アヴリル・ラヴィーンの歌声はどう変わった?震えるテイクを残し、再び客席と歌うまで

アヴリル・ラヴィーンは「Head Above Water」の録音中、泣きそうになって声が少し震えました。
それでも、歌い直した声に差し替えず、そのテイクを残しています。
ところが次のアルバム『Love Sux』では、客席と一緒に楽しめる、勢いのある曲を作りたくなったと話しました。

十代のころから快活なロックを歌ってきた人が、震えた声を必要だと思い、その後またステージを思い浮かべて曲を作る。
「静かになってから昔に戻った」だけでは、この動きは説明できません。
アヴリルは時期ごとに、どんな声ならその曲の気持ちが残るかを選び直してきました。

2002~07年、暗い曲もふざけた曲も自分で選ぶ

2002年、17歳で発表した『Let Go』から「Complicated」「Sk8er Boi」が広まりました。
「Sk8er Boi」の恋愛の物語や、バンドを背にした勢いが、アヴリルの初期像として残っています。

二作目『Under My Skin』の2004年には、より暗く深い気分の曲が並びます。
アヴリルは「Don’t Tell Me」を先行曲に選びたいレーベルに対し、自分にはもっと強い曲が書けると考え、「My Happy Ending」を作ったと後年振り返りました。
本人はその曲を先に出したかったものの、最初は意見が通りませんでした。
この経験で、自分には作品を見極める感覚があると知ったといいます。

その次の『The Best Damn Thing』では空気が一変します。
2007年の「Girlfriend」について、本人は冗談と皮肉を込めた歌だと説明しています。
アルバムを作るとき、ツアーで楽しく歌える曲を欲しかったとも話しました。

実際に彼女は「Girlfriend」を公演の最初と最後の両方で歌ったといいます。
二作目の重い曲調から三作目の冗談めいた歌へ。
曲の言葉だけでなく、その声を客席へ届ける場面まで、制作の判断に入ってきたのです。

2011年、伴奏を減らして声の細部を残した

ツアーで「Girlfriend」や「Sk8er Boi」をアコースティック編成で歌うと、アヴリル自身、普段とは違う歌い方になると気づきました。
その感触を気に入り、2011年の『Goodbye Lullaby』では、アコースティックギターと歌を中心にしたいと考えます。

当時の取材で彼女は、ポップスの録音で声に強く処理をかけると、歌い手の個性や音色が隠れてしまうことがあると話しました。
このアルバムでは、声の細かな感情を聴いてほしかったのです。
大きな伴奏を避けることが目的というより、曲の中で声が埋もれない場所を作ろうとしていました。

曲を作る環境も変えています。
この時期には自宅や旅先でピアノを使って書くことが増え、録音の多くを自宅スタジオで進めました。
制作には、それまでのアルバムより時間をかけたといいます。
曲を思いついてから録音するまでの過程も、声と感情を中心にしたいという方針に合う形を探っていたのです。

収録曲「Darlin」は、14歳のときに書いていた曲です。
曲を書いた十代のアヴリルと、アルバムへ入れることを決めたアヴリルの間には時間があります。
昔の自作曲をそのまま思い出として飾るのではなく、いまのアルバムで声を聴かせたいという方針に迎え入れました。

2011年、パリ公演のアヴリル・ラヴィーン
2011年、パリ公演のアヴリル・ラヴィーン。
写真:Rudy 40 / CC BY-SA 3.0

同じ作品には軽快な「What the Hell」も入っています。
高低差のあるその曲を毎晩歌うとき、本人がどのように声や発音を調整していたかは歌い方の記事で扱っています。
ここでは、アコースティックな曲を増やすことと、遊び心のある曲を手放すことが同じではなかった点が大切です。
2013年には「Rock N Roll」のような曲も発表し、本人も自分にはバラードとポップロックの両方があると語りました。

2018~19年、声が震えた「Head Above Water」を残す

ライム病による療養を経て、アヴリルは「Head Above Water」を2018年に発表し、翌年に同名のアルバムを出しました。
彼女はこの曲を療養中に書き、再びスタジオへ入って録音した初期の曲の一つだと説明しています。

