佐藤優樹は、ソロの録音でグループ時代に身につけたリズムの習慣を見直し、慣れない低音やかわいい声を試してきました。
一曲を自分一人で届けるために、どんな声で、どう歌うかを選び直しています。
その過程では、以前できていたリズムの取り方が一度わからなくなる経験もしました。
その一方で、グループ時代の歌い方を残したいという思いもありました。
新しい声に挑戦することと、歌ってきた自分を受け継ぐこと。
その両方を選びながら、佐藤は自分の曲との関係を作っていきます。
『Ding Dong』(2023年)のMV。
グループ時代から2021年――一フレーズと、思い描いた声
2011年に佐藤が加入したのは、モーニング娘。
2021年12月にグループを卒業するまで、約10年にわたり活動しました。
後年の取材では、グループにいた頃は担当する一フレーズを全力で歌っていたと振り返っています。
リズムでは、常に16ビートを刻むことを意識するよう求められていました。
短い担当部分で力を出すことと、細かい拍の流れを保つことが、本人の語る当時の土台です。
ただし、経験を重ねていても、思い描いた声がそのまま出せるとは限りませんでした。
最後に参加したシングルの「Teenage Solution」は、二度レコーディングしています。
2021年のnon-noの取材で佐藤は、最初の録音時には既に卒業を決めており、好きなディレクターとの制作も最後かもしれないと考えたら、うまく声が出なくなったと話しました。
自分の中には出したい声があったのに、実際の声がそこへ届かなかったのです。

