さを選び直すと、伴奏の作り方まで変わったのです。

変化は一曲だけではありません。同じアルバムの「The Longest Kiss」では、ジャスティンが昔書いた未上演のミュージカルのヴァースと、後年ダンとピアノで作ったサビが一曲になりました。バンドの公式紹介は、この曲を70年代風のポップとして位置づけています。アルバムには、低い声に合わせたカントリーも、古い素材を新しいポップへ作り直した曲も収まりました。

代表曲の高音を残したまま、次の曲の自由を増やす

2003年の大げさな声は、曲のアイデアを形にする助けでした。2015年には、曲が強ければ低い声も選べると話すようになる。一方で、負担の大きい歌を続けるために、声の準備と使い方を学び直す必要もありました。これらを経た2025年、ジャスティンは曲そのものを「高音で決まるはず」という前提から解放します。

「I Believe in a Thing Called Love」の高音は、今もThe Darknessの大切な一部です。けれど、新曲が毎回そこへ到着しなくても、The Darknessの曲でありうる。高音を保ちながら、低いヴァースが似合うカントリーにも、ピアノから広がったポップにも自分の歌を置く。ジャスティンの歌声は、そうして使い道を広げています。

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