ジョナサン・デイヴィス(Korn)の歌い方|スキャット、旋律、重ねた声が作る迫力

『The Nothing』についての2019年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィスのステージ写真(Medios y Media) シンガー
『The Nothing』についての2019年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィスのステージ写真(Medios y Media)

「Freak on a Leash」のスキャットを思い浮かべると、ジョナサン・デイヴィスの歌には、言葉を伝える以上の働きがあると分かります。
声をリズムとして刻み、旋律を歌い、録音では何層にも重ねる。
Kornの声の迫力を考えるには、どれほど強く発声するかに加え、その声で曲の何を動かしているかを見る必要があります。

言葉を外した声が、リズムの中心になる

本人は「Freak on a Leash」の特徴的な声を、打楽器的なスキャットと説明しています。
背景には、ダグ・E・フレッシュなどのビートボックスがありました。
フィールディも、ジョナサンのDJやドラムの経験を、そのリズミカルな歌唱と結びつけています。
奇妙な声色に加え、声で拍や動きを作る感覚があるのです。

この曲の途中では、一般的なギターソロが担うような見せ場を、スキャットが引き受けます。
冒頭の囁くような歌と、言葉を離れたリズムの声では、耳を引く方法が異なります。
前者には文章があり、後者では声のまとまりや反復が前へ出る。
声色の強烈さと同時に、歌詞のある部分から別の働きへ切り替わることが、曲の展開を作っています。

ここでいうスキャットは、意味のある文章を歌う代わりに、声の音節で音楽を作る方法です。
ビートボックスも、口から出す音を打楽器のように扱います。
ジョナサンは、この二つの発想を自分の歌へ持ち込んでいます。
普通の言葉として聞き取れないからといって、歌詞を不明瞭に歌っているわけではありません。
何を言うかから、どんなリズムを鳴らすかへ、声の役目が移っているのです。

荒々しい声にも、旋律を歌う意志がある

『Untouchables』の頃、旋律を歌う面が強まったと評された際にも、ジョナサンはKornの重さが失われたとは考えていませんでした。
声が旋律をはっきり持つことと、音楽が穏やかになることは同じではありません。
メロディーとして追える歌の中に、激しさを残す選択もあるからです。

「Thoughtless」について、本人は自分たちの歌を、旋律的でありながら荒く怒りを持つものとして説明しています。
エヴァネッセンスによるカバーは美しいと評価しつつ、原曲との違いも意識していました。
同じ曲の旋律が保たれていても、誰がどんな表情で歌うかによって、受け取られる感情は変わります。

当時のジョナサンの歌を評した文章でも、声の強さと、揺らぐような弱さが同時に指摘されています。
大きく歌えば、自信のある人物に聞こえるとは限りません。
本人も、強い男を演じたいわけではないと説明していました。
Kornの歌にある痛々しさは、強い声を使っていても、傷ついている人の立場が消えないところにあります。

ソロでは、同じ声の中で穏やかさの比重を変える

ソロ作『Black Labyrinth』についての2018年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィス
ソロ作『Black Labyrinth』についての2018年の取材に掲載されたジョナサン・デイヴィス。
画像出典:画像掲載元

『Black Labyrinth』について、ゲイリー・トゥルーマンが注目したのは、静かな部分の歌唱でした。
苦悩に比べ、穏やかな感情を聴き取れる場面が増えたという見方です。
荒い声を出せなくなったという説明ではなく、一つの作品の中で、どの表情を前に出すかを捉えた評価でした。

「Everyone」の歌を、ナオミ・サンダースはグレゴリオ聖歌を思わせるものと評しています。
祈るような歌の印象を指した比喩で、クラシックの発声法を使ったと判定したわけではありません。
Kornで知られた声が、別の曲では儀式のような雰囲気を担う。
この例でも、声色の分類より、その声が曲にどんな表情を与えるかに注目できます。

「What It Is」には、2020年公開のカントリー版もあります。
ツアーバンドが、その場で曲を多様なスタイルへ変えられることから生まれ、本人が気に入ってナッシュヴィルで録音しました。
同じ曲を違う音楽の中で歌う発想が、別録音になった例です。
原版と分けて聴けば、歌の置かれ方も考えられます。

ソロでも、荒い声の見せ場は残っています。
2018年4月26日のオクラホマシティ公演を取材したクレア・ゼヴニックは、終盤の「Happiness」で、ジョナサンが客席へ合図してから特徴的な唸り声を放った場面を記録しています。
ずっと同じ強さで歌い続けるのではなく、客が待っていた声を一つの場面で聴かせる。
穏やかな表情を増やしても、強い声を使う選択まで手放したわけではありません。

大きく聞こえる声を、録音で組み立てる

『Requiem』の録音でジョナサンが行ったのは、三声や四声のハーモニーを歌い、それぞれを重ねて録る方法でした。
六本のマイクを用意し、同じマイクだけで済ませず、録る音の違いも組み合わせています。
一回の発声を極端に大きくするのとは別に、複数の歌声を合わせて厚みを作る方法です。
録音で感じる迫力を、そのまま一人が一度に出している声量と考えると、この工夫が見えなくなります。

ハーモニーは、違う高さの音を組み合わせることです。
それぞれの歌をさらに重ねれば、音の高さの組み合わせと、声の層の厚さの両方が変わります。
本人が語る『Requiem』の大きな声は、この録音上の組み立てを含んでいます。
喉の使い方だけに理由を求めず、歌った声をどう作品にするかまで見る必要があります。

ただし、録音を細かく作ることと、歌詞をいつまでも練り直すことは別でした。
ジョナサンが説明した順序は、音楽を仕上げ、歌のメロディーを作り、その後に歌詞を書くというものです。
言葉を決めたら歌い、考えすぎて曲を壊さないようにする。
声を重ねる作業には時間を使いながら、最初に歌へ入っていく勢いは保とうとしていました。

意図して作る声と、その場で出てしまう声

「The End Begins」に残る泣き声については、本人が、狙って演じたものではないと説明しています。
歌詞を初めて歌ったときに、感情があふれたという話です。
この声まで、再現可能な歌唱テクニックの名前へ置き換えると、歌った場面の意味が変わってしまいます。
計画した表現も、その場で起きたことも、録音には残り得るのです。

ジョナサンの歌を特徴づけるのは、声を一つの用途に閉じ込めないことです。
「Freak on a Leash」では声でリズムを動かし、「Thoughtless」では旋律に怒りを持たせ、ソロでは表情の配分を変える。
さらに『Requiem』では、別々に歌った声を重ねて厚みを作ります。
強烈な声色はその全体の一部です。
声が言葉、リズム、旋律、録音の層のどこを担っているかが分かると、Kornの歌の迫力も、より細かく捉えられるようになります。

録音や歌への向き合い方が変わった経緯は、ジョナサン・デイヴィスの歌唱変遷でたどっています。

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