鷹嶺ルイの歌唱変遷|低い声への悩みから、自分の歌で観客と向き合うまで

鷹嶺ルイ「TSUBASA」の公式ジャケット(2022年) シンガー
鷹嶺ルイ「TSUBASA」の公式ジャケット(2022年)

鷹嶺ルイの歌の歩みは、自分の声で引き受ける表現を増やしてきた過程でもあります。
オリジナル曲を持ち、制作で新しい歌に挑み、観客の前へ持っていく。
その積み重ねによって、初期の曲も、新しく出会った曲も、活動の中で役割を増していきました。

2021〜2023年、自分の歌が自信に変わるまで

2021年11月27日、ホロライブの秘密結社holoXのメンバーとして活動を始めた鷹嶺ルイ。
配信での親しみやすさと、歌うときの存在感が、同じ活動の中にあります。
歌手としての歩みを見るときには、配信者としてのデビューと、オリジナル曲を発表した時期を分けると流れが分かりやすくなります。

最初のシングル「オーバード」は、2022年6月22日に発売されました。
作詞・作編曲を手掛けたのは柊キライです。
本人を取り巻く世界を楽曲にした作品であり、既存曲を自分の声で歌う活動に、自分のために書かれた曲を届ける活動が加わります。
この曲が後の活動でも残り続けることが、初期とその後をつなぐ手掛かりになります。

同年11月28日の2ndシングル「TSUBASA」では、杉山勝彦とともに本人も作詞に参加しています。
活動1周年に合わせた曲で、爽やかな旋律に自分の思いを託す形でした。
この段階ですでに、自身の世界を作家に描いてもらうことと、自分の言葉を曲へ持ち込むことの両方が始まっています。
後に柔らかな曲へ取り組む背景を考えるときにも、この初期の一曲は外せません。

一方、声への迷いもありました。
2024年には、本人が周囲のかわいらしい声と比べ、自分の低さや高音に悩んだ時期を振り返っています。
自分ならではの色を求め、歌へ積極的に向かうようになったといいます。

2023年3月の「hololive 4th fes. Our Bright Parade」では、「オーバード」を歌いました。
初めて出演するフェスで、観客へ呼び掛けながら場を盛り上げました。
最初のオリジナル曲が、大きな会場の観客へ届く場面でした。

翌年、本人は、この「オーバード」を歌への自信をくれた曲として振り返りました。
大きなステージでイントロが流れ、観客が歓声を上げたことを忘れられないといいます。
作家が用意した最初のオリジナル曲が、本人にとって自分の歌を信じる手掛かりへ変わっていたことが分かります。

2024年、『Liberty』で広がった歌の選択

歌へ踏み出す勇気をくれた出来事として、本人が挙げたのはホロライブの全体ライブでした。
観客の歓声に背中を押され、その一歩が1stアルバム『Liberty』につながったと、2024年6月に話しています。
ここでの変化は、ひとりで声の長所を見つけるだけでは完結しません。
自分の歌を受け取る人がいるという経験が、作品を作る理由にもなっています。

鷹嶺ルイ『Liberty』の公式ジャケット(2024年)
鷹嶺ルイ『Liberty』の公式ジャケット(2024年)。
画像出典:画像掲載元

『Liberty』の制作では、得意な印象を保ちながら、難しい歌へ手を伸ばしていきました。
「ひみつのおしごと」は、その一例です。
それまで早口やラップに苦手意識があったルイに対し、FAKE TYPE.は旋律を生かし、テンポや言葉の詰め方を調整しました。
録音を通して、本人もラップを自分の可能性として考えられるようになっています。

一方、「夢ができたの」では別の壁がありました。
本人はシティポップが自分に合わないと考え、歌の配信でも取り上げてこなかったといいます。
松室政哉と金木和也との制作は、その思い込みの外にある歌へ進む機会でした。
新しいジャンルに触れたことだけでなく、自分が似合うと思っていた声の表情を広げた点に、この曲の意味があります。

