HAN(Stray Kids)の歌い方|発声の使い分けと、ざらつきに宿る力強さ

HAN(Stray Kids)(2024年掲載の写真) HAN(Stray Kids)
HAN(Stray Kids)(2024年掲載の写真)

HANの発声と声の質感を、本人の言葉と歌唱への批評から見ていきたい。

HAN「Hold my hand」(2024年)のSKZ-PLAYER公式映像。

歌とラップでは、発声が少し違う

本人はW Koreaの取材で、ラップと歌では発声が少し異なると説明している。
両者を行き来する場面で、声の印象がどう変わるかに注目したい。

ラップの先にも、やりたい音楽がある

歌もラップもできる、という紹介だけでは、HANが両方に取り組む理由までは見えてこない。
2022年の「リムジンサービス」での発言を伝えたNewsEnによると、本人は、ラップを始める前から歌うことが好きだったと話している。
その後ラップを主に担うようになっても、将来作る音楽をラップだけに限るつもりはなかった。

歌を交え、ロックやジャズにも取り組みたい。
そのために自分ができることを増やそうと、歌の練習にも力を入れたという。
ここでは、ボーカルがラップの合間を埋める役割ではなく、作りたい音楽を実現するための手段になっている。

同記事は、歌では飾りすぎない声や澄んだ高音、ラップでは攻める表現と抒情的な表現の両方に注目している。
速さや高さを競う見方から少し離れると、HANが曲の気分に合わせて声を選ぶ意味が分かりやすい。
強い言葉を押し出す曲もあれば、旋律で気持ちを運ぶ曲もある。

「Hold my hand」のざらつきとエネルギー

The Honey POPは、2026年にHANの歌唱を振り返った記事で、「Hold my hand」の声が持つロックとの相性を評価している。
そこで挙げられたのが、感情、ざらついた質感、エネルギーだった。

この曲では、声の粗さが生む力強さに耳を向けてみたい。

同曲を取り上げたKPOPREVIEWEDは、ラップの流れと、サビで広がる歌声の対比を挙げている。
ギターが鳴る中でラップが勢いを付け、サビでは旋律を歌う声が曲を押し上げる、という捉え方だ。
一曲の中で役割を変えながら、熱量をつないでいく構造に注目できる。

同レビューが面白いのは、終盤では歌声にラップの声を思わせる質感が現れ、二つの表現が重なると述べている点だ。
歌とラップを、完全に別々の声として聴くだけではない。
切り替わるところと、近づくところの両方を追うと、HANの声の使い方をより細かく楽しめる。

ざらつきも、曲全体に一様に付けられた印象として扱うより、どこで目立つかを考えたい。
なめらかな部分との違いがあってこそ、粗さが熱や切実さとして届く場合がある。
音程を歌う場面にもラップに通じる勢いが残る、という聴き方が、この曲には合っている。

「Alcohol-Free」を、別の感情を持つ歌へ

「リムジンサービス」では、ロックの力強さとは違う表現も見せている。
Soompiが紹介したTWICE「Alcohol-Free」のカバーでは、テンポと雰囲気を変え、自分で作ったラップを加えていた。
元の歌をそのまま再現するだけでなく、自分の言葉と歌い方を入れる選択である。

番組の司会を務めるイ・ムジンは、ボサノバの曲をバラードとして捉え直した点を評価している。
歌詞を書いて考えを加え、より感傷的な表現へ向かう意図を受け取ったという。
この例では、強い声を足すこと以上に、伴奏や速さとの関係を変えることが、歌の印象を動かしている。

同じ旋律でも、どんな時間の流れの中で歌うかによって、言葉の受け取られ方は変わる。
HANのカバーを知るときは、声の似せ方だけでなく、原曲のどんな気分を残し、何を自分の表現に変えたのかも考えてみたい。
歌とラップの両方を持つことが、編曲の発想にもつながっている。

HAN(Stray Kids)(2024年掲載の写真)
HAN(Stray Kids)(2024年掲載の写真)。
画像出典:画像掲載元

短いアカペラでも注目された声の質感

別の例が、2022年の「リムジンサービス」で披露した、ONE OK ROCK「We Are」の短いアカペラ歌唱だ。
同じThe Honey POPの記事では、この場面のコントロール、力強さ、ざらついた声を評価している。

HAN出演の「リムジンサービス」(2022年)。
「We Are」は番組内の短いアカペラ歌唱。

伴奏のある曲と無伴奏の歌唱を、声の質感に注目して聴き比べたい。

マスクの舞台で選んだ、旋律のある二曲

歌声そのものを聴いてもらう場として、2019年の「覆面歌王」への出演もある。
Soompiの当時の記事では、最初にポール・キムの「Me After You」をデュエットし、その後、DEANの「D(half moon)」を歌いながら正体を明かしたと伝えられている。

本人は、一人で舞台に立つことへの強い緊張も語っていた。
その言葉を踏まえると、後年の堂々とした姿だけから、もともと何でも楽にこなせたと考えることはできない。
グループのラップで知った人に、旋律を歌う自分を届ける機会でもあった。

この二曲と「Hold my hand」を並べると、HANに耳を向ける入り口を一つに限る必要はないと分かる。
ロックでの粗い質感にひかれたら、別の曲調の中では何が声の個性として残るのかも探してみたい。

メンバーの声を想像して、曲を作る

Rolling Stone UKの個人インタビューでHANは、曲作りの段階で、Stray Kidsのメンバーの声を思い浮かべる楽しさを話している。
声は、完成した曲へ最後に当てはめるものではなく、曲を考える途中から存在している。

しかも、実際に歌われたものが想像と違っても、それぞれのメンバーが自分の表現を持ち込むことで、良い結果になるという。
自分の中にある一つの歌い方へ、全員をそろえようとしているわけではない。
各パートの声に違いがあることを、曲の魅力につなげている。

この考え方は、HAN自身の歌を聴くときにも役立つ。
彼のパートだけを取り出すのに加え、その前後の声から何が変わるかを追ってみる。
声の質感や言葉の勢いの差が、曲の展開をはっきりさせることもあるからだ。

言葉と旋律を、自分の表現として組み立てる

PAPERが取材した3RACHAの制作では、バンチャンが主にトラックの編成を担い、チャンビンとHANが言葉や旋律を考える流れが紹介されている。
HANは全体の組み立てにも関わり、「Chill」では短時間でデモを形にしたという。
ただし、制作が速いことと、歌が簡単であることは同じではない。

本人は、以前は考えがまとまらないこともあったが、メンバーとアイデアを共有する中で、制作が進めやすくなったと話している。
一人の声でできることを増やす一方で、他の人の表現も受け取り、曲としてまとめていく。
歌う人と作る人の視点を行き来するところにも、HANらしさがある。

ラップから歌へ移る声、ロックの中で熱を増す声、曲の雰囲気を変えるカバー。
それぞれを別の特技として眺めるだけでなく、その曲で何を伝えたいのかを軸に聴くと、声の選択が一つにつながってくる。

歌に向き合ってきた歩みは、HAN(Stray Kids)の歌唱変遷でもたどっている。

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