nqrse(なるせ)のラップを待っていたら、メロディーを歌う声が現れる。
そんな役割の入れ替わりは、ソロ曲「泡沫の夜」が広まる前から、共演の場で起きていました。
歌い手たちの曲に新しい言葉を加え、自分の歌でも場の空気を変える。
その歩みを、共演とソロの両側からたどります。
自分の言葉を、誰かの歌へ加える
nqrseの出発点を考える時、カバー曲に独自のラップを加える活動は欠かせません。
元のメロディーを自分の声で歌うだけでなく、新しい言葉とリズムを持ち込み、曲の流れにもう一つの入口を作る。
歌い手とのコラボレーションで存在感を発揮してきたのは、この作り手としての力と、声を届ける力が一体になっていたからです。
2016年末の初ミニアルバム『NEGATIVE』にも、そらる、あらき、まふまふ、luzが参加しています。
オリジナル曲を含む自分名義の作品でありながら、複数の歌い手と声を交わす構成でした。
「星座と魔法」ではそらる、「パラサイト」ではまふまふとluz。
自分の作品を作ることと、仲間と歌うことは、この時点ですでにつながっていました。
2017年の『XYZ TOUR』東京公演では、「パラサイト」をluzと二人で披露しています。
nqrseのラップとluzのメロディーが組み合わさり、二人で客席をあおる。
同じ公演の「威風堂々」でも、ラップを加えたアレンジが、原曲とは違う力強さを作っていました。
録音で作った言葉を、相手と客席のいる場所へ持ち出していた時期です。
同じ年の秋には、あらきとの『Will O Wisp TOUR』も行いました。
最終公演では、nqrse一人で「エメラルドシティ」を歌い、あらきが戻ると「ECHO」で高音とラップを組み合わせる。
一人の歌と、相手に応じる歌を、すでに行き来していました。
ソロの始まりを配信の開始年だけで区切ると、こうした公演での経験が見えなくなります。

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2019年――「ユルファ」で、いつもの役割が入れ替わる
2019年の横浜アリーナ公演の「ユルファ」では、センラとluzがラップをし、nqrseがメロディーを歌う場面もありました。
相手へラップを渡し、自分は旋律を受け持つ。
「泡沫の夜」以前から、声の役割を交換する選択をしていたのです。
2020年1月のあらなるめい公演では、その年の目標に「一」の字を選びました。
一人の活動にも力を入れ、XYZでは仲間と一つになる、という意味です。
ソロと共演の両方を大切にする考えを、本人が言葉にしていたのです。
後のソロ配信も、この二つを対立させずに見ると、歩みのつながりがわかります。
2021年――「泡沫の夜」で、自分の歌を届ける
2021年7月の「泡沫の夜」は、nqrseにとって初のソロ名義のデジタルリリースとなりました。
ただし、『NEGATIVE』などの作品は以前からあり、「初めて作ったオリジナル曲」という意味ではありません。
コラボレーションを通じて届いていた声が、自分名義の配信曲として、広く聴かれるようになった節目です。
作詞はnqrse、作曲はポリスピカデリー。
公式動画では、そらるがエンジニアとして参加したことも明かされています。
ソロとはいっても、一人ですべてを作る形ではありません。
言葉を自分で担い、トラックや音作りを仲間と組み上げることで、一曲の中心に自分の声を置いています。
翌2022年の「秒針」でも、nqrseとポリスピカデリーが作詞・作曲を分担しました。
こちらの公式動画には、ミックスにまふまふ、マスタリングにそらるの名前があります。
歌い手同士の関係は、マイクを並べる共演だけでなく、声を作品に仕上げる制作の側にも続いていたのです。
2023年――静かな曲も、ステージを動かす一曲になる
2023年10月、あらき、nqrse、めいちゃんによる幕張メッセ公演。
ここでは「泡沫の夜」の落ち着いた低音ラップが、それまでの熱気とは違うムードを作りました。
その後の「インターネッツ・ディスコ」では、あらきと攻撃的な掛け合いを繰り広げています。
以前からの勢いある共演に、自分のソロ曲で空気を変える時間が加わっていました。
ソロ曲が増えたことは、ラップの仲間から離れることでもありませんでした。
2022年の「CR ANTHEM」で共作したFAKE TYPE.は、翌年のアルバムにもnqrseを招き、「アングラ劇場」を制作します。
昔からのつながりがあり、トラック制作でも関わってきた相手との再共演でした。
曲名の背景にあるのは、FAKE TYPE.の二人が出会う前に曲を投稿していたサイトです。
トップハムハット狂によれば、その詳しい話を伝えていなかったのに、nqrseはルーツを思わせる言葉を入れてきたといいます。
共演曲に自分のラップを加える力は、相手が曲に込めた歴史を受け取り、応える力にもなっていました。
2024年以降――ルーツを残し、古い曲にも戻る
2024年の「Zillion playerZ」でも、FAKE TYPE.との共演は続きます。
ゲームのイメージソングとして制作された曲にも、ネットラップ出身というルーツが息づいています。
トップハムハット狂は、その文化を忘れずにいたいという思いも込めたと語っています。
同じ年の8月には、Reolの初の日本武道館公演で「オオエドランヴ」に参加しました。
長く関わってきた相手の節目に、もう一度同じ曲で立ち会ったのです。
2025年には、その公演をもとに新たに録音した「十年物Edition」も発表されました。
武道館のライブ映像と、この再録音は別の作品です。
新しい曲へ進む一方で、以前の共演曲を現在の作品として残す。
声の歩みは、昔の歌い方を捨てて先へ進む一本道ではありません。
仲間と作った曲へ戻ることも、今の活動の一部になっています。
「SUGAR」では、他者の書いた歌を受け取る
2025年のJoint Beauty「SUGAR」には、somuniaとともにボーカルで参加しました。
ここで詞とトップライン、つまり歌の旋律を作ったのはYojo Seijiroです。
自分でラップを書き加える仕事とは違い、用意された歌を声で届ける役割で加わっています。
Joint Beautyは、まずトラックを作り、生活のいろいろな場面で聴きながら、合う歌い手を思い描くと話しています。
ジャンルから予想できる顔合わせに収めず、自分の軸を持つ人と作りたいという考えです。
そうした制作を続ける相手の作品へ、nqrseも一人の歌い手として招かれました。
nqrseの歩みには、共演で役割を交換する時期、自分のソロ曲で空気を作る時期、他者の書いた歌を受け取る場面が重なっています。
ラップの個性を残しながら、声が引き受ける仕事が広がってきた。
その変化を見ると、低い声という一つの印象から、違う表情の曲へも耳を向けたくなります。
曲の中での声の組み合わせや、ラップとメロディーの使い分けは、nqrseの歌い方で掘り下げています。

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