nqrseの歌い方|低い声を、相手や曲に合わせて生かすラップと歌

nqrse、2017年11月4日(撮影:岡本麻衣) nqrse
nqrse、2017年11月4日(撮影:岡本麻衣)

nqrseの声は、共演する相手が変わると、違う輪郭を見せます。
高い声を受け止める低音、落ち着いたラップ、メロディーを受け持つ歌声。
曲の中で何を担当しているのか。
声と言葉の選択から、その特徴を見ていきましょう。

低く、芯のある声が、相手の高い声を引き立てる

FAKE TYPE.のトップハムハット狂は、nqrseの声を低くしっかりした声と捉え、自分の高めの声とのバランスのよさを語っています。
「Zillion playerZ」で注目したいのも、二人が同じ声にそろうことより、その違いです。
声の高さと質感が違うからこそ、歌い手が交代した時に、曲の景色が変わります。

原曲に、新しい言葉の流れを作る

カバー曲にラップを加える時、nqrseは元の歌詞を速く読むだけではありません。
自分で言葉を書き、元の曲に新しいパートを持ち込みます。
歌ってみたでありながら、作詞や構成にも関わる表現なのです。
メロディーのある歌と、言葉のリズムが前へ出るラップが交代することで、一曲の中に起伏が生まれます。

その言葉の運びは、他の人が歌う時にも意識されます。
天月が「ヒロイックシンドローム」のラップを依頼した際には、nqrseらしい雰囲気を意識して歌ったそうです。
nqrse本人も、自分がラップしているように感じたという反応を返しました。

天月にとっては、速いテンポに言葉を乗せる難しさもあった部分です。
ここで面白いのは、声そのものが違う歌い手でも、言葉の運びを意識すると、書き手の印象が生まれること。
nqrseの個性には、低い声の響きに加えて、言葉をどう並べ、曲に収めるかという面もあります。

「Kisaragi station」では、太いラップと歌声を織り交ぜる表現を見せています。
2020年の公演でもこの曲を歌い、その後には、めいちゃんとの「フィクサー」で鋭いラップを重ねました。
自分の曲の中で切り替える時と、相手の歌と組む時。
どちらにもラップとメロディーを行き来する面白さがあります。

あらきとの「ECHO」でも、伸びやかな高音とラップの組み合わせが、ライブの聴きどころになっていました。
相手と同じ高さの声を出して競う形ではなく、違う質感を持ち寄る形です。
曲の中で声が交代する瞬間に注目すると、それぞれの存在感がわかります。

nqrse、2017年11月4日(撮影:岡本麻衣)
nqrse、2017年11月4日(撮影:岡本麻衣)。
画像出典:画像掲載元

強く押すラップと、落ち着いたラップ

ラップを加える曲が、いつも同じ表情になるわけではありません。
「威風堂々」を披露した2017年の公演では、ラップを組み込んだ歌が力強さを生み、「パラサイト」ではluzとともに客席をあおっていました。
声を前へ出し、相手や客席とのやり取りに熱を作る表現です。

一方、FAKE TYPE.と共演した「アングラ劇場」では、落ち着いたラップの流れが特徴として挙げられています。
勢いを足し続けるのではなく、自分の声の落ち着きを生かして参加する。
同じラップという呼び方の中にも、押し出す力と、冷静な表情を保つ選択があります。

声の低さが似ていても、曲で作る気分は変わります。
音程と表情を分けて聴くと、ラップの幅をつかみやすくなります。

メロディーを渡す、メロディーを受け取る

「ユルファ」は、nqrseとDYES IWASAKIが制作したオリジナル曲です。
自分を含む三人が歌う曲で、作り手としても関わっています。

2019年のライブでは、センラとluzのラップに対して、nqrseがメロディーを担当する場面もありました。
歌い手の交代に加え、役割の交換も聴きどころです。

「泡沫の夜」――低い声で、場を静かに変える

「泡沫の夜」を歌った2023年の幕張公演では、R&Bの曲調と低音ラップが、にぎやかなステージに落ち着いた時間を作りました。
その後のあらきとの「インターネッツ・ディスコ」では、攻撃的な掛け合いへ移ります。
同じ公演の中で、声を届ける方向を切り替えていたのです。

この曲は、nqrseが詞を書き、ポリスピカデリーが曲を作った作品です。
ソロで前に立つ声も、トラックや録音の音作りと一緒になって届いています。
録音の響きをそのまま喉の使い方に置き換えるより、声と伴奏がどう組み合わさるかを聴くと、曲の落ち着きに近づけます。

「SUGAR」――書き手と歌い手が、別になる曲

Joint Beautyの「SUGAR」では、nqrseとsomuniaが歌い、詞と歌の旋律はYojo Seijiroが担当しています。
自作のラップを加えた曲とは、声が受け取る材料が違います。
他者の書いた歌を、自分の声で形にする仕事です。

曲を包むのは、ゆったりとしたJoint Beautyのトラック。
そこへ、異なる二人の歌声が重なり、時がたって薄れていく記憶を描きます。
ここでは言葉の速さを追うより、二人の声の違いが一曲の中でどう生きるかに耳を向けたいところです。

nqrseは、他の歌い手の声を生かす側に立つこともあります。
ローレン・イロアスへ「BRB」を書いた際には、低いキーを選びがちな本人の、高い声にも魅力を感じ、低音、ラップ、高音を盛り込んだと話しています。
一つの声の印象へ閉じ込めず、その人の使える表情を探す考え方です。

自分で歌うnqrseに耳を戻すと、低音を生かす掛け合いにも、旋律を受け持つ場面にも、それぞれ違う楽しみがあります。
まずは相手の声が入れ替わるところ、ラップから歌へ役割が移るところに耳を向けてみてください。
声質だけでは語り切れない、一曲の中での働きが見えてきます。

共演とソロの活動で、声の役割が広がった歩みは、nqrseの歌唱変遷でたどっています。

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