段原瑠々の歌唱変遷|歌い上げる声に、引く表現と仲間へ応える自由が加わる

2026年の取材で、赤い花を手にする段原瑠々(撮影:小川伸晃) シンガー
2026年の取材で、赤い花を手にする段原瑠々(撮影:小川伸晃)

段原瑠々は、Juice=Juiceに加わったときから歌を期待されていた人です。
それでも、加入後の本人の言葉を追うと、すでにできる歌を繰り返すだけでは満足していません。
声の出し方を学び直し、あえて歌い上げない表現を試し、曲の中の女性に合わせて声を変えてきました。

よく歌えることの先で、声の選択肢を増やす

歌の上手さを褒められてきた人にも、慣れた歌い方では届かない曲があります。
段原の変遷は、その曲に合う声を増やしていく歩みとして見ると面白くなります。
強く見せたい場面だけでなく、かわいく見せたい場面や、気落ちした言葉をそっと置きたい場面も、自分の歌にしていこうとしてきました。

『雨の中の口笛』の自撮りアカペラ映像(2024年公開)。

2017〜2018年|期待された歌声を、ひとつの型にしない

2017年にJuice=Juiceへ加入し、最初に参加した曲が「Fiesta! Fiesta!」でした。
2018年の対談で段原は、初披露の反応が良かったぶん、その後も聴き手の期待を超えたいと話しています。
歌の入りで印象を残したことは、自信になると同時に、毎回同じ評価では足りないという意識にもつながっていました。
2022年の振り返りでは、冒頭のソロを歌ったあとの歓声に、むしろ自分が驚いたとも話しています。
それは、歌を評価された瞬間であると同時に、加入したグループの一員として迎えられたと感じる瞬間でした。

ただ、このころの本人は、小学生から続けてきた歌い方を変える難しさにも向き合っています。
ボイストレーナーの菅井先生から別の出し方を提案されても、長く身についた習慣はすぐには直せませんでした。
当時の声を否定する指導ではなく、もうひとつの歌い方を手に入れるための練習だったといえます。
何を歌っても同じ印象になるのでなく、曲に応じて声を選びたいという思いが、早くも言葉になっていました。

具体的な課題は、低い声とファルセットの安定でした。
レッスンでは別の出し方で声が出る瞬間があっても、それを自分のものにするのは簡単ではなかったそうです。
最初のレッスンで先生に歌への不安や直したい点を話したことも振り返っています。
歌える人として期待される一方、本人は相談しながら、まだ使い慣れていない声を増やそうとしていました。

『Fiesta! Fiesta!』(2017年)のMV(ショート版)。

2018年の対談に掲載された段原瑠々(撮影:佐藤友昭)
2018年の対談に掲載された段原瑠々(撮影:佐藤友昭)。
画像出典:写真掲載元

2021年|歌い込まない声も、曲を伝えられると知る

「がんばれないよ」の録音では、いつもとは違う歌の見せ方を求められます。
この曲にはメンバー別のソロ版もありました。
Rolling Stone Japanの取材で金澤朋子は、普段はパートごとに録ることが多いのに対し、この曲では一曲を通して歌ったと説明しています。
一節だけを仕上げるときとは違い、主人公の気持ちが動く全体の流れも、録音で向き合う対象になっていました。

段原は、話すような、息を出す程度の感覚で歌うように言われ、落ち込んだ帰り道に口ずさむ気持ちで歌いました。
最初は、この歌がそのまま作品になってよいのか、不安もあったといいます。

ところが、自分の考えで歌ったものと、指示を受けて歌ったものを比べると、控えめなほうが曲に合うと感じました。
しっかり歌うことだけが、感情を伝える方法ではない。
その発見は、歌える力をどこまで使うか、どこで控えるかを選ぶ経験でした。

『がんばれないよ』、段原瑠々のソロ版(2021年)の公式音源。

段原は、グループ版で声が重なったときの響きにも魅力を感じています。
それぞれ違う声でソロをつなぎ、サビで一緒になることで視界が開けるような構成を気に入ったと話しました。
一人の歌を聴かせることと、全員の声になったときに曲が広がること。
控えた歌も、その流れの中で役割を持っています。

『がんばれないよ』(2021年)のグループ版MV。

2021〜2022年|背負いすぎる気持ちをほどき、明るい声にも挑む

2022年の取材で段原は、その前年に喉を傷め、治ったあとも、どう歌っていたのか分からなくなった時期を振り返っています。
ディレクターのたいせいから、一人で何もかも引き受けなくてよいと声をかけられました。
本人は、再び好きな気持ちで歌えるようになったと話しています。
声をどう出すかを考え続ける時期に、歌への向き合い方も見直すことになりました。
自分ではグループを背負おうとしていたつもりはなくても、気づかないうちに引っ張る役目を引き受けていたという振り返りです。
歌う力への期待に応えたい気持ちと、仲間に任せてよい部分との間で、力のかけ方を探していました。

