ユンナの歌声の変遷|ピアノロックの鮮烈さから、声の置き場所を選び直すまで

2015年の来日取材時のユンナ。写真:Korepo シンガー
2015年の来日取材時のユンナ。写真:Korepo

ユンナの歌声をたどると、力強さを増してきたという説明だけでは収まらない歩みが見えてきます。
ピアノを弾きながら前へ出る声があり、柔らかな質感へ踏み出した歌があり、もう一度ボーカルを中心に据えた作品もある。
その先で彼女が選んだのは、いつも声を目立たせることではありませんでした。
どんな曲の中で、どのような自分を歌わせるのか。
その選び方の変化をたどります。

2005年の録音を収めた公式配信音源。

2004〜2007年|ピアノの前から飛び出してきた声

2004年に日本でデビューしたユンナは、翌年の「ほうき星」で広く名前を知られるようになります。
当時の持ち味は、澄んだ音色の中に芯のある声。
ピアノの弾き語りという姿も含めて、若い歌手の勢いが伝わる出発点でした。

韓国でも活動を始めた2006年には、歌への注文の違いにも触れています。
日本の制作現場では淡々と歌うよう求められ、韓国では、もっと感情を表に出すよう言われた。
これは本人が当時経験した違いですが、同じ歌でも表現を変える必要があると、早くから感じていたことが分かります。

2007年に韓国で発表した初のフルアルバムでは、その像に少し違う表情が加わります。
本人は、日本での最初のアルバムに幼さの残る声を表現していたのに対し、今度は少し大人びた少女のイメージだと説明しました。
速いテンポの曲をピアノで弾き、歌うことへの自信はそのままです。
同じピアノロックを土台に、歌の中で見せる年齢や表情を変え始めていました。

2008〜2009年|「強いユンナ」だけで歌わなくなる

2008年の『Someday』では、「Telepathy」に従来のピアノロックを残しながら、異なるジャンルの曲にも取り組みます。
ユンナは、自分はバンドではなくボーカリストであり、まだ見つけていない声を探したいと話していました。
得意な曲の中で完成度を高めるだけでなく、別の音楽に置かれた自分の声を試す。
録音で思いどおりにいかない悔しさも、この時期の挑戦の一部でした。

翌2009年の『Peace Love & Ice Cream』では、以前の強いイメージへのこだわりもほどけていきます。
幼く見えることを気にし、笑顔を見せず、強そうに振る舞っていた自分をやめたら、音楽が豊かになった。
本人の説明は、単に曲調が増えたという話より一歩深いものです。
歌手として守ろうとしていた姿を緩めたことで、アルバムに柔らかさや親しみやすさを持ち込めるようになりました。

2012〜2015年|自分で抱える音楽から、人に届く歌へ

2012年の『Supersonic』では、他の作り手と協力して、自分の音楽を形にする姿勢がはっきりします。
「RUN」は自作曲ではありません。
以前は作品のクレジットに自分の名前を多く並べたいと思っていたユンナも、仲間の力を借りたほうが、自分をよりよく表現できると考えるようになっていました。
何もかも自分で作ったかより、完成した歌で何を届けられるかへ、重心が移っています。

この頃には、人気のあるアイドルと競わなければという焦りからも、距離を取り始めていました。
自分の音楽を続け、コンサートやフェスティバルで人に会う。
誰かに追いつくために歌う姿勢から、自分の歌が届く場所を育てる姿勢へ変わったことも、再出発を支えました。

2015年、日本でのライブを準備する中では、昔の曲を覚え直す経験もしました。
自分の歌なのに、歌詞や旋律をあらためて勉強しなければならない。
しかも27歳になって向き合う歌詞は、以前と違う意味で胸に届くといいます。
同じ歌を歌うことが、そのまま昔の自分へ戻ることにはならなくなったのです。

2015年の来日取材時のユンナ。写真:Korepo
2015年の来日取材時のユンナ。写真:Korepo。
画像出典:画像掲載元

2017〜2019年|軽やかな声を試し、もう一度歌手として磨き直す

2017年末の『RescuE』は、大きな転換点でした。
GroovyRoomとの制作で、「Parade」には息を含む軽やかな声が現れます。
力強いロックの印象から離れた明るさを、本人も新たに試していました。
10代の勢いを再現するのでなく、その時の自分にも出せる明るい表情を探した作品です。

それに続く2019年の『STABLE MINDSET』では、歌そのものを前に出す方向へ向かいます。
「On A Rainy Day」をきっかけに、自分のバラードへ戻れると感じたユンナは、長くボーカルトレーニングを受け、生活も整え直しました。
新しい音作りを経験した後で、歌唱に集中する条件から作り直した点が、この時期の変化でした。

2021〜2023年|歌の物語と、今の自分の声を重ねる

2021年の『END THEORY』は、終わりを次の始まりへつなげるアルバムです。
カントリーポップ、アコースティック、モダンロック、バラードと、曲ごとの景色も変わります。
長くさまざまな曲を歌ってきた経験が、一つの物語の流れを作るために生きる作品になりました。

ユンナはこの頃、語り手のいる空間を想像し、その人物と一緒に歌うという方法も説明しています。
自分の感情だけでなく、歌の中にいる誰かの感情へ声を重ねる。
作品の景色が広がるのと一緒に、歌手が立つ場所も広がっていました。

続く2022年の「Event Horizon」は、大学祭のステージからも広がった曲です。
ユンナは、客席が自分の曲をよく知り、一緒に歌ってくれたことに驚いていました。
以前から応援してきた人たちが、その成功を喜んでくれる。
その姿が自信となり、次へ進む力になったと振り返っています。

2023年の『MINDSET』では、過去の曲をスタジオで一曲ずつワンテイク録音し、別の姿で差し出しました。
「Wind」は、2010年の日本でのアルバム収録曲を、韓国語と新しい編曲で歌い直したものです。
日本と韓国で発表してきた曲やドラマの歌を、今の声でつなぎ直す。
新曲を増やすだけでなく、すでに歌った曲にも新しい居場所を与えています。

2021年『END THEORY』の撮影風景。ユンナ/Melon掲載
2021年『END THEORY』の撮影風景。ユンナ/Melon掲載。
画像出典:画像掲載元

2024年以降|声が主役にならない場面も選べる

2024年の『GROWTH THEORY』では、海をめぐる物語に聴き手を迎えるため、声の置き方にも踏み込みました。
ユンナは、ボーカルを常に前へ押し出すのではなく、一部では艶を抑え、音楽の中へなじませるミックスを選んだと説明しています。
これは喉から出す声の変化だけではなく、作品の中で歌声をどこに置くかという選択です。
歌手が一歩引くことで物語を広げるところまで、表現の考え方が進んでいます。

2026年には、初のリメイクアルバム『SUB CHARACTER』を発表しました。
「Karma」など他の音楽家の曲を選び、自分の好みと解釈を重ねる作品です。
ユンナは、原曲と似ている部分、異なる部分を比べながら楽しんでほしいと伝えています。
ピアノロックという出発点から離れた経験も、再び歌に集中した時間も、他人の曲を自分の声で引き受ける現在へつながっています。

ユンナの歩みは、昔の声を捨てて新しい声に交換してきた歴史ではありません。
前に出る勢いを持ちながら、柔らかな質感を選び、言葉を読み直し、必要なら作品の中へ声を溶け込ませる。
その選択肢が増えたところに、長く歌ってきた人の変化があります。
曲ごとの声の使い分けは、ユンナの歌い方で詳しく見ていきます。

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