テン/TEN(WayV)の歌唱変遷|歌い直した「Birthday」から、声の構成を自分で決めるまで

2026年の「OUTWEST」「IRL」期に公開されたTEN シンガー
2026年の「OUTWEST」「IRL」期に公開されたTEN

TENのソロ曲は、作品が変わると歌う人物まで変わったように感じられます。
明るいポップロックから、低い声と裏声を使うR&Bへ。
妖しい人物を演じる歌から、自分の経験を言葉にする歌へ。
その変化の途中には、録音をやり直した経験や、新しい言語で歌う難しさがありました。
曲を受け取って表現を探すだけでなく、どこをラップにし、どこを歌にするかまで提案するようになった歩みをたどります。

2017〜2021年、ソロで試していた違う顔

TENは、2017年の「Dream In A Dream」に続き、2018年に「New Heroes」を発表しました。
後者は、電子音を中心にしたダンス曲です。
音楽配信企画のSM STATIONを通じて、グループの一員としての歌とは別に、一人の表現を届ける場を持っていました。

「New Heroes」では、TENの素直な歌を、背後で重なる声が大きく包みます。
特にサビでは、その重なりが曲の広がりを支えています。
主旋律を担う本人の声と、周囲に組まれた響きの関係が印象を作る曲でした。

2021年の「Paint Me Naked」では、明るく自由なポップロックへ進みます。
本人は、この時点の自分をよく表す曲だと説明していました。
衣装や振り付けにも、自分の感覚を反映させています。
そのときの自分に似合うものを選ぶ姿勢が、見えてきます。

一方、TENは後に「Birthday」を、最初のソロ曲「Dream In A Dream」の別の発展形としても捉えていました。
前の曲を切り捨て、まったく新しい人へ変わるわけではありません。
過去に試した表現も残したまま、その時点の感情に合う形へ組み替えていくのです。

2022年「Birthday」期のTEN
2022年「Birthday」期のTEN。
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2022年、「Birthday」は一度で歌い方が決まらなかった

「Birthday」の曲自体は、「Paint Me Naked」の頃に受け取っていました。
しかし、当時は気分が合わず、すぐには発表しませんでした。
中国で曲の一部を披露した後、韓国へ戻って取り組みたい気持ちになったといいます。
気持ちが追いつくまで、時間が必要だったのです。

録音でも、最初の仕上がりには納得できませんでした。
TENはR&Bのリズムへの乗り方を聴き直し、再録音しています。
力が入っていた最初の回から、歌詞を感じながら、もっと落ち着いて歌う方向へ変えたのです。
ジャンルが変わると、歌う感覚も変える必要がありました。

この経験は、声の変化を考えるうえで大切です。
高い音が増えたかどうかより先に、同じ曲の中で、どんな時間の流れを作るかを探していた。
明るい曲で前へ進む歌と、言葉をゆっくり引き延ばす歌では、必要な身の置き方が違います。
「Birthday」の落ち着いた表現は、最初から迷わず出てきたものではありませんでした。

2024年、一曲の人物から六曲の異なる表情へ

初のソロミニアルバム『TEN』では、自分で設けていた制限を越えようとしています。
以前は、用意された計画の中で自分をどこまで出せるかを考えていたといいます。
今度は一つの作品の中に、異なる性格の曲を並べる。
一曲ごとに違う顔を見せてきた試みを、アルバム全体へ広げた段階でした。

「Nightwalker」の録音では、演技をするように歌おうとしました。
人を惑わせる人物と、深夜に姿を変える研究者という映像の設定があり、その役を声でも表したのです。
選曲や構想には、およそ一年をかけていました。
舞台上で踊る姿だけでなく、録音した声にも人物像を持たせています。

一方、「Lie With You」には、身近な人や今ある関係を大切にしたいという本人の感情が重なっていました。
何か別のものを探し続けるより、今の幸せへ目を向ける歌です。
同じアルバムに、作り込んだ妖しい人物と、自分の実感に近い歌が共存していました。
どちらか片方を本当のTENと決める必要はなかったのです。

