ジョナサン・デイヴィス(Korn)の歌声はどう変わった?感情を放つ歌から、声を重ねる『Requiem』へ

『Follow the Leader』を振り返る2018年の取材に掲載されたKorn(中央がジョナサン・デイヴィス/写真:Mick Hutson) シンガー
『Follow the Leader』を振り返る2018年の取材に掲載されたKorn(中央がジョナサン・デイヴィス/写真:Mick Hutson)

ジョナサン・デイヴィスの歌は、激しく声を放つことと、声を細かく作り込むことの両方で変わってきました。
Kornの初期から『Untouchables』、ソロ作『Black Labyrinth』、2022年の『Requiem』へ。
その歩みをたどると、感情の生々しさを残しながら、旋律や録音に使える手段を増やしてきたことが分かります。

1990年代、自分の言葉と声を引き受ける

Kornに入る前、Sexartで歌っていた頃のジョナサンは、自分の歌に自信を持てなかったと振り返っています。
他のメンバーに歌う内容や歌詞を決められることもありました。
Kornでは、その関係が変わります。
自分のやりたいことを歌へ持ち込めるようになり、歌い手として開かれていったというのが、本人の捉え方です。
初期の変化は、自分の言葉を自分の判断で歌えるようになった点にありました。

1994年のデビュー作『Korn』では、いじめや傷ついた経験が歌の中心になりました。
「Daddy」の終わりには、録音中に泣く声も残っています。
ヘッドは後年、ジョナサンが、ライブで弱い立場の客をいじめる人々に腹を立てていたと話しています。
歌の激しさは、強い人間を演じるためだけのものではありませんでした。
傷つく側の感情を声にするという方向が、早くから存在していたのです。

1998年の『Follow the Leader』では、録音相手との関係も変わります。
それまで歌を支えたロス・ロビンソンがいないことに不安を覚え、ジョナサンは彼を呼び戻しました。
しかし、身体的な痛みを与えて感情を引き出す方法には、もう頼りたくないと感じます。
数回の歌録りの後は、トビー・ライトと進めました。

同作の「Freak on a Leash」では、囁くような冒頭と、途中のスキャットが大きな特徴になります。
本人によれば、仲間との演奏中にビートボックスを混ぜたことから生まれた声でした。
言葉で訴える歌に、リズムそのものを動かす声が加わっています。

2002年『Untouchables』、歌を磨く時間と要求が変わる

『Untouchables』で、プロデューサーのマイケル・ベインホーンは、歌に厳しい要求を出しました。
出来に納得しなければ、帰るよう告げることもあったといいます。
ジョナサンには傷つく経験でしたが、後には、もっとできると見込んで押し上げてくれたと評価しています。
歌唱指導を受け、レッスンも重ねました。
本人が、歌い手として開花し始めた時期に挙げる作品です。

かかった時間にも、それまでとの違いが表れます。
ジョナサンによれば、普段なら約二週間で行う歌録りに、この作品では五〜六か月を費やしました。
場所を移しながら歌を仕上げる長い制作です。
厳しい要求を受けただけでなく、その要求に向き合う時間が、アルバムの中に積み重なっていました。

旋律的な歌唱が目立つようになったことは、発売後の取材でも話題になりました。
それに対して本人は、歌っている部分が増えてもKornの重さは保たれていると答えています。
きれいに音程をつなぐことと、バンドの激しさを弱めることを、同じ変化とは考えていなかったのです。

当時、ジョナサンが目標として語ったのは、美しい声とパフォーマンスを持つフレディ・マーキュリーでした。
『Untouchables』の歌も、荒々しさとともに旋律や強弱の幅が広がったと評されています。
激しい声を残しながら、歌として引きつける力も育てる。
その意識と制作上の要求が重なります。

2007年からの試みが、2018年のソロ作へ

ソロ作『Black Labyrinth』についての2018年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィス
ソロ作『Black Labyrinth』についての2018年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィス。
画像出典:画像掲載元

