原嘉孝の歌い方|感情で変える声と、歌を前へ動かすラップ

2025年3月掲載のインタビュー写真/原嘉孝 シンガー
2025年3月掲載のインタビュー写真/原嘉孝

原嘉孝の歌い方を考えるうえで、手掛かりになるのは「Believers」です。
本人はこの曲で、悩み苦しむ気持ちと、強く決めた意志を、声で使い分けました。
一方、timeleszではラップの担い手としても存在感を示しています。
感情を描く声、曲を動かすラップ、他の人へ渡す歌。
それぞれの場面で、原の声が何をしているのかを見ていきます。

「Believers」は、一曲の中で声の表情を変える

「Believers」は、仲間への信頼と、自分の中の葛藤を扱う曲です。
原は録音の際、苦悩を表す部分と意志を表す部分を区別し、声の使い分けを考えたと説明しています。
ここでの軸は、単に弱く歌うか強く歌うかという二択ではなく、どの気持ちを声に乗せるかにあります。

迷いを抱える人が決意を口にする時、その言葉の意味は、初めから迷いのない人が話す場合とは違います。
曲の中に両方の気持ちを残すことが、決意の重さにもつながる。
原の説明から読み取れるのは、声を一つの表情に固定せず、心情に合わせて選ぶ姿勢です。
ここでは声区の名称を当てはめるより、どの感情を声に乗せたかが、本人の歌の作り方を理解する手掛かりになります。

この曲では歌い出しも原が担当しています。
ドラマの主演者が、自分のグループの主題歌を最初の声で導く。
共演者にも歌声への手応えを伝えていたというエピソードからは、役を演じることと歌うことが、本人の中でも近いところにあったと分かります。

2026年3月7日『横浜ネイバーズ Season2』完成報告会の原嘉孝(右)と大西流星/撮影:大城有生希
2026年3月7日『横浜ネイバーズ Season2』完成報告会の原嘉孝(右)と大西流星/撮影:大城有生希。
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ラップでは、隣の歌い手を動かすほどの個性を出す

『FAM』の制作で、原はラップを担当することが多く、フェイクを入れることもあったと話しています。
ここでいうフェイクは、旋律に変化を加えるような歌のアレンジです。
決められた歌を受け持つだけでなく、自分の声で遊べる部分にも意欲を見せていました。

寺西拓人は録音で原のラップのノリに引かれ、次の自分のパートもそれに合わせようとしました。
しかし、スタッフが求めたのは寺西自身の歌い方でした。
同じ曲でも、原のラップとその後の声の違いを残すことに意味があったのです。

ラップでは、言葉をどの拍に置くか、どれくらいの長さで切るかが、歌の勢いを大きく左右します。
伸ばした旋律だけに注目する時とは、聴くポイントが変わります。
原のラップを追う時も、一人のパートだけでなく、次のメンバーに渡る瞬間まで含めると、声の個性が曲の中でどう働くかを捉えやすくなります。

「We’re on the Top」は、佐藤勝利、篠塚大輝と歌う三人の曲です。
原は、客席が手拍子で参加する部分と、ダンスを見せる部分のメリハリも大切にしました。
ラップの勢いを聴かせる曲にも、客席が応じる場所がある。
歌と動きが、聴き手を含む一つのリズムを作ります。

「Rock this Party」では、身体でリズムを取る

「Rock this Party」の録音風景では、原が身体を揺らし、手でもリズムを取りながら歌う姿が紹介されました。
ヘッドホンで音を受け取り、身体を動かしながらマイクへ向かう。
録音する声と、リズムに反応する動きが一緒にある場面です。
スタッフも、その歌に良い反応を返していました。

録音ブースの中でも、歌う部分だけを切り取って処理するのでなく、続いているリズムに身体で反応する。
この場面は、原の歌を音程の並びだけで捉えないための手掛かりになります。
声を出す瞬間と、そこへ入るまでの拍の流れを一緒に考えると、ラップや短いパートも、一曲の動きの中に置いて見ることができます。

「Rock this Party」/2025年のシングル音源。

独唱から次の声へ――「4分間だけ時間をください」

「4分間だけ時間をください」のMVでは、原の独唱から始まり、橋本将生の語りとシャウトへ渡ります。
そこから各メンバーの歌を経て、全員で歌うサビへ進む。
最初の原の声は、一人で完結する見せ場であると同時に、八人の歌が始まる入口でもあります。

「4分間だけ時間をください」/『MOMENTUM』収録のスタジオ音源。

「Believers」では一人の中の感情を分け、こちらでは異なる人の声が順に重なっていく。
同じ歌い出しでも、続く歌との関係が違います。
誰が一番強く歌うかという聴き方から少し離れると、原の独唱が次の声を迎える働きにも気づけます。

2023年『天翔ける風に』の原嘉孝と志士たち/撮影:藤井光永
2023年『天翔ける風に』の原嘉孝と志士たち/撮影:藤井光永。
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熱さを保ったまま、歌い続けるための発声

原は劇場の大きさを意識して声の出し方を変えると話しています。
歌の多い『天翔ける風に』への出演前にも、役の勢いを保ちつつ、最後まで持続できる発声を課題にしていました。

発声を考える時には、ある瞬間の迫力と、公演を通じて必要な歌を届けることを分ける視点が役立ちます。
一音で印象を作るだけでなく、次のフレーズや次の場面へ声をつなぐ必要があるからです。
原の課題意識は、その持続に向いていました。
「声が強い人」とだけ捉えると見えにくい、歌うための準備の部分です。

音を渡す課題では、正確さとつながりが別々に問われる

2026年3月の『タイムレスマン』では、「Pretender」を音階ごとに分担して歌う企画に挑戦しました。
原は練習中に二度、担当部分を変更することになりながら、本番では大きく乱れずに対応しています。
ただし、チームは音のつながりや表現の面で、対戦したアカペラグループに及びませんでした。

この課題では、自分の音を正しく出すことに加え、他の人の音と連続して一曲に聞こえることも求められます。
音程を取る力と、声を受け渡す力は、重なりながらも別の課題です。
原の急な交代への対応と、チームとして残った難しさを一緒に見ると、グループで歌うことの複雑さが分かります。

実際、2025年の『バナナサンド』で「ひまわりの約束」を歌った時には、対抗するハーモニーにつられる場面もありました。
別の旋律に惑わされず歌い続けるゲームと、音を分担して完成させる企画では、求められることが違います。
どちらか一回の結果だけで、原の歌唱全体を決めつけることはできません。

客席へ投げる声も、一方通行にしない

2026年のツアーで原が大切にしていたのは、客席の反応を見て、呼びかけの言葉を変えることでした。
歌詞を歌う声とは別に、その場で客席を巻き込む声も担っています。
大きな声を出せば役目を果たせるのではなく、相手がどう受け取ったかを見ながら返す言葉を選ぶのです。

原嘉孝の歌い方は、熱意を声に乗せながら、その熱意の表し方を場面に合わせるところに特徴があります。
「Believers」では心情を分け、ラップでは自分のノリを出し、歌の受け渡しでは他の声との関係を作る。
声の力だけを見るより、誰の次に入り、何を伝え、どこで次へ渡すのかに目を向けると、原の歌の輪郭がはっきりしてきます。

声の役割が広がった経緯は、原嘉孝の歌唱変遷でたどっています。

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