高木祥太の歌い方|声、言葉、ベースの動きが重なる歌

2026年5月の取材に掲載されたBREIMEN(高木祥太は左から2人目) シンガー
2026年5月の取材に掲載されたBREIMEN(高木祥太は左から2人目)

高木祥太の歌い方を考えるときは、声そのものと、声を音楽の中でどう動かすかを、合わせて見ると分かりやすくなります。
BREIMENでは、言葉の響き、ベースとの組み合わせ、録音した声の加工までが、歌の表情に関わっています。
声を出して終わりではなく、その声を曲のどこへ置くかまで含めて、歌が作られています。

「スプモーニ」――曲に合わせて、歌う手応えを変える

2021年、内田怜央が評価したのは、高木の声が、親しみやすい曲にも独特な世界を持つ曲にもなじむ力でした。
当時の高木自身は、歌い方の選択肢が少ないと感じていました。
多くの声色を操ることとは別に、一つの声が異なる曲で働く魅力が、共演者には届いていたのです。

2024年の「スプモーニ」では、高木は腰を入れて歌う感覚が夏の曲に合うと考えました。
これは、本人が語る、曲に合った歌い方の手応えです。
「yonaki」と「乱痴気」でも歌い方は違い、それらを一つに統合するより、曲ごとに伸ばしたいと話しています。

2021年6月の大阪ワンマンにも、その幅が表れています。
DinoJr.とは「Black or White」で声を交わし、その後は舞台前方に腰かけ、ハンドマイクで「Lie on the night」を歌いました。
にぎやかな掛け合いから、歌をじっくり聴かせる場面へ移る構成です。
ここでの変化は、大きな声から小さな声へという尺度だけでは捉えきれません。
誰と歌うか、楽器を持っているか、どの距離から客席に向き合うかも、声の届け方を変える要素になります。

「苦楽ララ」――言葉の意味と、口に出す面白さ

高木は、日本語ならではの言い回しを調べ、言葉の意味と響きの両方に関心を向けています。
韻を踏む心地よさは、ラップをしていない歌にもあると考えていました。
つまり、言葉はメロディーに載せる内容であると同時に、音としても選ばれています。
意味の通った文章を同じ長さの音へ均等に配るだけでは、こうした面白さは生まれません。
言葉のまとまりと音楽のまとまりを、どう重ねるかが大切になります。

「苦楽ララ」では、その言葉とメロディーの結びつきが、朗読ともラップとも一括りにしにくい特徴として評されています。
高木自身は、作詞当時の切実な経験を曲にする必要があったと話していました。
深刻な題材だから、すべてを重々しい調子で説明するとは限らない。
言葉が音にはまる面白さと、書かれている経験の重さが同居するところに、この歌を考える手掛かりがあります。

「noise」と「ソングライター」――声の質感も曲の一部

「noise」の重なった声は、喉だけで作った響きではありません。
高木はデモの段階で、Logic上のボーカルデータを分けて貼り合わせ、プリズマイザーのような効果を作ったと説明しています。
SNS上の敵意から着想した言葉に、デジタルな声が合うと考えたのです。
本人の歌唱と録音後の加工が、一つの表現を作っています。

その一方で、高木は、すべての音を均一に整えることを目的にもしていません。
2024年には、音程を補正できる技術を、使う場所と使わない場所に分けて考える姿勢を語っています。
直せるものを全部直すのではなく、残したい感触を選ぶ。
加工された声を使うことと、細かな揺れや癖を残すことは、彼の中で矛盾していません。

2026年、TOMOOを迎えた「ソングライター feat.TOMOO」では、録音された歌とギターの距離にも意図があります。
高木は、ギターが近づいたように感じられる一方で声が遠くなる、といった場面の変化を作ったと説明しています。
その移り変わりを、気持ちの動きにも重ねていました。
近くにある声だけが、気持ちを伝えられるわけではありません。
楽器との位置関係を変えることで、同じ曲の中にも視点の移動が生まれます。

こうした録音の工夫は、歌い方と無関係な飾りではありません。
ただし、声が遠くなった印象を、息の量や喉の状態だけで説明することもできません。
本人がどう歌うかと、その歌をどんな質感や距離で届けるか。
二つを分けて捉えたうえで合わせると、録音された歌の表情を読み違えにくくなります。

2026年5月の取材に掲載された高木祥太
2026年5月の取材に掲載された高木祥太。
画像出典:画像掲載元

歌とベースが違う動きをしても、一つの曲になる

「乱痴気」では、細かなベースに細かな歌を組み合わせています。
高木がそれまで置いていた、弾きながら歌いやすいことという条件を外した曲です。
音源で作れたことを、舞台で一人が両方行う難しさまで含む選択でした。

一方、声を自由に動かす場面は、複雑な曲を正確に再現するときだけではありません。
『Live!ロックちゃん2023』の「ドキュメンタリ」では、演奏が途切れたところで客席から拍手が起きると、高木はまだ曲が終わっていないことを、その場のメロディーに乗せて伝えました。
会話をするために曲を完全に止めるのでなく、客席への言葉が歌の中へ入っていきます。
決められた歌詞を運ぶ声と、その場で応答する声が、同じ舞台で地続きになっていました。

発声を見直しても、歌の面白さは声の太さだけでは決まらない

2026年には、高木は発声を見直したことを明かし、「めんどいな…」で思い描いた歌を実現できたと話しています。
ジョージ林が感じた声の太さも、その時期に共演者が感じ取った変化です。
大切なのは、太さを一律の到達点にするより、本人が狙った表現に声を近づけられたということです。

声を出す前の準備にも、高木なりの区別があります。
2023年には、いつでも弾けるようにしておきたいベースに対し、歌には決まった準備があるほうがよいと話していました。
練習の詳しい内容は明かしていませんが、声に合う条件を整えることも、歌う行為の一部になっています。

「ファンキースパイス feat.TOMOO」では、展開が変わっても歌で筋を通すことを、高木は重視していました。
曲が複雑になるほど声も次々に変えればよい、という発想だけではありません。
歌が全体をつなぐ役目も持っています。

高木の歌い方には、言葉を音として組み立てる面と、相手や伴奏へ応答する面があります。
録音では声の質感や距離も選び、舞台では、その場で起きたことまで歌へ取り込みます。
声そのものの変化に加えて、その声をどう使うかの選択を見る。
すると、ベーシストとしての面白さを持ちながら、歌い手としても動き続ける姿が見えてきます。

歌い手としての選択が広がってきた歩みは、高木祥太の歌唱変遷でたどっています。

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