さくらみこの歌い方|声の明るさと、粘るフレーズ・自然な歌の使い分け

2026年の取材掲載のさくらみこ(アーティストビジュアル) さくらみこ
2026年の取材掲載のさくらみこ(アーティストビジュアル)

さくらみこの歌を、かわいい声という一言だけで説明すると、曲の中でしている工夫が見えにくくなります。
笑顔を声に乗せること、サビの直前を粘って歌うこと、壮大な曲で普段の自分に近い声を置くこと。
本人や作り手の言葉から、声の個性を生かす工夫を読み解きます。

「DAI DAI DAI ファンタジスタ」— MV(2024年)

笑顔の感じを、声の出し方に残す

さくらみこはレッスンで、歌に笑顔の感じを加えることを教わっていると話しています。
口角を上げて歌うと声が華やかになる、というのが本人の実感です。
歌うことに集中してその感じが薄れたら、意識して戻すこともあるといいます。

笑顔は、彼女自身にとって声を整える手掛かりでもあるのです。
どんな表情で言葉を届けるかを、歌の最中にも意識しています。

本人は、キャラクターソングを、その人物になりきって歌うことが好きだったとも振り返っています。
声の表情で曲の世界に入る楽しさが、自分のオリジナル曲にもつながっているのでしょう。
ただし、憧れの歌手のような大人びた声を試しても、自分の声が出てくるといいます。
誰かの声へ完全に置き換えるより、自分の声でどこまで表情を変えられるか。
その視点で曲を並べると、彼女の歌い分けが捉えやすくなります。

サビの前を粘り、始まりには短いシャウトを置く

「DAI DAI DAI ファンタジスタ」では、作り手のじんが、サビ前を粘りのある歌い方にするよう求めました。
そこでいったんためを作り、サビへ向かう弾みにつなげる狙いです。
同じ勢いで全編を押し切るのではなく、次の部分へ進む前に、言葉の運びを変えています。

冒頭には、英語の呼び掛けに続く短いシャウトもあります。
さくらみこ自身はレッスンの段階で不安を感じていましたが、録音ではじんに背中を押されました。
曲の入口で勢いを付ける声と、サビ前で粘る声。
どちらも明るい曲を歌う表現ですが、曲の中で担う役割は異なります。

2024年の初ソロライブで「DAI DAI DAI ファンタジスタ」を歌うさくらみこ(撮影:高田真希子)
2024年の初ソロライブで「DAI DAI DAI ファンタジスタ」を歌うさくらみこ(撮影:高田真希子)。
画像出典:画像掲載元

「SUNAO」は、切なさを含む旋律を華やかな声で歌う

「SUNAO」で水野良樹が意識したのは、彼女の歩みにあった切なさも含むメロディーでした。
ところが、自分で歌ったデモに比べて、さくらみこの歌が入ると曲はぐっと華やかになったと振り返っています。
旋律の陰りを、暗い声でそのままなぞるだけが方法ではないことを示す制作の話です。

水野は、彼女の声なら、少しくだけた言葉遣いも曲の中で生きると考えていました。
明るい声と、話しかけるような言葉の相性が、この曲の表情を作っています。

このアルバムには、ブラスの華やかさ、軽快なロック、レトロな電子音、ピアノや弦の響きなど、さまざまな伴奏が並びます。
たとえば「DAI DAI DAI ファンタジスタ」の繰り返しの多いフレーズと、「flower rhapsody」の大きく広がる曲の作りでは、声が置かれる景色も違います。
声質だけを切り離して分類するより、言葉の量や伴奏の動きも合わせて考えると、歌の違いが見えてきます。

「SUNAO」— MV(2024年)

壮大な曲でも、声まで大げさにするとは限らない

「flower rhapsody」について、堀江晶太は、自然体の歌声がオーケストラのような編曲に包まれるところを評価しています。
曲の規模が大きいからといって、歌も終始仰々しくする必要はない。
身近な一人の声と、周囲に広がる音の大きさが組み合わさることで、その人の物語として届くのです。

さくらみこ自身も、「flower rhapsody」や「your petal」は重なる音が少なく、歌を聴かせるため緊張すると話しています。
さらに初アルバムの仕上げに立ち会い、残してほしいブレスを伝えた経験もあります。
声の細かな聞こえ方まで、自分の意志を届けているのです。

2024年の初ソロライブで「flower rhapsody」を歌うさくらみこ(撮影:高田真希子)
2024年の初ソロライブで「flower rhapsody」を歌うさくらみこ(撮影:高田真希子)。
画像出典:画像掲載元

掛け声や擬音も、歌の表情になる

声の使い方は、旋律を歌う部分だけに限りません。
2024年の初ソロライブでは、「Sakura Day's」のせりふがライブ向けに変えられました。
一方、「ライクとヘイト」は、複雑な気持ちを扱う曲でも、深刻一辺倒にせず、やさしい歌声で届けられています。
客席に話しかける近さと、歌として気持ちを包むやさしさを、曲によって使い分けた公演でした。

サンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」のカバーでは、語りの部分を自身の言葉に置き換えました。
そして力のこもった歌へつなげていく。
旋律、せりふ、客席への呼び掛けを通して、同じ相手に気持ちを届け続けるところに、さくらみこのライブの面白さがあります。

その個性は、2026年の「PON-DERFUL!!!」にもつながっています。
冒頭と終わりに置かれた擬音のような声は、彼女が「Stellar Stellar」を歌うときの、おなじみの表現を受け継いだものです。
作曲したTAKU INOUEは、その声が長く耳に残っていたことを明かしています。
普段の歌の中で生まれた遊びが、今度は正式な曲を特徴付ける材料になったのです。

同曲では、言葉を次々に詰め込む前半から、熱い思いを伝える後半へと進みます。
細かな言葉の連続と、強い気持ちを届ける部分を一曲に入れることで、楽しさだけでは終わらない表情が生まれています。
早口の箇所があることも、単に速さを見せるためというより、彼女らしいにぎやかさを曲にする方法として捉えられます。

「PON-DERFUL!!!」— MV(2026年)

違う声と並ぶと、自分の甘さも生きる

miCometで歌うときには、相手の声との組み合わせも魅力になります。
2024年の初ソロライブで披露した「シュガーラッシュ」でも、さくらみこの甘い歌声と、星街すいせいのクールで伸びやかな声が対照を作りました。
ソロのときには曲全体を包む声の甘さが、二人の歌では、相手との違いとしても生きるのです。

同じ公演では、星街の代表曲「Stellar Stellar」も二人で歌いました。
別の歌手の曲に入っても、自分の声の個性を相手にそろえることだけが共演の方法ではありません。
甘さを感じさせる声と、すっと伸びる声が同じ曲にあることで、一人で歌うときとは違う表情が生まれる。
曲の中で声を変える工夫と、違う声を持つ相手と歌う面白さを、両方楽しめる組み合わせです。

自分の声を保ちながら、曲の中で役割を変える

さくらみこの歌い方を考える鍵は、声の個性と、歌の運び方を分けて見ることです。
笑顔を感じさせる声でも、サビ前では粘りを加えられる。
大きな編曲の中でも、自然な声で気持ちを届けられる。
そして、せりふや擬音のような声も、その曲ならではの楽しさになります。

曲ごとに別人になるのではなく、自分の声のまま、聴き手への近づき方を変える。
制作での指示と本人の工夫を知ると、かわいさの中にある選択が見えてきます。
その選択が広がった過程は、さくらみこの歌唱変遷でたどっています。

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