ダン・レイノルズの歌を、声量だけで説明するのは難しいでしょう。
言葉をビートへ乗せる歌、柔らかな裏声、形が崩れることも恐れずに出した高音。
さらに、録音した声を重ねたり、高さを加工したりする方法もあります。
イマジン・ドラゴンズの大きなサビは、そうした違う声の使い方から作られています。
「Believer」は、声の強さとリズムを一緒に聴きたい
ダンは、歌うときにも打楽器のように考えると話しています。
「It’s Time」も、手をたたき、足を踏むリズムから生まれた曲。
声の旋律だけを後から乗せるというより、拍の感覚が曲作りの早い段階からある人です。
「Believer」には、ラップに近い言葉の運びがあり、声がビートの上で弾むようだとも評されています。
伴奏は打楽器を中心とし、ギターの音がところどころに入る構成。
声は旋律を歌う役と、リズムを押し出す役を兼ねています。
この曲を考えるときは、強く声を出す箇所だけに注目せず、短い言葉が続くところと、フレーズを大きく掲げるところの関係を追うと分かりやすくなります。
言葉を詰めて進む時間があるから、そのまとまりを抜けた声にも勢いが生まれる。
声量と音程だけをそろえても、言葉の進む速さや区切れ方が変われば、同じ印象にはならないのです。

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太い声で押し続けず、「Shots」では裏声へ移る
2015年のシドニー公演では、「I’m So Sorry」や「Friction」の明瞭で大きな声に対し、「Shots」ではソウルを思わせる裏声への切り替えが評されています。
一晩の中でも、曲によって声の質感を変える歌い手です。
裏声を使う意味は、強い声では届かない音へ逃げることだけではありません。
音の高さが同じでも、張った声と柔らかな声では、聴き手へ迫る距離感が変わります。
ダンの場合も、激しく歌う曲の隣に軽やかな高音の曲があることで、バンドの表情が広がります。
ただし、ここでの具体例はその公演の歌唱です。
すべての録音やライブで、同じ箇所を同じ声にしているという意味ではありません。
「Cutthroat」の荒さと、「One Day」の静けさ
「Cutthroat」の録音でルービンが求めたのは、曲を書いたときの感情を引っ込めないことでした。
ダンは、この曲の生々しさに制作側の後押しがあったと話しています。
同じ『Mercury – Act 1』の最後には、穏やかな子守歌のように感じていた「One Day」を置きました。
緊張を高める声と、聴き手を落ち着かせる歌は、一つの作品の中に共存しています。
この対照から分かるのは、強い表現をいつも最大にしているわけではない、ということです。
感情をむき出しにする曲では、荒さを残す判断が意味を持つ。
一方で、落ち着く時間を作る歌に、同じ切迫感を持ち込む必要はありません。
がなりの量を増やせばダンらしくなる、という捉え方では、この静かな側の選択が抜け落ちてしまいます。
「Follow You」の高音は、美しさだけを求めたものではない
「Follow You」では、自分の声を何度も重ねたハーモニーの後、さらに気持ちを高める歌が求められました。
ダンは、思い浮かんだ旋律が自分の音域を超えるように感じ、きれいには歌えないと思ったと説明しています。
それでも試した声を、ルービンは気に入りました。
同曲は、歌い直した録音より、独特な響きの部屋で録ったデモの声を生かしています。
整った録音環境なら必ずよい歌になる、という選び方ではありませんでした。
この高音の面白さは、何の苦労も感じさせずに届くこととは違います。
ハーモニーで気持ちが高まった後、そこからさらに声を差し出す。
その表現上の役割がありました。
高い音を出せたかどうかと、その声を作品に残したいかどうかは、別の判断なのです。
本人が語った難しさを、誰でも同じ出し方をすべきという発声法へ置き換えることもできません。
「Thunder」の高さは、裏声だけで説明しない
「Thunder」の高いフックは、娘の歌声ではなく、ダン本人の声を高く加工したものです。
肉声の太さが印象的な人だけに、この違いは大切です。
録音で聞こえる高さを、そのまま本人が生身で出している音の高さと考えることはできません。
しかも「Thunder」は、自宅の玄関付近で、パソコンに向かって録った歌から作られています。
特別なブースではなく、家族のいる生活の場所で生まれた声でした。
裏声に切り替えること、複数の歌を重ねること、録った音の高さを変えることは、それぞれ別の方法です。
どれも声を違う表情にできますが、同じ発声技術ではありません。
ダンの歌では、歌い手の身体から出る声と、録音として作る声の両方が、一曲の印象を担っています。
ライブの大きな響きには、声を届ける側の工夫もある

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初期のツアーで客席側の音を担当したスコット・アイゼンバーグは、ダンの声自体が強いため、少し音量差を整え、響きを加えることで前へ出せると説明しています。
残響を大きく広げる曲もあれば、短い反復音で親密さを作る曲もありました。
歌い手が出した声を、会場に合わせて届ける仕事も、歌の印象を支えています。
広い空間へ伸びて聞こえる声を、すべて本人の喉だけの働きとして捉えると、音響が作った広がりまで発声の特徴に含めてしまいます。
本人の声の強さを認めたうえで、その周りにどんな響きが足されているかを分けると、ライブの迫力もより具体的に考えられます。
「Kid」では、つぶやくような声から曲を作る
「Kid」の出発点は、歪ませたマイクを手に、ビートへ言葉をつぶやくように乗せた場面でした。
ダンは、最初から歌詞を完成させるのではなく、その場で出てきた言葉の中に気になるものがあれば、曲へ育てていくと話しています。
声に付いた歪みを、すべて喉で作った荒さと受け取らないことも大切です。
この曲ではマイクの処理も、発想の段階に関わっています。
口から出る声の勢い、機材を通した質感、言葉がビートに当たる感じが、一緒に曲を動かしているのです。
ライブでは、声の周囲の編成も変わります。
2024年の有明アリーナ公演には、「Demons」をピアノ弾き語りで聴かせる場面がありました。
大きな音と一体になって前へ出るだけでなく、歌い手へ視線が集まる形でも曲を届けています。
ダンの歌い方をつかむ鍵は、どの曲でも同じ強い声を探すことではなく、その声が何を担っているかを見ることです。
拍を動かす声、裏声の柔らかさ、感情を隠さない荒い声、重ねて広げる声。
それぞれの役割があるから、イマジン・ドラゴンズの大きなサビにも、曲ごとの違いが生まれます。
時代を通じて声との向き合い方が変わってきた過程は、ダン・レイノルズ(Imagine Dragons)の歌唱変遷でたどっています。

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