赤飯の歌では、一曲の途中で歌手が交代したように感じられることがあります。
けれど、女声とシャウトを一人で出せることだけで、その歌い方を説明しきれるわけではありません。
声を急に変える曲もあれば、異なる声を重ねる曲も、強い個性を抑えて歌う曲もある。
何を出せるかに加えて、どこで、どれくらい使うか。
その選び方をたどると、赤飯の歌の作り方が見えてきます。
女声から歪んだ声へ、一曲の勢いを作る
「チン♂アゲ⤴交渉中」の冒頭で赤飯が意識したのは、当時のK-POPの女性ボーカルのニュアンスでした。
そこから一気に、歪みを含む激しい声へ展開させる。
本人にとって得意な組み合わせを、曲を作る段階から生かした構成です。
女声は女性ゲストによるものではなく、赤飯自身が歌っています。
多彩な声を出すことが本人たちには当たり前になり、その説明さえ忘れがちだと話していました。
ただ種類を順番に披露するのでなく、最初の声が作った印象を、次の声で急に変える。
声色の落差が、曲の展開を強く感じさせる役割を持っています。
対して「推しのこメモリアル」では、最初から最後まで女声で歌っています。
日本の女性アイドルの曲を真剣に作りながら、観客の大きなコールが歌をかき消す場面まで盛り込んだ作品です。
切り替えの驚きでなく、一人のアイドルとして歌い続ける設定に、女声を使っています。
高さだけでなく、声の太さや揺れまでまねていた
赤飯は、モーニング娘。のメンバーそれぞれの声を、細かくまねて楽しんできました。
本人が挙げているのは、声の細さと太さ、ビブラートの揺れ幅、空気が混じる感じなどです。
同じメロディを歌っても、誰の声なのかが違って感じられる要素に注目していたのです。
高い音が出ることと、ある人らしく聴こえることは、別の課題です。
声を軽くするのか、太さを感じさせるのか。
音をどれくらい揺らすのか。
彼の女声を理解するには、音の高さに加えて、こうした音色や歌い回しへの関心を見る必要があります。

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実際、2011年の「緋毒の絆」では、一人で四人の登場人物を歌い分けるため、声色の調整に苦労しています。
特に難しかったのは父親と伊達政宗の違いでした。
どちらも太く歌おうとすると、声の差が付かなくなってしまったのです。
母親や弟の声も含め、自分の中にある声色を役に合わせて調整しました。
弟の小次郎はすっと声が出たといい、四役が同じ難しさだったわけではありません。
原案のキーは高すぎたため半音二つ分下げ、歌声自体は力を抜いて静かにしたと振り返っています。
太さを求めて押し続けるのでなく、人物同士の違いと、歌える高さを調整した録音でした。
多くの声を出せても、一つの作品の中で役割を分けるには、また別の工夫が要ります。
「恋愛レボリューション21」は、一人で声を重ねる
オメでたい頭でなによりによる「恋愛レボリューション21」では、落ち着きのあるAメロから、ポップなサビへ運ぼうとしました。
サビでは原曲のような厚みを求め、キャラクターを変えた四種類の声を、それぞれ重ねて録っています。
合いの手にも同様に複数の声を使いました。
実在のメンバーの声をそのまま再現する狙いではありませんでした。
まねる経験を生かしながら、声の人物像を分け、一人で集団の厚みを作る。
録音した声同士を重ねることが表現になっています。
勇ましく出るか、あっさり歌うかは、曲の役割で決まる
「乾杯トゥモロー」の冒頭では、赤飯は勇ましい歌を目指しました。
当初は曲の途中にあったこの部分を頭にも置き、初めて観るフェスの観客をつかもうとしたのです。
太く印象的な声には、出だしで注意を引く役割がありました。
同じシングルの「四畳半フォークリフト」では、反対の選択をしています。
最初の歌に作詞作曲者の324が求めたのは、主人公の気持ちをもっと理解して歌うことでした。
自嘲や諦めのある人物だと受け止めた赤飯は、スタジオの照明を落とし、従来よりあっさりと歌ったと話しています。
うまく歌えたという自分の手応えより、誰の気持ちを歌っているかが、声の強さを決めていました。
なお、同じシングルの「チャイルドプレイ」でラップを中心に担うのは、ぽにきんぐだむです。
バンドのさまざまな声を、すべて赤飯一人の歌と捉えないことも大切です。
素直な声ほど、すぐには決まらないこともある
「意味ない歌」で324が求めたのは、シャウトや女声ではなく、赤飯の素直でまっすぐな声でした。
曲は、シライシ紗トリの助言を受け、自己反省を歌う内容から、相手へ言葉を届けるラブソングへ変わっています。
誰に向かって歌うかが明確になった一方、歌入れは簡単には進みませんでした。
赤飯は、およそ300テイク録って、ようやく手掛かりをつかんだと振り返っています。
完成した歌がくつろいで聴こえても、作る過程まで気楽だったとは限らない。
強い声色を付ける得意技だけでは答えられない曲にも、繰り返し向き合っていました。

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声を小さくし、マイクからも離れる
「君がいるだけで」のカバーで赤飯が欲しかったのは、ゆったりとした温かさでした。
自分の歌としてそれまで最も声を出していないと説明し、マイクとの距離も大きく離して録っています。
大きな声で前へ押し出す代わりに、歌も伴奏も含めた空気を作ろうとしたのです。
本人は、理想へ完全に届いたとはしていません。
それでも、落ち着いた温かみをオリジナル曲にも取り入れていくための、重要な一歩だと考えていました。
声量とマイクの距離をともに見直した点に、この曲ならではの録音の工夫があります。
一方、「三百六十五歩のマーチ」では、伴奏にマリリン・マンソンの曲を連想させる要素を取り入れながら、赤飯は原曲の節回しや歌い方を大切にしました。
重い伴奏へ変えたからといって、歌まで全部ラウドに塗り替えるわけではない。
歌謡曲の味を残すことも、彼の声の選択です。
赤飯の声は、曲を驚きに満ちたものへ変えることも、物語や人の気持ちを静かに支えることもできます。
女声とシャウトの落差を楽しんだ後には、「意味ない歌」の素直さや、「君がいるだけで」の力加減も聴き比べてみる。
声を変える場面と、変え過ぎない場面の両方に、彼の歌の難しさと面白さがあります。
その選択が活動の中でどう広がったかは、赤飯の歌唱変遷でたどっています。







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