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その後、ディレクターが佐藤ならもっとできると考えたことを伝えられ、録り直すことになりました。
このときの難しさを、本人は卒業や制作する相手への思いと結びつけて語っています。
長く歌ってきたグループを離れる節目に、頭で描いていた声と実際に出る声の隔たりを感じた経験でした。
佐藤にとって、そのディレクターは、会うたびに発見があり、自分を成長させてくれる人でした。
普段は曲を理解するためにノートへ言葉を書き出していたのに、このときはその作業にもいつもどおり向き合えなかったそうです。
曲を分析すること自体が、大切にしてきた制作の終わりを認めるように感じられたと説明しています。
歌を支えていた相手との関係まで含めて、この録音は大きな節目でした。
2023年――「Ding Dong」と、一人で歌い続ける難しさ
ソロデビュー作「Ding Dong/ロマンティックなんてガラじゃない」が発売されたのは、2023年3月です。
歌を続けようと決めたきっかけにも、卒業時にディレクターから届いた、歌い続けることを勧めるメッセージがありました。
佐藤はそれを受けて会社に希望を伝え、曲の準備は早くから始まっていたそうです。
ただ、本人の気持ちが整わず、録音は一度待つことになりました。
曲が手元にあることと、その曲を自分の歌として引き受けられることには、時間の隔たりがあったのです。
本人は新しい曲を初めて受け取ったとき、これまで聴いたことも歌ったこともない感じで、自分にはできないと思ったと話しています。
やがて、知らない曲を知りたいという気持ちへ変わり、向き合えるようになりました。
「Ding Dong」は、理解するまで時間がかかった曲でした。
曲や音の良さを損なわず、自分の曲にできるようになりたいと、発売時のnon-noの取材で語っています。
一曲を通して一人で歌い、踊ることにも、グループとは違う難しさを感じていました。
「ロマンティックなんてガラじゃない」の録音では、歌詞を読み込むうちに感情が入り、初めてレコーディングで泣いたとananで明かしています。
作曲者のshusuiからは、自分らしく自由にやってよいと声をかけられていました。
慣れた曲で自分の担当を歌うことから、まだつかみきれていない人物を一曲の中で歌うことへ、課題が広がったのです。
同じシングルには「愛のサバイバー」も収録されました。
公式の作品紹介では、グループ時代の歌い方も残しておきたいという佐藤の希望から生まれた曲とされています。
後年のCanCam.jpの取材では、先に完成した五曲が以前の自分と大きく違っていたため、録音後にディレクターへ希望を伝えたと説明しています。
新しい表現を試しても、昔から聴いてくれた人を置いていきたくない。
その話し合いを受け、追加で作られたのがこの曲でした。
ソロの新しさを受け入れながら、グループ時代の歌唱も残そうとしていました。
『愛のサバイバー』(2023年)の公式音源。
2024年――得意な声から、苦手な声へ踏み込む
2ndシングル「嵐のナンバー/花鳥風月 春夏秋冬」では、低い声や大人びた表現が新しい課題になりました。
背景には、いつか一人で長いコンサートをするなら、同じ系統の曲ばかりにはしたくないという考えがありました。
グループでは他のメンバーが担っていたかわいさも、自分で歌えるようになっておきたい。
歌い方の種類を増やすことが、ソロで公演全体を作るための課題になっていたのです。
「嵐のナンバー」は、キーや声質を変えながら録音を重ね、四回目で歌が決まったと話しています。
初回は複数のキーで一曲を通して歌い、二回目から声の質感を試しました。
本人によれば、一回の録音には四〜五時間をかけています。
慣れた声を曲に当てはめるのではなく、曲に必要な声を探す時間が大きくなっていました。
「花鳥風月 春夏秋冬」でも、古いエレキギターを思わせる声を求められました。
本人がキンキンと形容する自分の声とは違う質感が、録音の課題になっています。
また、「Sorry!」と「とどめ」は、本人が候補曲から選びました。
かわいい歌やラップへの苦手意識を避けず、あえて挑戦するという考えが選曲にも表れています。
その苦手さがはっきりした機会として、2024年5月のイベントで歌った「私のでっかい花」を挙げています。
もとは田中れいな、飯窪春菜、石田亜佑美が、それぞれの持ち味を生かして歌った曲です。
佐藤は自分で歌ってみて、かわいい表現やラップの難しさを改めて感じたと話しました。
新しい曲の方向は、実際に人前で歌った経験からも見えてきたのです。
スタッフに任せて新しい曲へ入っていったデビュー時から、自分で苦手な表現を選んで向き合う姿勢へ、制作への関わり方も変わりました。
『Sorry!』(2024年)の公式音源。
2024年の「とどめ」――16ビートを手放し、もう一度使う
ソロになってから、ずっと16ビートを意識し続けなくてもよいと言われた佐藤は、それを気にしすぎて、一時は16ビートで歌えなくなったと話しています。
グループで身につけた習慣が、別の曲へ入るときには、そのまま使えばよいものではなくなりました。
ところが「とどめ」では、再び16ビートを感じさせながら歌い切る必要がありました。
その感覚を取り戻すことに苦労したと、本人は振り返っています。
一度見直したリズムの習慣を、この曲ではもう一度使うことになったのです。
佐藤がソロで目指していたのは、一曲のすべてを歌い切り、聴く人が情景を思い描ける表現でした。
担当の一節に集中していた頃から、曲全体をどう届けるかへと、歌うときの責任も広がっています。
声色の挑戦と同じように、慣れた歌い方を曲へ合わせることにも、改めて時間が必要でした。
『とどめ』(2024年)の公式音源。
2025年――曲のノリと、これからの声を選ぶ
1stアルバム「now rise」を発表した2025年、佐藤は音楽大学での学びについても語っています。
16ビートを土台にしながら、楽曲の持つノリに身体を合わせることを教わったそうです。
決まった拍だけでなく、音色や曲全体の動きへ目を向けることが、新しい視点になりました。
教師が自分の曲を歌うと、同じ曲とは思えないほど印象が変わり、かっこよく感じたとも話しています。
自分の曲にも、まだ知らない届け方がある。
その実例に触れたことが、拍の取り方を一つ覚えるだけでは収まらない学びになっていました。

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「Error!」は、本人が気にしていた声の鋭さから、大人っぽい雰囲気の声へ挑戦したいと思って選んだ曲です。
ラップは石田亜佑美に参加を依頼しました。
一人で声を変えることに加え、別の歌い手と組むことで曲の可能性を広げようとしていたのです。
『Error!』(2025年)の公式音源。
佐藤は「now rise」に、やる気がなかった時期から、やらなければと思い、やりたいと感じるようになるまでの声色が入っていると話しています。
同じ歌い手の声でも、曲に向き合う段階が異なることを、本人はこの作品に見ていました。
一フレーズに全力を込めた経験は、ソロになっても消えていません。
その力を一曲のどこで使い、どんな声を選び、リズムをどう感じるか。
低音やかわいさを試した時間も、16ビートを取り戻した時間も、歌い慣れた自分を曲に合わせて選び直す経験につながっています。
声質やキー、身体の動きと言葉の置き方は、佐藤優樹の歌い方で詳しく扱っています。







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