「夢ができたの」— 『Liberty』収録の配信音源(2024年)

「Tori To Re:TreaT」についても、本人は以前の印象を変える重要な曲と捉えていました。
それまでライブの始まりには「オーバード」を置くことが多かったのに対し、新曲では自分の世界へ観客を迎え入れる始まり方を考えています。
難しい旋律を歌えるようになることと、歌を公演の中でどう働かせるかが結び付いてきたのです。

2025年、同じ曲を別の姿で届ける

2025年3月4日には『Lieblings』が発表されます。
「オーバード」「ばかばっか」「ホロホーク」「夢ができたの」「TSUBASA」の5曲を、アコースティック版でまとめた作品です。
初期の曲と『Liberty』の曲が、一つの作品の中で再び並びました。

活動の節目に生まれた曲を、別の編曲で届け直す。
この選曲には、初期のレパートリーを引き継ぎながら、その後に出会った歌も同じ場所へ置く意味があります。

『Lieblings』— アコースティック版のダイジェスト(2025年)

その4日後、3月8日の「hololive 6th fes.」では、「魔眼ウインク」のソロに続いて森カリオペと共演しました。
「失礼しますが、RIP♡」と「オーバード」をつなぐメドレーです。
初期の代表曲は、今度は別の歌手の代表曲と交わる場所で歌われています。
自分の曲を一人で届けるだけでなく、相手と一つの流れを作る曲としても使われていたのです。

この共演では、ルイも英詞のラップを披露しました。
前年、録音でラップへの苦手意識と向き合っていた歌い手が、翌年には他の歌手と組んだ大きなステージで、その表現を披露していました。
制作中に開いた可能性が、実際の公演へ持ち出された例として捉えられます。
歌えるものが増えることは、共演で引き受ける役割が増えることでもあるのです。

同年12月3日発売の2ndアルバム『Lapis Lazuli』は、闘いを主題にした全10曲の作品でした。
さまざまな音楽のスタイルを、その主題で一枚にまとめています。
初作で広げた表現を、今度は一つの主題のもとへ並べる構成です。
ただ、闘う姿を示すことが、強い歌だけへ絞ることになったわけではありません。

鷹嶺ルイ『Lapis Lazuli』の公式アートワーク(2025年)
鷹嶺ルイ『Lapis Lazuli』の公式アートワーク(2025年)。
画像出典:画像掲載元

12月7日の発売記念ミニライブでは、「B4N」や「抗う君への鎮魂歌」に加え、最後に「夢ができたの」が歌われました。
新作の収録曲ではないこの曲で公演を閉じたことが印象的です。
力のある歌唱と、終盤の優しく温かな表情の両方を見せた公演でした。
2024年に取り組んだ柔らかな方向性は、一枚のアルバムの中だけに留まらず、観客へ向けた歌としても続いていました。

夢だったソロライブへ、自分の声を持っていく

2026年3月の「hololive 7th fes.」では、「get lucky」でSTAGE1のソロの先陣を切りました。
大人びた表情を見せ、多人数の公演の中で、自分の曲で空気を作る役割を担っています。
初出演で「オーバード」を届けた時期から、選べる歌と公演での立ち位置が広がってきました。

「get lucky」— MV(2025年)

同年6月には、新曲「Soar」を含むEP『The LEGENDARY』が発売されました。
さらに、同年12月16日のKanadevia Hallでの1stライブ「REBELLION」も発表されています。
2026年10月時点では開催を控えている段階ですが、制作陣に繰り返し語っていたソロライブという目標が、具体的な公演になりました。

自分の歌を持つことと、それを観客の前で育てること。
ルイの活動では、この二つが続けて起こっています。
一曲との関係が、制作と公演を通して深まっていく歩みです。

曲ごとの発音や声の切り替えは、鷹嶺ルイの歌い方で詳しく取り上げています。

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