常闇トワさんの歌声は、2020年のデビューから2026年までに確実に変わっています。
ただし、低かった声が高くなった、歌唱力が単純に上がった、という変化ではありません。
最初の転機は、嫌っていた自分の声が「-ERROR」で受け入れられたことでした。
そこから「Palette」で弱さを自分の言葉にし、『Scream』で太いロックボーカルを看板へ変え、『Aster』で複数のジャンルを歌えることを示します。
さらに『SHIN』では、流行に合わせるか迷った末、ロックという原点を自分で選び直しました。
歌声の変遷を一言で表すなら、声を探していた人が、曲ごとに声を選べる歌手になった過程です。
2026年の「シルベ」は、その声が自分の物語だけでなく、アニメ作品の入口まで担う段階へ来たことを示しています。
現在の完成度だけを見るより、なぜこの声を前へ出せるようになったのかを時代順に追う方が、常闇トワさんの歌を深く楽しめます。
2020年は「かわいくない声」だと思うところから始まった
常闇トワさんは2020年1月にホロライブ4期生としてデビューしました。
小悪魔らしい華やかな姿に対し、実際の声は低く、ハスキーな質感を持っています。
今では分かりやすい個性ですが、本人は当初、その声を好きになれませんでした。
女性アイドルに期待される高くかわいらしい声とは違うと感じ、自分の見た目にも合わないのではないかと悩んでいたのです。
デビュー直後の歌唱は、完成した音楽活動の提示というより、自分の声がどこで生きるのかを探す時期でした。
4月に公開したnikiさんの「brilliant」など、強い感情を持つ曲を通じて、低く太い音色が曲の重さと結びつく場所を試しています。
決定的だったのは、同じnikiさんの「-ERROR」でした。
予想を超える反響があり、特に声を褒める言葉が多かったことで、本人は自分の声に自信を持てるようになったと振り返っています。
歌い方を変えたから受け入れられたのではありません。
変えたいと思っていた声が、そのまま誰かに必要とされたことが出発点になりました。
2021年のPaletteで、強い声の中に弱さを置いた
2021年に発表した最初のオリジナル曲「Palette」は、常闇トワさん自身が作詞に参加した重要な一曲です。
ここで初めて、声の強さだけでなく、活動の中で抱えてきた迷いや願いを自分の言葉として差し出しました。

低く太い声は、それまでの不安を打ち消すための鎧ではありません。
強くなくてもよいと認めながら、それでも遠くへ進みたいという矛盾を抱えた声として使われました。
後のライブで「Palette」が特別な位置を占め続けるのは、初のオリジナル曲だからだけではないでしょう。
自分の声に合う曲を見つけた段階から、自分の声で何を言うかを選ぶ段階へ移った記録だからです。
ファンの記録でも、この曲は単なるパワーボーカルの見本ではなく、声の揺れや感情、最後の伸びまで含めて受け止められています。
「強い声の人」という評価に、弱さを隠さず届けられる人という意味が加わった時期でした。
2022年のScreamで、声に合うロックが自分の看板になった
活動2周年に発表した1st EP『Scream』には、「Palette」に加え、「FACT」「マイロア」「AKUMA」などが収録されました。
作品名の通り、声の強さを正面から押し出す曲がそろっています。
この頃までに、常闇トワさんは自分の歌声を、広い音域と太い高音を持つ声として説明できるようになっていました。
「自信がない声」から「力強い曲を作れる声」へ、自己評価の言葉そのものが変わったのです。
一方、何でも得意になったわけではありません。
高くゆっくりした曲は歌えるものの、早口と高音が同時に来る曲は苦手だとも率直に話しています。
弱点を隠さず、苦手なジャンルも練習する。
この姿勢があったため、『Scream』は完成宣言ではなく、ロックを軸に次の課題へ進む作品になりました。
同年には天音かなたさんとのORIOで、優しく歌う言葉と、前へ押す言葉のメリハリも意識しています。
一人で太く歌うだけでなく、別の声と組んだ時に役割を変える経験も増えていきました。
2023年のAsterは、得意曲を増やすより「別の自分」を増やした
1stアルバム『Aster』は、ロック、バラード、テクノ寄りの楽曲など、あえて方向を一つにそろえない作品でした。
本人の狙いは、いろいろな常闇トワを知ってもらうことにあります。
リード曲「ANEMONE」は、その多彩さの中で、太い音を強く当てられる自分の強みを最も端的に示す曲として選ばれました。
高音が細くならず、激しい音にも負けない声が、アルバム全体へ一本の軸を通しています。
