2024年に発表した「Paradise」を、ジャスティン・ティンバーレイクはまず自分の歌で録りました。
ところが聴き返すうちに、*NSYNCの仲間と話しているように感じたといいます。
完成前のその曲に4人の声を迎え、ソロアルバム『Everything I Thought It Was』へ収めました。
「Paradise」は、久しぶりに5人が集まったから歌うことになった曲ではありません。
本人版として録った歌を、途中で5人の歌へ変えたのです。
2001年のグループ時代にも、彼が主役として歌い、仲間が声を重ねる曲がありました。
ソロに進んだ後、歌の中の声の組み合わせをどう変え、なぜまた4人を必要としたのでしょうか。
2001年|「Gone」は一人の歌ではなかった
*NSYNCが2001年に出した『Celebrity』の「Gone」では、ジャスティンが前に立って歌います。
ソロ歌手への準備がすでに始まっていたようにも見える曲です。
しかし当時のメンバー、ランス・バスは、ジャスティンの後ろにいる4人の声やハーモニーを、この曲の好きなところとして挙げていました。
ジャスティン自身も後に、グループを作った時はアカペラのハーモニーをやりたかったと振り返っています。
主役の声が一つあっても、曲はその声だけではできていない。
「Gone」には、後年の「Paradise」を考えるうえでも大切な出発点があります。
このころの彼は、歌うだけのメンバーでもありませんでした。
『Celebrity』では「Gone」や「Pop」などを共作しています。
ヤマハの2001年の取材では、スティーヴィー・ワンダーにハーモニカを吹いてもらった「Something Like You」の制作について、尊敬する音楽家に自分の考えを伝えた経験まで話しました。
5人の中で歌うことと、自分で曲を形にすることは、ソロになる前から同時に進んでいたのです。
その取材でジャスティンとJCチェゼが説明したのは、グループの誰か一人が、いつも制作を指揮する形ではありませんでした。
自分が書いた曲では自分が先に立ち、収録曲を選ぶ時にはメンバーで話し合う。
JCによれば、当初から曲は書いていましたが、作品に入れたいと思える出来になるまで経験を重ねていました。
「Gone」を歌った時期には、主役として歌うことに加え、何を歌うかを自分たちで決める力も育っていたのです。
2002年|仲間のハーモニーが離れた後、声をどう重ねたか
翌2002年のソロ作『Justified』には、ティンバランドと作った「Cry Me a River」が入ります。
ティンバランドは、自分のビートボックスを聴いたジャスティンが、その場で旋律を口ずさみ始めたと振り返りました。
ジャスティンの記憶では、歌詞を書き、歌い、背景に重ねる声まで、およそ2時間で形にしています。
「Gone」で自分の歌の周りにいたのは、長く一緒に歌ってきた仲間でした。
「Cry Me a River」では、別の制作者が作るリズムに向き合い、自分の歌の周りの声も自分で録っています。
5人の声を合わせる場所から離れても、主旋律だけで曲を完成させない発想は続きました。
2006年|きれいな裏声を、主役から外す
『FutureSex/LoveSounds』の「SexyBack」は、それまでの滑らかな高音を前に出す曲ではありません。
本人は2010年の取材で、この曲では歌うというより、音程をつけて話している感覚だったと説明しています。
デヴィッド・ボウイの「Rebel Rebel」に感じた大胆さに刺激を受け、声を歪ませる音作りも望みました。
アルバム全体に一人の人物像を作り、その役を演じるように歌ったといいます。
同じアルバムの「My Love」では、動きの多い伴奏に対し、ティンバランドの予想よりゆっくり歌いました。
曲ごとに声の役割を選び直していたのであって、ソロになって一種類の声へ進んだわけではありません。
「SexyBack」で短い言葉と歪んだ声をどう使ったかは、ジャスティン・ティンバーレイクの歌い方で詳しく扱っています。
2009~13年|「Mirrors」を寝かせて、後半を足す
新しいソロアルバムを発表するまでの間も、ジャスティンは曲を書いていました。
2013年の本人の説明では、作った音楽を必ず発表しようとは考えておらず、自分の車で聴くだけでも楽しめたといいます。
人に届けたいという気持ちが強くなるまで、作品を手元に置いておく時間がありました。
『The 20/20 Experience』の「Mirrors」は、2013年に突然生まれた曲ではありません。
共同制作者ジェローム・「J-Roc」・ハーモンによれば、2009年に作り始め、ジャスティンが自分のアルバム用に取っておきました。
後にこの曲を再び持ち込み、もとの部分とは別の曲にもなるような後半を加えたといいます。
ジャスティンは発売前の取材で、収録曲は平均して7~8分ほどあり、アルバムを初めから終わりまで聴いてもらえるよう音を作った、と説明しています。
「Cry Me a River」では、背景の声まで短時間で録って曲を形にしました。
「Mirrors」では、数年置いた歌を長い一曲へ育てています。
声をどう重ねるかだけでなく、歌が進む時間の使い方も変わりました。
長い曲を支えたティンバランドとの制作も、完成した伴奏を渡されて歌うだけの関係ではありません。
本人によれば、どちらかが和音や短い音の繰り返しを試し、相手が反応し、そこへ旋律を口ずさんで考えを返していきます。
「Cry Me a River」でビートに歌が応じた関係は、長い展開を持つ作品を作る時期にも続いていました。
2015~18年|別の歌手の声を、曲の中心へ迎える
2015年のカントリー音楽協会賞で、ジャスティンはクリス・ステイプルトンと「Tennessee Whiskey」「Drink You Away」を一緒に歌いました。
クリスによれば、二人はその場で初めて会ったのではありません。
共通の知人を通じて親しくなり、共演の機会ができた時、クリスが電話で誘ったのです。

