4人で歌うデビュー曲を、二年後には一人で子守唄として歌う。
エリザベス・ローズ・ブラッドフレイムの歩みには、そんな同じ曲の違う扱い方があります。
力強い高音で人を驚かせる歌手が、静かに過ごす時間にも自分の声を置いていく。
その間には、柔らかな曲を選んだ理由と、共演する声を組み立てる仕事がありました。
デビュー前から積み重ねていた、さまざまな歌
エリザベスがホロライブEnglishの「Justice」として初配信を行ったのは、2024年6月22日です。
歌、声の演技、配信での交流などを通じて活動するVTuberで、同じユニットにはジジ・ムリン、セシリア・イマーグリーン、ラオーラ・パンテーラがいます。
その年、本人はすでに長年、さまざまな歌のスタイルを学んできたと話しています。
一人で取り組むことも、仲間や教師から学ぶこともありました。
新しい名前で登場したとき、声の表現にはすでに積み重ねがありました。
初配信に続いて公開したのは、新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」を歌ったカバーでした。
自分の声を紹介する場に、日本語の曲を選んでいます。
英語圏向けの活動という枠と、歌う曲の言語は、最初から一対一ではありませんでした。
翌23日には、Justiceのデビュー曲「ABOVE BELOW」のMVも公開されます。
Nhatoが作曲・編曲、moniiが作詞を担当した、4人のオリジナル曲です。
ソロのカバーとユニットの新曲が並んでいたことは、後に同じ曲を一人で歌い直す歩みを考えるうえでも大切です。
「Blackbird」で残したかった、穏やかな時間
2024年10月には、ビートルズの「Blackbird」をカバーして配信します。
日本語のカバーに続き、英語で歌う作品を音楽配信サービスにも届ける機会になりました。
力強い歌で知られつつあった彼女が、この曲で望んだのは、くつろげる温かさでした。
ギターを弾く友人たちと過ごした時間につながる曲で、後から振り返っても笑顔になれる歌にしたかったといいます。
心地よく記憶に残る雰囲気を、配信で届ける洋楽カバーに選んだのです。
ここで変わったのは、聴き手に渡そうとする時間の質です。
驚いてもらう歌と、気持ちを落ち着けて過ごしてもらう歌とでは、同じ歌唱力にも別の出番があります。
「Blackbird」は、彼女の表現を迫力の一語で説明しきれないことを、早い段階で示す選択になりました。
共演者と歌い、歌の形を作る側にも立つ
2025年1月の「メフィスト」では、万象院ハッカと共演しています。
女王蜂の原曲を二人で歌うこのカバーで、エリザベスはプロデュースやディレクションに加え、ボーカルアレンジとデモ歌唱も担当しました。
完成した曲へ声を入れるだけでなく、どのような歌にするかを準備する側にも立っています。

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同年5月には、ネリッサ・レイヴンクロフトとの「輪舞-revolution」も公開されました。
こちらは奥井雅美の曲を二人でカバーした作品です。
異なる相手とのデュエットが、個人名義の歌に並んでいきます。
独唱なら、自分の一つの声で曲をどう届けるかが中心になります。
二人で歌う作品では、相手の声が加わったときに、曲全体がどう聴こえるかという問いも生まれます。
制作への参加とデュエットの広がりは、エリザベスを見る視点を、歌う瞬間から歌を作る過程へと広げてくれます。
画面の向こうから、大勢の前で歌う舞台へ
2025年8月には、Justiceの4人が順に3Dモデルのお披露目配信を行います。
エリザベスのお披露目は、日本時間8月2日でした。
声とともに全身の動きで見せる舞台が、活動の中でより大きな位置を占めていきます。

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同じ月に公開された「Fallen Angel」のスタジオライブでは、歌唱と振付、その監修まで本人が担当しています。
もとの曲はMitsunori Ikedaによる、Aimee Bを歌い手に迎えた楽曲です。
エリザベスはそのカバーで、声と動きの両方から見せ方に関わりました。
ボーカルアレンジを担った録音作品と、身体の動きも組み立てるスタジオライブ。
どちらも、出来上がった場所で歌うだけではなく、歌が届く形を自分で考える仕事です。
歌い手として関わる範囲が、耳に届く音から、目に映る表現へも広がりました。
同月23日と24日、ニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで「All for One」が開かれました。
Justiceは「ABOVE BELOW」を歌い、実際の観客を前にした初めての3Dステージに立ちます。
エリザベスは「Stellar Stellar」の独唱に加え、ネリッサ、アユンダ・リスとの「ALiCE&u」にも参加しました。
ソロ、4人のユニット、3人での共演。
一つの公演の中で、歌を担う人数も相手も変わっていきます。
デビュー時から持っていた声を、異なる組み合わせの中で届ける機会が増えたのです。
2026年3月の「hololive 7th fes.」でも、Justiceは「ABOVE BELOW」を披露しました。
エリザベスの高音や、旋律に装飾を加えるフェイクが、4人の歌の強い印象につながっています。
柔らかな作品を出した後も、力強い歌は彼女の舞台に残っていました。
同じ公演で選んだソロ曲は、水樹奈々の「DISCOTHEQUE」です。
華やかさと力強さに色気も交わる歌として受け止められました。
歌う人数を変えるだけでなく、曲ごとに別の表情を見せる場にもなっています。
ネリッサとの関係も、録音作品から舞台でのデュエットへ進みます。
2026年6月、二人だけで本格的に舞台に立つのは、次の「Serendipity」が初めてになるとネリッサが語っていました。
実際に7月4日のロサンゼルス公演で、二人は「残酷な天使のテーゼ」を披露します。
「輪舞-revolution」を録音した組み合わせが、今度は観客の前で、歌とダンスをともに見せる組み合わせになりました。
録音で重ねた声を持つ相手と、同じ舞台を作る機会を得たのです。
二年後、「ABOVE BELOW」は子守唄になる
2026年9月、エリザベスは「ABOVE BELOW」を「Music Box Lullaby Version」として発表します。
R3 Music Boxによるオルゴールの伴奏を用い、自ら歌唱、ミックス、プロデュースを担当した版です。
4人のデビュー曲が、一人で歌う子守唄へと姿を変えました。
元の曲を別の新曲へ置き換えたわけではありません。
同じ曲の伴奏と歌い手の構成を変え、その曲に過ごしてもらう時間を作り直しています。
自分が参加した曲を、別の距離からもう一度扱う仕事といえます。
二つの「ABOVE BELOW」の間には、声を大きくする、音域を広げるという物差しでは捉えにくい変化があります。
仲間とともに存在感を示す歌が、一人の声で穏やかな時間を作る歌にもなった。
しかも同じ年の舞台では、曲の力強い面も引き続き歌っていました。
エリザベスの歩みは、以前の歌い方を捨てて次へ進む話ではありません。
すでにある声と曲に、新しい役割を増やしてきた歩みです。
その歌の中で、強い声、柔らかな声、重ねる声がどう選ばれているかは、エリザベス・ローズ・ブラッドフレイムの歌い方で掘り下げています。

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