同時に「タイダナワンダー」のようなかわいらしい曲や、「二人三脚」のように相手との関係を歌う曲も収録されました。
低くハスキーな声を一種類のかっこよさへ閉じ込めず、だるさ、友情、切なさまで運べることを試しています。
その直後の1stソロライブ「Break your ×××」は、アルバムで増やした声を生バンドの前で一つの公演にまとめる場になりました。
全曲オリジナルで構成し、「FACT」の力強さから「Cry Out」の長い声、「Palette」の感情までを一人でつなぎます。
ここで変わったのは、歌えるジャンルの数だけではありません。
曲が変わるたびに別の声を出しても、ライブ全体では一人の物語として成立させる力が育ちました。
常闇トワさんの現在の歌い方・発声を先に読むと、『Aster』期に確立した高音の太さと、その後の声色の広がりを分けて理解できます。
2025年のSHINで、流行より自分の原点を選び直した
2ndアルバム『SHIN』を作る時、常闇トワさんは方向性に悩みました。
短い動画で映えるダンス曲や、かわいさを前へ出すアイドル曲が広がる中、それに合わせた方が届きやすいのではないかという迷いがあったからです。
最終的に選んだのは、昔から好きだったロックへ戻ることでした。
これは『Scream』と同じ場所へ後退したのではなく、多彩な『Aster』を経た後でも、自分の中心に何があるかを選び直す決断です。

ボーカル面でも、大きな変化がありました。
曲を受け取った時点で、どこにどんな感情や技術を置くかを自分で想像し、その解釈が作り手やスタッフと一致する機会が増えたと語っています。
デビュー時には、自分の声が正しいのか分からなかった人が、今度は曲の完成形を声で先回りできるようになったのです。
これは音域が伸びたという変化より、歌手としてずっと大きな成長でしょう。
それでも「バズビバザヴ」では、地声と裏声、エッジ、複数の人物像が短い間に入れ替わり、何度も録り直しました。
得意な太い高音へ逃げず、まだ難しい歌い方に取り組める余裕が生まれています。
有明アリーナで行われた2ndライブ「SHINier」では、定番曲を序盤から出し、その先に『SHIN』の新しい声を並べる構成が受け止められました。
過去の切り札を最後まで温存しなくても、新作で公演を進められるだけの歌が増えたということです。
2026年のシルベで、歌声が作品世界の入口になった
2026年の「シルベ」は、テレビアニメのオープニングテーマとして発表されました。
常闇トワさんにとって、全国流通シングルという形で作品の顔を担う一曲です。
オリジナル曲は、自分自身やファンとの関係を深く書けます。
アニメ主題歌では、それに加えて、まだ本人を知らない視聴者を数十秒で作品世界へ導かなければなりません。
『SHIN』で自分の中心を選び直した直後に、外部作品の入口を任されたことには意味があります。
自分らしさを薄めて広く合わせるのではなく、すでに確立した声を別の物語へ接続できる段階に進んだからです。
2020年には、姿に合わないと感じていた低い声でした。
6年後、その声はアニメの第一印象を作る看板になりました。
変わらなかったのは、上手さより「気持ちが先」という順番
作品と歌い方が増えても、常闇トワさんが大切にしている順番は大きく変わっていません。
本人は早い時期から、気持ちを大切にし、自分が歌っていて気持ちよいかを重視すると話していました。
『Palette』では弱さを自分の言葉へ変え、「ANEMONE」ではありのまま生きたいという意思を太い声へ乗せました。
『SHIN』では、流行に迷った末、自分が本当に好きなロックへ戻っています。
技術が増えたため感情を表せるようになった、と一方向には言えません。
伝えたい感情を先に置き、それに必要な技術を一つずつ増やしたから、声の太さが型にならずに済んだのです。
まとめ
常闇トワさんの歌声は、2020年から2026年にかけて、自信のない低い声から、多くの物語を選んで演じられる声へ変わりました。
「-ERROR」で声を受け入れられ、「Palette」で自分の言葉を持ち、『Scream』でロックの太さを看板にし、『Aster』で別の自分を増やしています。
『SHIN』では、流行よりロックという原点を選びながら、地声系の声、裏声、エッジ、人物ごとの声色まで使うようになりました。
そして「シルベ」で、その声はアニメ作品の入口を担うところまで届きます。
一番大きな変化は、高い音が出るようになったことではありません。
自分の声が正しいか迷っていた人が、曲に必要な声を自分で選び、作り手と共有できる歌手になったことです。
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