写真:Gage Skidmore / CC BY-SA 2.0(掲載用に縮小)
3年後には、二人で「Say Something」を発表します。
そのMVでは、ジャスティンとクリスが離れた場所から演奏を始め、建物の中を移動して合流します。
周囲の歌い手たちも加わるこの撮影について、録音担当者は6回撮り、夕暮れの回を採用したと説明しました。
合唱の声は別録りした音も仕上げに加えています。
すべてを最初の一回で、編集なしに記録した映像ではありません。
「Mirrors」では録音した自分の声と曲を大きくしていきました。
「Say Something」では、クリスの声と、その場にいた人々の合唱を曲の中心に置きました。
どちらも声を組み合わせる仕事ですが、後者では別の歌手と実際に同じ場で歌うことが、作品そのものになっています。

写真:David Jones / CC BY 2.0(掲載用に縮小)
2024年|「Paradise」に足りない声は、自分の声ではなかった
2023年、*NSYNCは映画『トロールズ バンド・トゥギャザー』の「Better Place」で再び5人の録音を発表しました。
翌年にソロアルバムへ収めた「Paradise」は、ジャスティンがまず自分の歌を入れた曲です。
その版を聴き返した時、彼は*NSYNCの4人と話しているように感じたといいます。
同じ曲を一人でも歌えたのに、彼はそれを最終形にしませんでした。
JCチェゼも、ジャスティンから複数の曲を聴かされた後、「Paradise」こそ彼らから長年支えてきたファンへの思いを伝える曲だと話し合ったと振り返っています。
グループ時代をなぞるためではなく、今の5人が歌う意味を見つけて、一曲を作り直したのです。
「Gone」では、前に立つジャスティンを4人の声が支えていました。
そこから彼は、自分の声を重ね、曲ごとに人物を演じ、ほかの歌手や合唱と声を交わしてきました。
そして「Paradise」では、自分の声で始めた歌に仲間が入る場所を作っています。
声の高さがどう変わったかだけでは見えない変遷が、その選択に残りました。

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