原嘉孝の歌の歩みには、自分の声をどこで生かすかを探してきた過程があります。
舞台で歌う機会を求め、歌う量が増えれば声の出し方を課題にし、timeleszではラップを担う。
2025年の加入は、肩書だけでなく、歌の中で引き受ける役割が変わる転機でした。
舞台での試行から「Believers」へ、その変化をたどります。
「Rock this Party」/2025年のシングル音源。
2019年、自分から歌う場面を求めた
2019年の初単独主演舞台『THE BANK ROBBERY!〜ダイヤモンド強奪大作戦〜』には、当初、原が歌う場面がありませんでした。
そこで演出の小林顕作に頼み、日本公演のための歌を加えてもらいます。
大きなミュージカルの舞台へ進みたいという希望を、目の前の作品の中で行動に移したのです。
追加された歌には、役の事情だけでなく、歌う出番を欲した原自身の思いも織り込まれました。
主演だから歌の見せ場が用意されていたのではなく、自分から求めて作られた場面だった。
後の歌唱活動を振り返る時、この積極性は見逃せません。
2023年、歌う量が増えて見えてきた課題
2021年の『BARNUM』を経て、2023年には『天翔ける風に』の志士ヤマガタ役へ。
原は出演前、これまでにない歌の量への不安を話しています。
血気盛んな人物を歌で演じながら、最後まで声を持続させることが、新たな課題になりました。
先輩から声のコントロールを学びたいとも話しました。
これは上演前の課題で、習得済みという発言ではありません。
実際の舞台では、「ええじゃないか」「走り続ける者たちへ」といった志士たちの場面が、作品の熱を支えました。
主演の珠城りょうも、その集団のパフォーマンスを高く評価しています。
原はその中心で、眼力と力強い動きを印象づけました。
歌だけを切り離して見せるのでなく、人物の勢いを身体ごと舞台に出す役だったのです。
歌いたいという願いが実現すると、今度は、役を演じながらどう歌い続けるかが問われます。
出番を手に入れることと、その出番を最後まで成立させること。
二つの時期を並べると、向き合う課題が具体的になっていったことが分かります。

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2025年、timeleszでラップを引き受ける
2025年2月5日の最終審査では、候補生たちが「Rock this Party」と「RUN」を披露しました。
「RUN」は既存メンバーが客席から見守る中、候補生8人で歌った曲です。
役柄を演じる公演を重ねてきた原にとって、自分がこのグループに必要な存在だと示す機会になりました。
2月15日付でtimeleszへ加入した後、アルバム『FAM』の制作ではラップを任される機会が増えます。
原自身も、菊池風磨とともにラップを担う存在として認められたいと考えていました。
歌う機会の増加に合わせ、レッスンへ通う回数も増やしています。
経験のある舞台俳優が、その経験だけで新しい仕事をこなしていたわけではありません。
その声は、隣のパートを歌う寺西拓人にも刺激を与えました。
アルバムの録音で、自分の前に入る原のラップを気に入った寺西が、そのノリに合わせて歌うと、スタッフから本人らしい歌い方へ戻すよう求められたのです。
原の色は、それだけ別の歌い手にも影響を与えるものでした。
加入直後の「Rock this Party」の録音風景には、八人でマイクを囲む場面もあります。
原が個性的な歌い口で歌い始めると、そこは松島聡の担当だと周りから声がかかり、本人も松島へ譲りました。
完成した歌割りだけでなく、冗談も交わしながら互いの声を受け止める、制作途中の関係が見える場面です。
ここで変わったのは、歌う場所だけではありません。
舞台では一つの役を歌や芝居で担い、グループでは一曲の中で他の声と並びながら、自分の受け持つ部分を際立たせる。
ラップという役割が増えたことで、原らしさを置く場所も具体的になっていきました。
曲の受け取り方にも、本人が語る変化があります。
舞台に立ち始めた頃は、小劇場に通い、俳優の動きの理由を考えてメモを取っていた原。
2025年には、理屈で観察することに加え、自分の心を動かす経験も大切だと話しています。
そうして感情の引き出しを増やすことが、新しい役や曲の解釈を深めると考えていたのです。
表現の仕方を外から学ぶだけでなく、何を感じて歌うかも準備していました。

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「Believers」で、演じることと録音がつながる
2026年には、ドラマ『横浜ネイバーズ Season2』の主題歌「Believers」で歌い出しを担当します。
自身の主演作を自分たちのグループの歌で支えることは、原が目指していたことでもありました。
完成報告会では、その歌声について共演者へ話を向けるほど、曲への手応えを見せています。
原が演じた刑事・岩清水欽太は、正義をめぐる葛藤を抱える人物です。
「Believers」の録音では、その苦しみと強い意志を、それぞれ異なる声で表すことを意識しました。
役の心情を考える仕事と、一曲の声を選ぶ仕事が、同じ作品の中で結びついた例です。
ラップを任されるようになったからといって、表現がその一方向に固まったわけではありません。
一つの感情を最後まで押し通すのでなく、揺れる気持ちも歌にする。
「Believers」は、原の歌を担当パートの種類だけでは説明しきれないことを示しています。
2026年、三人の曲と客席への声に広がる
「4分間だけ時間をください」のMVでも、原の独唱から、橋本将生、そして他のメンバーへと歌が渡ります。
ラップの担当が増えた翌年には、こうして旋律を歌い、グループの歌の入口を作る姿も見られました。
「4分間だけ時間をください」/『MOMENTUM』収録のスタジオ音源。
同年の「We’re on the Top」では、佐藤勝利、篠塚大輝との三人で、韓国でのダンスの経験を作品へ持ち込みました。
原は、三人の動きを合わせる練習に時間をかけたことに加え、客席が手拍子で加われる部分も作ってもらったと説明しています。
見せる場面と参加してもらう場面を、一曲の中で組み合わせたのです。
7月2日の横浜アリーナでも、このユニット曲は力強い歌とダンスを組み合わせた場面になりました。
一方で、8人が歌う「Love Letter」では柔らかな声の重なりを聴かせています。
これはグループ全体の対照ですが、その中に原がいることも大切です。
一曲ごとの立ち位置を変えながら、同じ公演を作っています。
この頃、原は二年目になって、客席を盛り上げる声にも役割分担ができてきたと話しました。
用意された進行を守るだけでなく、実際の反応を見て呼びかける言葉を変える。
自分の声を、客席とグループをつなぐためにも使うようになっていたのです。
声を届ける役割が増えてきた
原嘉孝の歌には、舞台で重ねた経験と、グループで得た役割がつながっています。
歌う場面を求めた時期があり、歌う量と声の持続を課題にした時期があり、加入後にはラップという持ち場が増えました。
さらに、役の葛藤を録音の声に映し、ライブでは聴き手の反応へ言葉を返す。
声の役割が増えるたびに、準備の仕方と表現の選び方も変わっています。
その積み重ねの中に、現在の原の歌があります。
曲ごとの声の使い分けは、原嘉孝の歌い方で掘り下げています。

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