将(アリス九號.)の歌い方|美しい旋律を、激しい声と演奏の中でどう生かすのか

公開インタビューに登場したVerde/の将 シンガー
公開インタビューに登場したVerde/の将

将の歌を考えるとき、美しいメロディーとシャウトを、別々の顔として分けるだけでは物足りません。
Verde/では、荒い声を使う場面にも旋律へのこだわりがあり、ギターまでが歌の相手になります。
一方、その歌をステージで届けるためには、身体の動かし方や、言葉を置く細かな感覚も必要です。
本人が語る発声と制作の工夫をたどると、歌の華やかさを支える、かなり地道な仕事が見えてきます。

シャウトにもメロディーを感じている

「White Noiz/」について話す将は、ギターのリフにも、クリーンな歌にも、シャウトにもメロディーが浮かぶと説明しています。
荒い声も勢いを足すだけでなく、旋律を担うものとして捉えているのです。

DIAWOLFの「Fallen」では、サビに明確な旋律を置きながら、他の部分では構成を崩す作り方が選ばれました。
荒い声の場面とサビを同じ質感へ揃えず、落差を曲の展開に使う。
虎も、突然メロディアスになってよいという発見を語っています。

将がボーカル面で尊敬すると挙げたのは、LINKIN PARKのチェスター・ベニントンです。
喉の使い方への敬意とともに、TOSHI-LOWが感情をむき出しにする表現にも引かれていました。
声を扱う技術と、自分を隠さず歌うこと。
両方が目指す歌手像にあります。

裏声と、演奏へ溶け込む歌も選ぶ

A9の『LIGHT AND DARKNESS』について、Naoは、将が裏声を多く使い、従来の力強さより心地よさを感じると話しています。
歌が常に演奏を押しのける必要はありません。
「INSOMNIA」では、将自身も曲の世界に溶け込むように歌いました。
同じ言葉を繰り返しながら、演奏の変化によって飽きさせない作りです。
声を強く前へ出す方法と、周囲の音に馴染ませる方法。
曲ごとに、その関係を選んでいます。

INSOMNIA|2016年ツアー映像

難しい旋律を歌うために、身体の動きも選ぶ

発声についての手がかりは、2016年の中島卓偉との対談にあります。
将は、卓偉の曲を繰り返し練習したことが、喉を開いて歌う感覚につながったのではないか、と振り返っていました。
これは、本人が歌うときに感じている身体感覚です。
どの筋肉や声帯の動きを使っているかまで示す言葉ではありませんが、声の出し方を模索してきた過程はよく表れています。

Verde/の最初のワンマン後には、体幹や重心移動と声の安定を見直しました。
動き回った公演の映像を見て、練習ほど歌えていなかったと反省しています。
難しい曲を届けるには、歌いやすい声の位置を保つ立ち方も必要だったのです。

2024年のVerde/初ワンマン「可不可」で歌う将
2024年のVerde/初ワンマン「可不可」で歌う将。
画像出典:画像掲載元

「Kafka/」は、本人も難しさを語った曲です。
歌いたい旋律から作った曲でも、簡単に歌えるとは限らない。
理想を実際の身体で声にする段階に、もう一つの仕事があるのです。

その難しさには、具体的な背景もありました。
「Kafka/」は当初、SHINと一緒に歌う話から作られた曲で、彼に合わせた高いキーだったのです。
共演が実現せず、一人で歌う曲になりました。

言葉の響きが、高いメロディーを動かす

「Daybreak」のサビでは、作曲した虎が、将に高いところをぎりぎりまで歌ってほしいと考えていました。
同時に将は、母音と子音の位置を揃え、言葉を音楽として残すことにも取り組んでいます。
高い音へ届くかどうかと、そこで言葉がどんな響きになるか。
この曲では、その二つを一緒に考えると歌の狙いが見えてきます。

Daybreak|2013年・短縮版

『Supernova』の「+−」では、文字数の多い日本語をしっかり歌うことが、自分自身の気持ちを高めたといいます。
感情が先にあって声が強くなるだけでなく、言葉を声に出すことで気持ちが動く。
将の歌では、発音は意味を説明するためだけのものではなく、自分を演奏へ入り込ませるきっかけにもなっています。

その土台には、岡野ハジメとの制作で学んだ、メロディーの捉え方と言葉の置き方があります。
声量を上げるだけでは解決しない細部にも、将は向き合ってきました。

一人の声で埋めず、他の声やギターと重なる

『絶景色』の「ARMOR RING」では、終盤のコーラスで将と沙我の声がよく混ざったことが、次の工夫につながりました。
将は沙我を「Q.」の歌にも誘い、Bメロでは二人が交互に歌ってから、声を重ねています。
別の声を迎えて、曲の表情を作る方法です。

Verde/の「Lunaris/」には、オクターブ違いで声を重ねる発想があります。
将は、A9時代にプロデュースを受けたL'Arc-en-Cielのkenの影響を挙げています。
上下の声を重ねた厚みは、一人が同時に一つの声で鳴らす太さとは区別したいところです。

「Static Eden/」では、声に重なる相手がギターになります。
将が気に入っているのは、声とギターが一オクターブ違いで同じ旋律を重ねる場面です。
複雑な展開の中で、二つの音が一瞬揃う。
ギターは、声と一緒に旋律を進める相手になっています。

ヴァイオリンやキーボードを加えた公演では、楽器が歌とぶつかりにくく、歌いやすかったと振り返っています。
声の通り方には、周囲の音の組み合わせも関わるのです。

2026年「Static Eden/」発表期の将
2026年「Static Eden/」発表期の将。
画像出典:画像掲載元

2026年には、歌の調子が良くないと感じた時期に、他のボーカリストと発声を共有した話もしています。
シャウトや高音の出し方を互いに話し合うことが楽しく、その仲間をVerde/の公演へ誘いました。
長年歌っていても、他の歌手の方法を知る余地を残している。
一人で完成した声を守るだけでなく、声を交わす関係を舞台にも持ち込んでいます。

歌いやすさは、簡単な音の並びだけでは決まらない

「Waterfall」には、将が作ったメロディーを沙我が練り直し、自分で歌ったデモを持ってきたという経緯があります。
将はそちらの方が良いと感じ、受け入れました。
実際に声で示された旋律だったことも、彼には大切でした。
歌っていて気持ちが引き出される曲として、「無限の花」とともに挙げています。
音を正しく並べるだけでなく、歌う人の気持ちが自然に動くラインを求めているのです。

将の歌い方を理解する入口は、声をきれいに整える方法を一つ探すことではありません。
難しい旋律を保つ身体の感覚があり、言葉の響きに押される瞬間があり、別の声やギターへ旋律を渡す場面がある。
その中で、荒い声も美しいメロディーの世界に置いていく。
歌いたい旋律を中心に、身体、言葉、共演者との関係を整えることが、将の歌を支えているのです。

歌声と表現の歩みは、将(アリス九號./A9/ALICE NINE.)の歌唱変遷で時期ごとにたどっています。

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