Lie With You(2024年・短縮Track Video)

2025年、慣れた言語から踏み出した録音

2024年の時点で、TENは韓国語のポップバラードやR&Bバラードにも挑戦したいと話していました。
英語中心だったソロの表現を、別の言葉でも試したかったのです。

その挑戦が、翌年の『STUNNER』に入った「Butterfly」で具体化します。
韓国語のバラードを一曲通して歌うのは初めてで、発音に苦戦し、アルバム中で最も録音に時間がかかりました。
難しかった分、韓国語でバラードを歌う理解が深まったと振り返っています。

Butterfly(2025年『STUNNER』収録・韓国語原版)

本人は、このアルバムを朝から夜まで聴いてほしいと考えていました。
一日の始まりには「STUNNER」、仕事へ向かう元気がほしいときには「Enough For Me」、夜にくつろぐときには「Butterfly」。
録音では時間のかかった歌を、聴き手には落ち着ける時間として届けようとしていたのです。

『STUNNER』では、「BAMBOLA」を先行曲に選びました。
TENにとって、この曲の意外性のある構成は、新しい姿を見せる魅力でした。
出来上がった曲を順に録るだけでなく、何を最初に聴いてもらうかも考えていたのです。

同年には、日本語のオリジナル曲を六曲収めた『Humanity』も発表します。
4月の先行配信を経て、5月にCDと「Silence」のMVを届けました。
「Silence」は孤独を扱う歌です。
明るい声だけを新しい言語へ移すのではなく、妖しさや切なさも日本語の作品に持ち込んでいます。

TENは、言語が変わると感情の表し方も変わると考えています。
一つの音楽性へ統一するより、違う言語やジャンルで現れる姿を、いずれも自分として受け止める。
「Butterfly」の苦戦と、日本語作品への広がりを並べると、その考えが実際の制作につながっていたことがわかります。

2025年『STUNNER』期のTEN
2025年『STUNNER』期のTEN。
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2026年、歌う前の設計にも自分の言葉を入れる

2026年には長く所属したSMエンターテインメントを離れました。
ただし、NCTとWayVの活動は続けると本人が明言しています。
ソロの制作環境が変わったことと、グループとの関係は分けて見る必要があります。

「OUTWEST」と「IRL」では、制作の始まりから共同制作者と曲を組み立てることが、大きな変化になりました。
「IRL」は、これまでの歩みや周囲との関係を、自分の側から歌おうとする作品です。
過去を否定して別人になるのでなく、これまで見せてこなかった身近な部分を加えています。

もっとも、制作の場で最初から意見を言えたわけではありません。
TENは当初、気になる部分があっても、作家やプロデューサーへ遠慮していました。
経験を重ねると、一番をもっとラップ寄りに、二番を歌寄りにしたい、といった提案ができるようになります。
自分が歌う曲の構成を、言葉で伝えて決める段階へ進んだのです。
ただ、旋律を考えると似た発想に戻ってしまうこともあり、瞬時に別の案を出す力は、まだ学んでいる途中だと話しています。
意見を持てるようになったことで、次に磨きたい課題も具体的になっていました。

2022年にも、前年から制作の場で旋律作りを試していると話していました。
今は、自分の判断を作品へ通す範囲が広がっています。

「Birthday」では、用意された曲に合う歌い方を探し、録音をやり直しました。
「Nightwalker」では人物を演じ、「Butterfly」では言葉の難しさに向き合った。
その先では、声をどう使う曲にするかという設計にも参加しています。
TENの変遷は、違う声を出せるようになった記録であると同時に、その声の使い道を自分で決めていく過程なのです。
個々の曲での裏声やラップの働きは、テン/TEN(WayV)の歌い方で詳しく扱っています。

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