佐々木李子の歌唱変遷|役の声で歌って見つけた、低音の個性と表現の幅

『RI PATHOS』と自身の歌を語る2026年の取材に掲載された佐々木李子 シンガー
『RI PATHOS』と自身の歌を語る2026年の取材に掲載された佐々木李子

自分と違う声で歌ったことで、自分の歌い方が分かる。
佐々木李子は、2025年の取材で、キャラクターのかわいい声で歌う経験から、自分は低音を響かせる歌い方だと気づいたと話しています。
役のために選んだ声が、ソロ歌手としての自分を知る機会にもなっていました。

初めてキャラクターの声で歌うときには、不安もありました。
2025年の「Majestic Catastrophe」では、ささやく表現も自然にできるようになったと語り、コーラスまで自分で担っています。
役の声を探して歌う経験は、どのようにソロ歌手としての個性につながったのでしょうか。
2016年のデビュー時の録音から、2026年に自分の歩みを歌ったアルバムまでをたどります。

「カサブタ」で歌った自分と、初めて作る役の声

佐々木は、2016年6月に「カサブタ/想いのかけら/ドリームクライマー」でメジャーデビューしました。
「カサブタ」を録音する前には、歌詞を手書きしながら、歌の主人公がどんな状況にいるか、どんな気持ちで歌いたいかを考えていたと話しています。
心を閉ざしたり、人前で強がったりする主人公に、自分の経験を重ねていました。

歌うときには、過去の自分になりきる気持ちで、内側の思いを訴えようとしたそうです。
その世界に入り込んで夢中になり、録音はあっという間に終わったと振り返っています。
歌詞の気持ちを、自分の中にある感情から声にすることが、この曲での取り組みでした。

ところが、同じ時期のキャラクターソングでは、違う難しさに直面します。
『美少女遊戯ユニット クレーンゲール』の響子役として加わった「おまかせクレーンゲール」は、初めてキャラクターの声を作って歌う経験でした。
それまで佐々木李子として歌っていた本人は、どのように役になりきって歌えばよいか、不安だったと話しています。

響子の性格や家族への思いを見直し、録音の場でもいろいろな声を出して研究しました。
感情を込めて歌うことに加え、役に合う声で歌い続ける、という課題があったのです。
この段階では、その声の選び方を、録音しながら探していました。

初めてキャラクターの声で歌う難しさを語る2016年6月の取材に掲載された佐々木李子
初めてキャラクターの声で歌う難しさを語る2016年6月の取材に掲載された佐々木李子。
画像出典:写真掲載元

かわいい声を保って歌うことで、低音の特徴を知る

その後、佐々木は『邪神ちゃんドロップキック』で、ぽぽろんを演じます。
2018年のアルバム『瞼の裏に映るもの』にも、その作品の挿入歌「ミライドライブ」が収録されました。
自分の曲を歌う声とは異なる、キャラクターとしての歌も、彼女の活動の中に増えていきます。

2025年6月のリスアニ!の取材で、佐々木は、ぽぽろんのキャラクターソングを歌う難しさを振り返っています。
普段の自分とは正反対といえるほど違う、アイドルのようなかわいい声で歌い続けなくてはいけなかったそうです。
曲の途中だけ声を変えるのではなく、その声で一曲を担うことが求められました。

一方で、その経験から、普段は使わない声の出し方で歌う感覚を知ったとも説明しています。
そして、自分は低音を響かせる歌い方なのだと気づくことができた。
別の声を選んで歌うことで、いつもの自分の声との違いが見えてきたのです。

役から知ったのは、声の使い方だけではありませんでした。
ぽぽろんの小悪魔のような気持ちは、自分の曲では歌わず、自分が作詞するときにも出てこないものだったと話しています。
そうした人物になりきることで、歌える気持ちや、表現できる世界も広がっていました。

ここでいう変化は、低い声が新しく出るようになった、という話ではありません。
かわいい声で歌う経験を通じて、もともとの自分の歌い方に気づき、別の感情を歌う方法を知った、という発見です。
声を増やすことと、自分の声を知ることが、同じ経験の中にありました。

