ジャスティン・ホーキンス(The Darkness)の歌声の変遷|高音を出すために曲を合わせるのをやめた

2004年のジャスティン・ホーキンス シンガー
Roger Woolman / CC BY 3.0

The Darknessのジャスティン・ホーキンスを、高い裏声の歌手として覚えている人にとって、2025年の「Cold Hearted Woman」は意外な曲かもしれません。
『Dreams on Toast』に収められたこの曲では、低い声で歌う彼にも出会えます。

この変化には、声のいろいろな高さで歌いたいという、本人の希望がありました。
高音を持っていることと、新曲でも毎回それを聴かせることは、別の話です。
彼がどんな歌を選ぶようになったのか、初期からたどってみます。

2003年、驚くような高音がバンドの顔になる

『Permission to Land』で広く知られたジャスティンの声は、一度聴けば覚えやすいものでした。
「I Believe in a Thing Called Love」のサビでは、とりわけ高い声が強い印象を残します。
本人は、初期のデモで歌のアイデアを考えるには、ああした大げさな歌い方がやりやすかったと振り返っています。

その歌い方を仲間も気に入り、続けていった。
ところが、強い特徴ができると、新しい曲を作るときにも、同じ特徴を期待されるようになります。
別の声で歌える曲でも、あの高音がなければ物足りないと思われるかもしれない。そんな期待を背負うことにもなったのです。

初期のサビに対するダンの戸惑いや、「Love Is Only a Feeling」で歌った感情は、ジャスティン・ホーキンスの歌い方で詳しく扱っています。
その大げさな声の使い方を知ると、後年の低い声も、単に派手さが減った歌とは違って見えてきます。

2015年、低く歌える理由を、曲の強さで説明した

2011年の再結成後、The Darknessは新作を重ねていきました。
2015年の『Last of Our Kind』では、高い裏声だけに頼らない歌い方も話題になります。

ジャスティンの説明は、年齢を理由にしたものではありませんでした。
曲の力が足りないと感じるときには、高く響く声を使うことで、曲に勢いを加えることがある。
このアルバムでは曲がよくできていたため、低い声も含めて自由に歌えた、と話しています。
合うキーを探す作業には、時間をかけていました。

低い声で歌うことが、高音をあきらめることとは限らない。
曲そのものに手応えがあるから、歌い方を変えられる。少なくとも本人は、そのように捉えていたのです。
必要なところでは、引き続き高い声も使っていました。

ただ、この時期の歌がすべて楽に歌えたわけではありません。
同作の「Open Fire」については、後になって、声を荒らすように歌った録音が非常にきつかったと振り返っています。

歌う前の準備は、長く続ければよいものではなかった

ジャスティンは2018年に声帯のポリープの手術を受け、その後、チューリヒで声の指導を受けています。
手術後には、声の出し方に加えて、公演の前後に何をするかも見直しました。

2019年、ダブリン公演のジャスティン・ホーキンス
2019年、ダブリン公演のジャスティン・ホーキンス。写真:Toxicarrow / CC BY-SA 4.0

その後の変化として分かりやすいのは、ライブ前の準備です。
以前のジャスティンは、公演前の発声練習に長い時間をかけていました。
指導を受けてからは、歌う前に何をすればよいかが整理され、終演後に声を落ち着かせることも覚えたといいます。

2019年には、公演前の準備が以前の約1時間から20〜25分ほどになり、かえって効果的になったと説明しています。
あの派手な歌を続けるために、準備まで勢い任せに増やす必要はなかった。
本人に必要なことを、狙いを定めて行うようになったのです。

声を守ることと、表現を小さくすることも、同じではありません。
本人は指導を通じ、以前のように声を響かせながら、喉で無理に声を荒らそうとする歌い方を見直したと話しています。
変わったのは、出したい声のために、どう準備して歌うかという方法でした。

2025年、曲を高音へ合わせる習慣を変える

『Dreams on Toast』でジャスティンが求めたのは、声を守るための準備とは別の自由でした。
以前は、サビで特徴的な高音が出るよう、曲全体の高さを決めるキーを調整していたといいます。
自分が歌っていて楽しいからというより、ファンが求める声を聴かせるための作業でした。

そこで、曲をいろいろな高さで歌えるようにしてほしいと、メンバーへ頼みました。
冒頭の「Cold Hearted Woman」では、低く歌う部分に合わせ、伴奏にも違う考え方が必要になります。
大きなギターの音をいつもどおり重ねるだけでは、その歌い方を生かせないからです。

この曲では、レゲエ風やHall & Oates風の演奏も試した末、カントリーの形が最もよく合ったと本人は説明しています。
単に高い曲を低く歌い直したのではなく、歌と演奏の組み合わせを探していました。

2015年にも低く歌うことはありましたから、2025年に突然、別の声を手に入れたわけではありません。
新しかったのは、The Darknessらしくするには高音へ持っていく、という作り方そのものを見直したことです。

高い声を持つことと、高く歌い続けることの違い

ジャスティンの歌声の歩みには、二つの見直しがありました。
一つは、出したい声を続けるために、準備や歌う方法を学び直したこと。
もう一つは、新しい曲でも、いつもの高音を必ず聴かせなければならないのかと考え直したことです。

「I Believe in a Thing Called Love」の高音は、今も彼を知る大きなきっかけです。
でも、その声で有名になった人が「Cold Hearted Woman」を低く歌うときには、曲を別の形で聴かせようとする選択もあります。
高音を減らした、という数え方では、その選択が見えにくくなる。
声の高さを変えると、歌だけでなく、バンドの演奏まで変わっていく。それが、後年のジャスティンを聴く面白さです。

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