RIKUの歌い方|明るい高音に、息とざらつきで表情をつける

「This is me 〜約束の詩〜」期のRIKU(2025年掲載、写真:髙橋耀太) RIKU
「This is me 〜約束の詩〜」期のRIKU(2025年掲載、写真:髙橋耀太)

RIKUの歌を「高く、力強く歌う人」とだけ捉えると、見落としてしまうものがあります。
本人は、女性曲も原曲のキーで歌えるほど高い声を、自分の特徴として話してきました。
その明るい声を土台にしながら、曲ごとに違う感情を出すため、息や声の揺れ、言葉の勢いを選んでいます。

大切なのは、得意なジャンルをどの曲にも持ち込むことではありません。
RIKUは「FULLMETAL TRIGGER」の制作時にも、自分の好みより、楽曲の世界を表すことを優先すると話しています。
歌い方を考えるときも、「何ができるか」とともに、「この曲には何が必要か」を見ると分かりやすくなります。

息遣いとビブラートで、明るい声に陰影を作る

「INVISIBLE LOVE」で注目したいのは、声を伸ばしている間の表情です。
RIKUは、ビブラートの揺れ幅や揺れる回数、息遣いまで意識して歌ったと説明しています。
同じ高さの音を保つ場面でも、揺れをどう加え、息をどう含ませるかで、感情の見え方は変わる。
メロディーの音程だけでは説明しきれない部分です。

裏声を使う例としては、「MY PRAYER」の最初のサビの折り返しが挙げられます。
緑黄色社会の小林壱誓も、RIKUが歌うこの部分の裏声に惹かれたと話しています。
高音を一つの強い声で押し通すのではなく、響きの性格を変えることで、同じサビの中に違う表情を置いています。

「INVISIBLE LOVE」期の取材記事に掲載されたRIKU(2020年)
「INVISIBLE LOVE」期の取材記事に掲載されたRIKU(2020年)。
画像出典:画像掲載元

「蜘蛛の糸」では、あえて声にざらつきを加える

2025年の「蜘蛛の糸」では、声の滑らかさだけでなく、ざらつきをどこへ入れるかがポイントになります。
RIKUは、普段は喉の負担を抑えて歌うことを意識しながら、この曲では声のエッジを試したと話しています。
いつも同じように荒く歌うのではなく、普段の歌い方に、曲が求める質感を足したのです。

本人が具体例に挙げているのは、歌詞の語尾に置くざらつきと、サビで三人の声を合わせる部分です。
RIKUと吉野北人が、川村壱馬の歌い方へ寄せる場面もありました。
自分だけの声色を強く示すところと、三人が一つに聞こえるようにするところ。
一曲の中でも、その狙いは切り替わっています。

RIKUはこの録音を、普段の日本のロックを思わせる方向から、ヒップホップ寄りの声の使い方へ挑む経験としても説明しています。
同じ強い声でも、曲のノリに合わせて、言葉の感触や押し出し方を変える必要があった。
単に声を大きくするだけでは、求める雰囲気に届かないのです。

前後の歌い手を想像して、声を置く

三人で歌うときは、自分の声だけで良し悪しが決まるわけではありません。
「Fandango」のころ、録音は川村壱馬、RIKU、吉野北人の順で進んでいました。
真ん中のRIKUは、先に入った川村の歌を聴き、まだ録られていない吉野の歌も想像しながら、自分の表現を決めていたそうです。

先の声を受け取ったときに、次の声へどう渡すか。
自分の一節を単独で完成させることと、一曲の流れを作ることは同じではありません。
三人の声の違いは、交代するたびに歌を途切れさせるものにも、展開を豊かにするものにもなります。
RIKUの録音の考え方は、その違いをつなぐ仕事でもあるのです。

歌割りに合わせるため、声質そのものも曲ごとに変えると本人は話しています。
ラップなどを除けば、特定の人に同じ種類のパートが固定されているわけでもありません。
RIKUなら常に高音、別の人なら常に柔らかい声、と単純に役目を決めず、その曲の三人の組み合わせを見ると、選択の幅が分かります。

重ねた声にも、違う人格を持たせる

「THROW YA FIST」の録音では、一つの歌を二重、三重に重ねる作業がありました。
RIKUは、最初のよいテイクをそっくり再現しようとすると、同じようには歌えない場合があると話しています。
そこで、次のテイクは別の人格として歌うような気持ちで重ねたそうです。

完成した音源の厚みには、こうした録音の積み重ねも含まれます。
一度に出している声の太さだけで、すべてを説明することはできません。
同じ言葉を違う感触で歌う声が重なるからこそ、一人の歌でも、広がりや勢いを作れるのです。

力を入れる曲でも、力み続けない

「NO GRAVITY」では、最後のサビに向かう歌の強さが、本人も手応えを語る部分です。
ただし目指したのは、何でも太く強く歌うことではなく、鋭さを感じさせる仕上がりでした。
強い歌にも、重さで押すものと、切れ味で進めるものがあります。

一方、「Love Will Find A Way」の録音では、思いを入れようとして力み、苦戦したと振り返っています。
そこで肩の力を抜いたことが、よいテイクにつながりました。
熱い内容を歌うからといって、歌い手が最初から最後まで力を入れ続ければよいわけではない。
気持ちの強さと、声を出すときの力加減を、分けて考える例です。

「Everest」では、伴奏に多くの要素が入っているからこそ、歌をシンプルにする選択をしています。
RIKUは、自然に歌うほうが曲が立つと説明しました。
声に技を足すことが、いつも曲を豊かにするとは限りません。
周囲の音が何を担っているかを考え、歌の側は整理することも必要なのです。

ソロの「This is me」では、声を飾りすぎない

「This is me 〜約束の詩〜」は、歌声を引き立てるため、伴奏の音数を抑える考えで作られました。
RIKUが録音で大切にしたのも、歌を器用に見せることより、そのときの気持ちでした。
三人で歌う場合は他の二人を意識しますが、ソロでは、音楽に身を任せて自然に出る歌を生かせる。
本人は、その違いを話しています。

声を隠す場所が少ないからこそ、言葉をどんな温度で歌うかが前へ出ます。
この曲での自然体は、何も考えずに歌うという意味ではありません。
RIKUは十分に練習してから録音に入り、そこで自分が納得するテイクを選んでいました。
準備したことを、歌う瞬間には意識しすぎないという順序があります。

2025年のビルボードライブ公演取材に応じたRIKU(写真:古水良)
2025年のビルボードライブ公演取材に応じたRIKU(写真:古水良)。
画像出典:画像掲載元

生バンドによるソロ公演では、声と演奏だけで、近い距離の観客へ届けることを選んでいます。
一人に視線が集まる舞台を経験することは、グループへ戻ったときの力にもなると考えていました。
録音で声を重ねる表現と、目の前の相手へ声を届ける表現の両方を持つ人なのです。

強さも柔らかさも、その曲で選び直す

2026年の「BLACK TOKYO」では、伴奏の勢いを受け、叫ぶようなロックの表情を選びました。
「This is me」での飾らない歌とは、声に求める役目が違います。
柔らかく歌えるようになったから強さを手放すのではなく、両方を使えることが表現の幅になります。

RIKUの歌を聴くときは、高い音が出るかだけでなく、その音を揺らすのか、ざらつかせるのか、隣の声に寄せるのかにも注目してみたいところです。
明るい声の持ち味を残しながら、一曲の中で必要な表情を選ぶ。
その細かな判断が、力強さの中に繊細さを感じさせています。

RIKUの歌唱変遷

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