声色を変えられることが、自分の個性になった

2023年、佐々木は、対になるミニアルバム『暁』と『宵』を発表しました。
前向きで暖かい曲と、悩みや毒を含むダークな曲を、それぞれのコンセプトに合わせて収めた作品です。
ソロ名義でも、違う世界の歌を並べて届けています。

同年のSBSラジオの番組取材では、曲に合わせて雰囲気や声色を自在に変えられることが、自分の個性だと話しました。
気持ちの持ち方によって歌い方も大きく変わり、自分でも本当に自分が歌ったのかと思うことがあるそうです。
声を一つの印象にそろえることよりも、曲ごとに変わる声を、自分の特徴として受け止めていました。

2016年には、キャラクターの声をどう作ればよいかを不安に感じていました。
そこから役の歌を重ね、自分の低音や、普段は歌わない気持ちを知る。
2023年の言葉は、違う声を選ぶことが、歌手としての個性にもなっていたことを示しています。

ただし、本人は2026年の激ロックの取材で、ミュージカルからロックへ大きく方向を変えたという感覚はない、と話しています。
どの場でも、自分の思いを声や身体で表すことを大切にしてきたと捉えていました。
活動する場所や歌う曲が広がっても、本人の中では、表現への関心が続いていたのです。

キャラクターソングから知った自分の低音について語る2025年6月の取材に掲載された佐々木李子
キャラクターソングから知った自分の低音について語る2025年6月の取材に掲載された佐々木李子。
画像出典:写真掲載元

「Majestic Catastrophe」で自然に出せるようになった表現

2025年の「Majestic Catastrophe」は、ソロとしてシンフォニックメタルの大きな世界に向き合った曲です。
その取材で佐々木は、さまざまな作品の経験を経て、表現の方法は確実に進化したと話しています。
具体的に挙げたのは、楽器の繊細な音色に寄り添うことや、ささやくように歌うことでした。

そうした歌い方が、頭で考えなくても自然にできる部分になってきたというのです。
初めて役の声を作ったときには、現場でいろいろな声を出し、研究する必要がありました。
2025年の本人の言葉からは、選べる表現が増え、それを歌の中で自然に使えるようになった変化が分かります。

この曲では、主旋律に加え、重厚なコーラスも自分で担当しました。
もともとは別の歌い手に依頼する予定でしたが、佐々木が練習していたコーラスを現場で試すと、その声で録音しようという話になったそうです。
一曲の中に、本人が別の役割で歌う声が重なっています。

曲の主人公としての声と、コーラスを歌う声の出し方については、佐々木李子の歌い方で詳しく取り上げています。
ここでは、役や曲のために声を探してきた経験が、ソロ曲の大きな表現の幅にもつながっていたことに注目したいと思います。

作り込む声も、素の自分の歌も残す

2026年6月のアルバム『RI PATHOS』では、佐々木は自分の人生を見つめ、ロックを軸に一枚の作品へまとめました。
一曲ごとの世界に入って歌ってきた人が、自分を構成するものを捉え直す機会でもありました。
その初回限定盤には、「てづくりのうた」がボーナストラックとして収録されています。

これは、本人が初めて作詞・作曲し、2019年に初めてライブで披露した曲です。
当時は、強く、かっこよく、完璧でいなければいけないと思っていたと話しています。
けれど、自分で最初の曲を書くときには、その時点のありのままの気持ちを書こうとしたそうです。

2026年のUSENの取材では、この曲の自分は、友達やファンと話しているときの自分だと説明しています。
取材者も、普段の話し声に近い柔らかさを、激しい曲を歌う声との違いとして受け取っていました。
大きな世界を作って歌う声と、普段の自分に近い歌を、一枚のアルバムに残したのです。

佐々木李子は、自分と違う役の声で歌うことで、低音の特徴や、まだ知らなかった気持ちを見つけてきました。
その先では、繊細な歌い方を自然に選べるようになり、作り込んだ声と素の歌の両方を、自分の表現として届けています。
変化してきたのは、声色の数だけでなく、それぞれの声をどう使い、どう自分の歌として受け止めるかという部分でもあったのです。

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