テヤンの歌い方|甘い声の中で、感情をどこまで出すか

2026年5月18日、『QUINTESSENCE』発表会でのテヤン(聯合ニュース) シンガー
2026年5月18日、『QUINTESSENCE』発表会でのテヤン(聯合ニュース)

テヤンの歌を、甘い声という一言で説明すると、大切な違いが抜け落ちます。
感情を抱えたまま歌う曲もあれば、伴奏が広がるのに合わせて大きく解放する曲もある。
声を前へ出すのか、音の中へ溶け込ませるのか。
その選び方を見ると、同じ歌手なのに曲ごとに表情が変わる理由が分かってきます。

泣きそうな感情を、最後まで抱えて歌う

「EYES, NOSE, LIPS」でテヤンが大切にしたのは、涙が出そうな状態を保つことでした。
強く泣き切るよりも、感情を抑えて残す。
声を大きくするだけでは表せない、未練の持続があります。
録音でも、細かな部分を何度もつなぐより、曲を通して歌ったテイクを選ぶ方法を取りました。
一つの音の出来栄えとともに、感情が途切れずに続くことを大切にしたのです。

その声を支えるのが、音を詰め込みすぎない伴奏です。
「EYES, NOSE, LIPS」は、ピアノの穏やかな響きに、濃さのある寂しい声を置きます。
力を抜いたような表情でも、感情まで薄くしてはいない。
歌い方を考えるなら、最初から悲しさを最大にするより、まだ言い切れない気持ちをどこに残すかが、この曲の重要な手掛かりになります。

同じバラードでも、声を開放する場所は違う

「SEED」では、別の流れが生まれます。
前半はピアノに寄り添った淡々とした声で、内面を整理するように進みます。
そこから弦とバンドの音が重なり、歌も大きな感情へ向かっていく。
抑えた状態を保つ「EYES, NOSE, LIPS」と比べると、こちらは前半と後半の落差が大切です。
初めから全力にすると、その後で広がる余地まで使ってしまいます。

「SEED」が向き合っているのは、1980〜90年代のバラードを、今の自分で歌い直すような感覚です。
同じ『Down to Earth』には、1970年代のソウルを捉え直した「I AM」もあります。
親しんできた音楽を土台にしながら、どんな気持ちを今の声で渡すのかを考える。
ジャンル名が同じでも、歌の出発点は一曲ずつ違います。

2017年、『WHITE NIGHT』発表時に掲載されたテヤン(YG Entertainment提供)
2017年、『WHITE NIGHT』発表時に掲載されたテヤン(YG Entertainment提供)。
画像出典:画像掲載元

リズムに乗る声にも、細かな感情を入れる

「I NEED A GIRL」について、テヤンは声へ細かく感情を持たせることを意識していました。
音の長さや高低が生む印象も含め、声に気持ちを乗せることが必要でした。

「I NEED A GIRL」の分かりやすい旋律は、甘い声を自然に受け止めます。
対して「YOU’RE MY」は、温かいローズピアノと歌声が中心です。
伴奏の厚みが違えば、同じ甘さでも、声へ集まる注意は変わります。
前者では曲の流れの中にある声、後者では声そのものの表情。
一律に装飾を増やすより、何が聞こえやすい編成なのかを考えると、歌い分けの意味が見えてきます。

「YOU’RE MY」の録音では、上手な仮歌をなぞっても、本人は納得できませんでした。
何度も試した末に必要だったのは、他人の完成した歌い方ではなく、自分の声でした。
きれいに再現できることと、自分がその曲を歌えていると感じることは、同じではなかったのです。

声を溶け込ませるか、前へ押し出すか

「WAKE ME UP」は、滑らかな声と、どこか寂しさを帯びた電子音を組み合わせた曲です。
声だけが伴奏から飛び出すのではなく、曲の質感へ溶け込むところに魅力があります。
一方、「DARLING」では、ピアノを背にした熱のある歌が前へ出ます。
同じアルバムでも、声と伴奏の距離は一定ではありません。

「DARLING」は、単に別れを嘆く曲としてつくられたわけではありません。
テヤン自身は、激しい感情が混じり合った愛の歌だと説明しています。
静かな編曲の中に大きなドラムが現れる構成も、その複雑さを支えます。
強い声を使うとしても、悲しいから強くするのか、相手へ思いを向けるから強くするのかで、言葉の届き方は変わります。

一人の声で埋めず、別の声と組み合わせる

「STAY WITH ME」では、後半に厚く重なるコーラスが、解放されるような大きさをつくります。
一人でさらに大声を出すのとは違い、複数の歌声を重ねることで曲の景色を広げる方法です。
同じ『RISE』の「LET GO」では、冷静さを感じさせる歌の表情が、ゴスペルの要素を持つ曲に独特の距離感を与えます。
ジャンルの定型的な熱唱を、そのまま当てはめているわけではありません。

「LOVE YOU TO DEATH」で女性の声を加えた際にも、音色の相性を考えていました。
デモに入っていた女性の声が独特だったため、韓国語でその役割を担える人を探し、CLへ依頼したのです。
自分が全部の表情を歌い分ける以外に、別の声を迎えることで、曲の中に必要な色をつくる方法があります。

声の高さと、録音でつくる質感を分けて考える

『QUINTESSENCE』の「MOVIE」では、高い声に加え、後ろに重ねた歌声が空間の広がりをつくっています。
対して「YES」は、立体的な音の中に、飾りを抑えた歌を置く曲です。
「4U」では、残響を加えた声が、歪んだ音と組み合わさります。
ここでは、歌手が出す声と、録音の処理で生まれる響きを分けて考える必要があります。
広がって聞こえる声のすべてを、喉の使い方だけで説明することはできません。

2026年5月18日、『QUINTESSENCE』発表会で話すテヤン(聯合ニュース)
2026年5月18日、『QUINTESSENCE』発表会で話すテヤン(聯合ニュース)。
画像出典:画像掲載元

その発想は初期にもあります。
『HOT』の「PRAYER」は、声へ電子的な加工を加えた曲でした。
加工した声も、曲の世界をつくる一つの音色です。
自然な声に聞こえるかどうかだけで良し悪しを決めると、歌声が担っている役割を見失ってしまいます。

踊るときにも、整えるだけで終わらせない

テヤンは、歌へ影響しないよう動きを計算しすぎると、自由に表現できなくなるとも語っています。
息を保つことを考える一方、その場のエネルギーを歌へ渡すことも必要になる。
舞台の自由さにも、声の表現は関わっています。

「LIVE FAST DIE SLOW」をつくる際には、ソロ公演で速く力強い曲が欲しいという実感がありました。
会場を動かす曲には、また違う声の役割があります。

テヤンの歌い方で注目したいのは、ずっと甘く、ずっと強く歌うことではありません。
気持ちを残す、後半へ力を取っておく、伴奏の中へ声を置く。
そして、必要な場面では大きく届ける。
声の良さを一つの形に固定せず、曲に合わせて使い直すところに、歌い手としての魅力があります。

ソロ初期から現在までの変化は、テヤンの歌声の変遷でたどっています。

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