その時期のアルバム『terzo』には、声の印象を広げようとする挑戦もあります。
「POPPIN’ LOVE」では、かわいく歌うように促され、これまででも特に明るいトーンを試しました。
男の子に振り回される女の子を、リズミカルに表したいという録音でした。

『POPPIN’ LOVE』(2022年)の公式音源。

一方、四人で歌う「Mon Amour」では、大人の女性を演じる感覚を楽しんでいます。
普段の自分とは違う、強くてかっこいい女性になれることも、Juice=Juiceの曲を歌う魅力でした。
声を変えることが、不得意を埋める課題だけでなく、人物を表す楽しさにもなっています。
この曲を歌うのは、植村あかり、稲場愛香、段原、井上玲音の四人です。
ソロが多く、最後のサビでは掛け合いに井上のフェイクが加わる構成を、段原は気に入っていました。
全員で歌うときとは異なる声の配置の中で、人物の気持ちを他の歌い手と受け渡す面白さも感じていたのです。

植村あかり・稲場愛香・段原瑠々・井上玲音による『Mon Amour』(2022年)の公式音源。

2025年|情熱をぶつける歌と、抑えた大人の歌を並べる

「盛れ!ミ・アモーレ」が広く届いたころも、段原は情熱的な歌だけをグループの魅力として挙げていません。
同じシングルの「四の五の言わず颯(さっ)と別れてあげた」も、あわせて聴いてほしい曲でした。
女性の強さと弱さを、違う温度で表せることを大切にしています。
「盛れ!ミ・アモーレ」の録音でも、本人は失恋の歌であることを意識していました。
情熱的な声を出す曲だからこそ、その勢いの中にある気持ちをどう残すかも考えていたのです。

「四の五の言わず颯(さっ)と別れてあげた」の録音では、恋愛をひと通り経験した大人の女性という設定を、ディレクターと共有しました。
自分の大人っぽさを出しつつ、年齢の違うメンバーが歌うグループとしてもまとまる表現を探しています。
曲ごとに違う印象を出したいという加入当初の思いが、人物像を共有して歌う録音の中で、具体的な声の選択になっています。
同曲では、先に録った段原のフェイクに、井上が後からハモリを試して加えました。
井上は採用されるか分からないまま録ったと説明し、段原も、声が重なったことで魅力が増したと受け止めています。
自分一人の見せ場になり得る声を、別の声との組み合わせへ開く。
完成した歌は、各自が用意した表現を制作の場で合わせていく中で生まれていました。

Billboard JAPANの取材に登場した段原瑠々(撮影:SHUN ITABA)
Billboard JAPANの取材に登場した段原瑠々(撮影:SHUN ITABA)。
画像出典:写真掲載元

2025〜2026年|準備した歌を、仲間とのやり取りへ開く

2025年の「盛れ!ミ・アモーレ」によるTHE FIRST TAKE出演では、新たなハモリも考えられました。
段原が振り返ったのは、緊張の中で集中する感覚と、メンバー全員で歌える喜びです。
普段とは違う歌の組み合わせを、その場で仲間と成立させる経験でもありました。
事前に合わせる時間はほとんど取れなかったといいます。
それでも本番では、メンバーとこの場に立てる喜びが緊張を上回ったという振り返りでした。

『盛れ!ミ・アモーレ』、2025年のTHE FIRST TAKE出演映像。

同年のバンド編成によるライブについても、メンバーが歌で遊ぶと、演奏する側も応えてくれたと話しています。
もともと本番でアレンジを加えるメンバーが多く、生の演奏と組めば、その熱がさらに高まるのではないかと期待していたそうです。
2025年10月の公演では、そのやり取りを実際に楽しめました。
歌を固定された伴奏へ乗せるだけでなく、相手の音で自分の表現も動いていく。
自分で考えた歌い方を、相手の音に応じて動かせることも、ライブの楽しさになっていました。

2025年10月10日の公演より、『盛れ!ミ・アモーレ』のバンド演奏版。

2026年の取材では、リーダーとして気張りすぎず、自分も自由に歌ってよいと思えるようになったと語っています。
リーダーになった初めは自分がしっかりしなければと考えていたものの、半年ほどたつと、仲間の歌や実力に助けられていると気づいたそうです。

同年のCanCamの取材では、本番に向けた準備と自由の関係も説明しています。
歌い方や表情はリハーサルで固め、ステージへ出たら、その日のメンバーの歌に影響を受けたい。
不安を減らすために準備しながら、本番では決めた形だけに閉じないという姿勢です。
期待を一人で超えようとしていた加入当初から、仲間の声に動かされることも楽しめる歌へ、考え方が広がっています。

かつて期待に応えようとした歌声に、声を控える選択や、違う人物を演じる声、仲間に任せる余裕が加わってきました。
段原瑠々の変遷は、力のある声を持つ人が、その力の使い道を広げてきた過程です。
現在の声の扱い方は、段原瑠々の歌い方で詳しく見ています。

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