当時の本人取材によると、録音中は泣きそうになるほど気持ちが込み上げ、声が少し震えました。
彼女はその歌を残します。
その場の感情が本物であり、その揺れも歌に必要だと感じたからです。
録音された声を整えることより、その瞬間の気持ちを残す判断でした。

2011年には、声の個性を録音の中で聴こえるようにしたいと語っていました。
「Head Above Water」では、整えきれない瞬間まで歌の一部として引き受けています。
彼女はアルバム全体でもピアノと歌を前に置き、言葉と感情を届けたかったと話しました。
一曲の声の揺れは、偶然の失敗として残ったのではありません。

このアルバムには、歌い回しを広げる試みもありました。
たとえば「Tell Me It’s Over」について、本人は昔のジャズを思わせる感触があると説明しています。
ジャズを好んで聴き、幼いころには教会で歌ったり、地元の催しでカントリーを歌ったりしてきた経験も振り返りました。
本人にとっては、なじみのあるポップの旋律だけに収まらず、自分の声で別の表情を探る作品でもあったのです。

2019年に公演を控えた取材で、彼女は昔の曲も新しい曲も「自分の一部」だと話しています。
深い思いを歌う声と、客席を盛り上げる声を、どちらも持って舞台へ戻ろうとしていました。

2021~22年、次は客席を思い浮かべて歌う

『Head Above Water』のツアーが中断されたころ、アヴリルは、ライブで歌うことがどれほど好きかを改めて考えました。
新作を作るときには、曲を客席で演奏する場面を思い浮かべたと話しています。
2018年の曲を否定するためではなく、そのとき歌いたい気分が変わったのです。

先行曲「Bite Me」は2021年に発表され、2022年の『Love Sux』へつながりました。
本人によれば、『Head Above Water』には深く感情的なバラードが多かったため、今度はギターを鳴らして楽しめる作品にしたかった。
恋愛への疲れや不満を歌いながらも、ユーモアを入れています。

2007年の「Girlfriend」も、ツアーの楽しさを考えて作った曲でした。
しかし『Love Sux』では、長くステージから離れた後の「また客席の前で歌いたい」という気持ちが制作のきっかけになります。
本人は、一度レーベルやマネージャーの決定から離れた状態で、このアルバムの制作を始めたとも説明しました。
昔と似た速い曲でも、そこへ向かう理由は当時の彼女自身のものでした。

制作相手との通じ合い方も大きかったようです。
ジョン・フェルドマンやMOD SUNとは音楽の背景が近く、望む感じを共有できた、と本人は話しています。
頭にある曲と、録音後に出来上がった音との違いを、何度も説明し直す必要が少なかった。
楽しそうな曲を選んだことに加え、それを形にする作業そのものも楽しく進められました。

2024~25年、昔の曲と今の曲を同じ舞台に置く

2024年のベスト盤とツアーでは、アヴリルは二十年以上の曲を同じ公演で歌いました。
本人は「Girlfriend」を冒頭に選び、「My Happy Ending」ではギターを持つことで公演に変化をつけ、近年の「Bite Me」にも客席が昔の曲と同じくらい声を合わせると話しています。
アルバムごとに別の姿を演じ分けるというより、その曲に合った場面を一つのステージに組み直しています。

翌2025年には、デビュー期に一緒にツアーをしたSimple Planと「Young & Dumb」を作りました。
アヴリルによれば、昔を懐かしむ気持ちと、音楽が二組の友情をつないできたことを曲にしたかったそうです。
十代の曲を録り直したものではなく、同じ仲間と今の自分たちで作った新曲です。

2007年には客席を沸かせる歌を望み、2011年には声の細かな表情を録音に残し、2018年には震える歌も選びました。
2022年には、再びライブで笑い合える曲を作った。
今はそのどれか一つに戻る必要はありません。
アヴリルの歌声の変遷は、声そのものが一方向に変わった歴史というより、その時々に大切な歌を、自分で選んで残してきた歴史です。

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