ジャスティン・ティンバーレイクの歌声の変遷|5人のハーモニーから、ソロの自由な歌作りへ

NSYNCの頃のジャスティン・ティンバーレイクと、ソロで「SexyBack」を歌うジャスティン。
甘い歌声の青年が、大胆なダンス曲の主役へ変わったように見えます。
けれども、歌い方の変化は、グループ時代の自分を捨てた話だけでは説明できません。

5人の声を合わせる経験も、グループにいた頃から始めていた曲作りも、その後の音楽につながっています。
主旋律をどう歌うかに加え、その周りにどんな声を置き、曲をどこまで発展させるか。
時期ごとの作品を追うと、自分の声を、仲間とのハーモニー、ソロで重ねるコーラス、異なる声の歌手との共演に生かしていく歩みが見えてきます。

2001年――ソロに進む前から、自分の歌を作っていた

2001年のNSYNCのアルバム『Celebrity』に収められた「Gone」では、ジャスティンの歌が中心になっています。
相手を失った寂しさを、静かな歌い始めから高い声へと広げるバラードです。
その後のソロ作品を知ってから戻ると、ここでもう、彼らしい柔らかさと切実さを感じられるでしょう。

ただし、これは一人だけの歌ではありません。
メンバーのランス・バスは、当時の「Gone」について、5人の声とハーモニーが聞こえることを気に入っていました。
ジャスティン自身も、グループを作った頃はアカペラのハーモニーを中心に考えていたと振り返っています。
伴奏なしで声を組み合わせることが、もともとの関心だったのです。

ジャスティンは『Celebrity』の時点で、「Gone」や「Pop」などの曲作りにも関わっていました。
「Something Like You」の録音では、憧れのスティーヴィー・ワンダーのハーモニカ演奏をプロデュースした経験まで話しています。
自分の考えを共演する音楽家にどう伝えるかを、グループの中ですでに学んでいたのでした。

2002〜2006年――甘い声を残しながら、声の使い道を増やす

2002年のソロ・デビュー作『Justified』では、「Rock Your Body」の軽快な歌と、「Cry Me a River」の張り詰めた歌が同じアルバムに並びます。
同じ高い声や滑らかな歌い回しから、相手を誘う余裕も、別れの痛みも伝わってきます。

「Cry Me a River」の制作では、ティンバランドが作るリズムからジャスティンの旋律が生まれています。
本人の回想では、作詞、歌、背景に重ねる声まで、およそ2時間で形にしたそうです。
短い時間の中でも、本人が考えていたのは主旋律だけではありませんでした。
その周りでどんな声を響かせるかまで、一緒に作っていたのです。

そして2006年の『FutureSex/LoveSounds』では、「SexyBack」の歪んだ話し声のような歌い方と、「My Love」の柔らかい裏声を使い分けます。
声が一方向に太くなった、低くなったという変化より、同じ時期に違う歌い方を選べることが目立ちます。
この二曲で声とリズムをどう組み合わせたかは、ジャスティン・ティンバーレイクの歌い方で詳しく扱っています。

2013年――サビを歌い終えたあとも、曲が続いていく

2013年の『The 20/20 Experience』に収められた「Mirrors」は、約8分の曲です。
前半だけでも、大きなサビを持つラブソングとして成り立ちそうなのに、そこで終わりません。
後半では音の様子が変わり、短い言葉の繰り返しと、それに重なる声を聴く時間が続きます。

サビが来るまで待ち、来たら一緒に歌う。
そんな楽しみ方に加えて、サビのあとに歌がどう変わっていくかを楽しめる曲になりました。
長く伸ばす声も、繰り返す声も、別の旋律を添える声も、一曲の中に居場所があります。

ジャスティンはこのアルバムについて、最初から最後まで聴くことを考えて作ったと話しています。
「Mirrors」の長さも、同じサビをただ多く繰り返すための長さではありません。
前半で大きく歌った愛情を、後半では別のリズムや声の重なりで味わい直す。
NSYNCで複数の声を合わせていた歌手が、ソロでは一曲の中に声を何層も組み立てています。

2016年、サンディエゴのコミコンで話すジャスティン・ティンバーレイク
2016年、サンディエゴのコミコンで話すジャスティン・ティンバーレイク。写真:Gage Skidmore from Peoria, AZ, United States of America / CC BY-SA 2.0

2018年――重ねて作る歌を、人と一緒に歌う場面へ

2018年の『Man of the Woods』の「Say Something」では、クリス・ステイプルトンと共演しています。
公式MVは、二人がギターを持ってロサンゼルスのブラッドベリー・ビルを移動しながら歌う映像です。
二人の声に加え、建物に集まった大勢の歌声が加わります。

離れた場所で歌っていた二人が、最後には同じ場所に集まります。
移動する間も歌が続き、合唱が加わることで、二人の歌がさらに大きく響きます。
ジャスティンの比較的軽やかな声と、クリスのざらつきのある厚い声は、同じ旋律を歌っても同じ響きにはなりません。
どちらかが相手そっくりに歌う必要はなく、二人の違いがあるまま一緒に歌うことで、声の厚みが増していきます。

撮影は、演奏しながら一続きに撮る方法で行われました。
ただし、最初の一回だけで完成したわけではありません。
その日に6回撮影し、夕暮れのテイクが選ばれています。さらに、合唱をはっきり聴かせるため、別に録った合唱の声も仕上げで補っていました。

離れた場所の演奏者と合わせながら移動し、一つの曲を歌い通すために、これだけの準備があったのでした。
「Mirrors」で録音した声が重なっていく面白さを味わったあとなら、こちらでは、違う声を持つ人たちが同じ場で歌を作っていく面白さを感じられるでしょう。

2018年、ジャスティン・ティンバーレイクとクリス・ステイプルトンが共演したBRIT Awardsの会場
2018年、ジャスティン・ティンバーレイクとクリス・ステイプルトンが共演したBRIT Awardsの会場。写真:David Jones / CC BY 2.0

2024年――派手な展開を作らず、旋律を聴かせる選択もある

2024年の「Selfish」では、柔らかい声で恋人への気持ちを歌います。
「SexyBack」のように強い言葉を押し出す曲でも、「Mirrors」のように長い後半へ進む曲でもありません。
素直に旋律をたどれる歌の中で、高い声の繊細さがよく分かります。

それまでに試してきた加工や複雑な構成を、毎回すべて使うわけではありません。
「Selfish」で中心にあるのは、恋人に向ける甘い声と覚えやすい旋律です。
長い曲で歌を何度も展開させることも、親しみやすいラブソングを柔らかく歌うこともできる。
作品を順にたどると、派手さを増すことだけが彼の変化ではないと分かります。

歌声の変化は、誰と、どう歌を作るかにも表れる

「Gone」では、主役として歌うジャスティンの周りに、仲間のハーモニーがありました。
「Mirrors」では、本人の声の重なりが曲の後半を作り、「Say Something」では、違う響きの歌手や合唱と一緒に歌っています。
形は変わっても、一番目立つ旋律だけで歌を考えていないところはつながっています。

ジャスティンの歌声を年代順に追う楽しさは、少年の声が大人の声になったと確かめることだけではありません。
甘い声で何を歌うか。その声を歪ませるとどうなるか。別の声と合わせたら、どんな歌になるか。
NSYNCの頃から持っていたハーモニーへの関心を残しながら、そうした選択を広げてきたところに、彼の変化があります。

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