2018年に発表した『Black Labyrinth』は、発売年だけで歌の変化を区切れない作品です。
本人によれば、大部分は2007〜2008年に録音され、2018年に少数の曲を加えています。
映画『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』の音楽制作と、その楽曲を歌った2007年のツアーが、ソロ制作につながりました。
Kornのツアーなどを挟み、以前から育てていた表現が、ようやくアルバムになったのです。

声を置く音楽の幅も広がります。
電子音楽家エクシジョンの「Tension」で歌った経験から新しい可能性を感じ、スクリレックスとの共作へ進みました。
それが2011年の『The Path of Totality』につながります。
歌手を交代せず、声の周囲を大きく変えてみる。
ソロの完成を待つ間にも、Kornで試していたことです。

ソロでKornと同じ重い音楽を求められたとき、ジョナサンは、だからこそ別のものを作りたかったと説明しています。
映画音楽で出会った多様な楽器を取り入れ、実際の演奏家たちと録音しました。
伴奏を変えたこと自体が、声の能力が変わった証明にはなりません。
ここで広がったのは、自分の声を置く音楽と、その中で試せる表情でした。

歌の受け止められ方も変わります。
批評家のゲイリー・トゥルーマンは、このソロ作の静かな場面を評価し、苦悩と穏やかさの配分がKornとは異なると捉えました。
「What It Is」を含む作品全体を、別人の歌への転換ではなく、同じ声の中のバランスの移動として聴いていたのです。

一方、トム・コニックは「Please Tell Me」や「Everyone」にKornとの強いつながりを感じ、実験をもっと進められたのではないかと評しています。
同じ声が残ることを魅力と受け取る人も、新しい音楽へ踏み出す際の限界と受け取る人もいた。
ソロ活動は、過去を切り離して別の歌手になる試みとして、一方向に評価されたわけではありませんでした。

2019年、歌を整える力と、抑えきれない感情が同居する

『The Nothing』についての2019年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィスのステージ写真(Medios y Media)
『The Nothing』についての2019年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィスのステージ写真(Medios y Media)。
画像出典:画像掲載元

次のKorn作品『The Nothing』では、再び切実な感情が前に出ます。
前年に母と妻を亡くしたジョナサンは、悲しみだけでなく怒りも含め、その時々の感情を歌詞にしたと話しています。
最初から決めた筋書きを演じるより、制作しながら自分の経験に向き合うアルバムでした。
ソロ作の穏やかさから、そのまま静かな歌へ進んだわけではないのです。

冒頭の「The End Begins」などの泣き声について、本人は演出ではないと明かしています。
初めてその歌詞を歌った際、感情を抑えられなくなったという説明です。
録音経験を重ねても、歌う瞬間には予想外のことが起こる。
その生々しさを取り除かなかった点に、初期とのつながりがあります。

2022年『Requiem』、声を重ねる時間を取り戻す

『Requiem』では、制作への関わり方が変わりました。
それ以前の三作では、バンドから届く音楽に、ベーカーズフィールドで歌を加える形が中心でした。
今回は最初からメンバーと制作に参加し、自分が歌いたいと感じる曲を、その場で一緒に選べるようになりました。

ツアーの予定に追われず、歌の録音に時間をかけられたことも大きな違いです。
ジョナサンは、ELOやABBA、デフ・レパードなど、声を重ねて大きな響きを作る音楽から刺激を受けたと話しています。
声を一度強く出すだけでなく、異なる歌を何層も組み合わせて、作品の中で大きくする方向へ実験が広がりました。

本人は、この時期の録音を、自分にとっても特に大きなボーカル表現ができたものと捉えています。
「Start the Healing」などの背景には、声を選び、録り重ねる余裕がありました。

初期には、自分の感情を自分の声で歌う場所を得ました。
『Untouchables』では、その声へ厳しく向き合い、ソロでは表情の配分を変え、『Requiem』では録音した声の組み合わせを深めています。
技術を増やせば感情が整っていく、という一直線の歩みではありません。
磨いた歌も、抑えきれずに出る声も、自分の音楽に残してきた。
その両方を扱えるようになったことが、ジョナサンの変遷です。

曲ごとのスキャットや旋律、重ねた声の働きは、ジョナサン・デイヴィスの歌い方で掘り下げています。

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