CHiCO with HoneyWorks・CHiCOの歌い方はなぜ物語が見える?高音・発声・声色を分析

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CHiCOさんの歌声は、明るく伸びる高音だけで説明すると大事なところを取りこぼします。
本当の面白さは、歌うたびに本人が前へ出るのではなく、曲の主人公が見える位置まで声を変えられることです。

デビュー曲の録音では、きれいに歌うだけでなく「少しかすれさせる」という方向を教えられました。
そこから約8年、かわいい恋心、迷い、反抗心、勝負への執念まで、物語に必要な声を増やしていきます。

ところがソロ活動で求められたのは、技をさらに足すことではありませんでした。
役を演じるために身につけた表現をいったん引き、自分自身の言葉として歌うことだったのです。

デビュー曲の高音は「きれいに歌う」だけでは完成しなかった

2014年の「世界は恋に落ちている」は、CHiCOさんにとって初めての本格的なレコーディングでした。
コーラスまで含めると収録には約12時間かかり、細かなディレクションを受けながら声を作ったと本人は振り返っています。

その中でも興味深いのが、少しハスキーに歌うよう求められたことです。
透明感のある高音なら、雑味をなくした方がよさそうに思えます。
しかし曲に必要だったのは、音程の正しい優等生の声ではなく、迷いながら恋をしている人物の体温でした。

かすれは、喉を傷めて作るものではありません。
ここでのポイントは、声を荒らす手順ではなく、同じメロディーでも「誰が、どんな気持ちで話しているか」によって音色の正解が変わることです。

CHiCOさんの高音がアニメの映像や物語になじむのは、明るい声質だけが理由ではありません。
デビューの時点から、声を本人の名刺ではなく、登場人物のための衣装として扱う考え方が始まっていました。

曲の主人公が変わると、同じ高音でも役割が変わる

活動を重ねるにつれ、本人は曲ごとにどんな声が合うのかを深く考えるようになったと話しています。
最初はレコーディングもライブも初めてでしたが、作品の世界や登場人物を理解するほど、選べる表現が増えていきました。

「アイのシナリオ」で必要な声と、「私、アイドル宣言」で必要な声は同じではありません。
前者では物語を先へ運ぶ張りや緊張感が求められ、後者では人物の愛らしさと勢いが前へ出ます。
歌手の個性を固定するより、物語に合わせて個性の見せ方を変える発想です。

これは声色を何種類も持つ声優的な器用さだけを意味しません。
一語を強く置くのか、少しやわらげるのか、語尾を堂々と終えるのか、余韻を残すのか。
初心者にも聞き取りやすい小さな選択が積み重なり、主人公の性格になります。

LiSAさんの鋭い高音が言葉を強い一撃に変える歌い方だとすれば、CHiCOさんは言葉の持ち主そのものを曲ごとに入れ替えていくタイプです。
どちらもアニメ作品と結びつく歌声ですが、物語への入り方は一つではありません。

「決戦スピリット」で声区より先に選ばれたもの

力強い物語を背負って歌うCHiCO

高音の解説では、「ここは地声か、裏声か、ミックスボイスか」が最初の話題になりがちです。
CHiCOさん自身も「決戦スピリット」の高いフレーズで、裏声系の声にするか、地声感を残すかを制作陣と相談しています。

選択は、出しやすい方を機械的に採用することではありませんでした。
一番と二番で印象を変えることも含め、曲の勝負感をどう届けるかを考えて決めています。
声区は正解を当てる問題ではなく、場面を成立させるための選択肢だったのです。

この事実は、CHiCOさんの高音を一語で分類しにくい理由でもあります。
同じ歌手でも、音の高さ、前後の言葉、人物の感情によって厚みを変えます。
一曲を聞いて「全部が強い地声」と決めると、意図して軽くした場所や、響きを移した瞬間が見えなくなります。

力強さを参考にするなら、音量だけを真似しない方がよいでしょう。
強く聞こえる声の裏には、どの言葉で厚みを残し、どこで別の声へ渡すかという設計があります。
喉を押して同じ色を保つことは、その設計とは反対です。

2022年に見えたのは、声が一種類ではないという自覚

長く同じユニットで活動すると、代表的な声のイメージが固まりやすくなります。
CHiCOさんにも、明るく真っすぐなアニソン高音という印象がありました。

しかし本人は、アルバム制作を通して、自分の中にいくつもの声や歌い方があると気づいたと語っています。
パワフルなロックだけでなく、力を抜いた歌、民謡的な節回し、巻き舌、かわいさを前へ出さないクールな表現にも取り組みました。

ここで声の幅を「何でも歌える」という便利な褒め言葉にまとめると、変化の意味が薄れます。
増えたのは単なる技の数ではなく、曲に対してどの自分を出すかを判断する材料です。

Reolさんの速い言葉をビートに変える歌い方にも、声や発音を曲の設計へ合わせる面白さがあります。
CHiCOさんの場合は、その設計が架空の主人公の気持ちと強く結びついている点が特徴です。

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ソロ活動で初めて必要になった「表現を引く」勇気

ソロ活動で自分自身の言葉と向き合うCHiCO

2023年にCHiCO with HoneyWorksが一時活動を休止し、ソロプロジェクトが始まりました。
この転機で本人が向き合ったのは、高音の上限を伸ばすことより、「自分は何を届けたいのか」という問いでした。

ユニットの曲には主人公と物語があります。
本人はそこに寄り添う語り部として、感情を少し大きく見せることも必要だと考えてきました。
一方、ソロでは借りられる役がなく、等身大の自分として歌わなければなりません。

そこで起きたのが、足し算から引き算への転換です。
それまで身につけた強調や声色を減らし、言葉を自分の感覚から出すことを試しました。
技術を捨てたのではなく、いつ使わないかを学んだのです。

この経験を知ると、チコハニの声も違って聞こえてきます。
あの明るさや勢いは、本人がそれしか出せなかった結果ではありません。
物語を読者へ渡すため、意識的に表現を足していた面が見えてきます。

再始動後のCHiCOは「演じる人」から「選んで演じる人」へ

2025年の再始動は、2014年の歌い方へ戻るだけの出来事ではありませんでした。
ソロで自分自身を歌う難しさを経験した後、もう一度物語の語り部を選んでいます。

デビュー時は制作陣から方向を受け取り、その声へ近づいていきました。
現在は、多くの声を試し、引き算も知ったうえで、主人公に必要な表現を自分から選べます。
同じ明るい高音でも、その内側にある主導権が変わったのです。

CHiCOさんの歌い方を理解する時は、最高音や声区だけを追うより、二つの曲で人物の距離を比べてみてください。
歌手本人の顔が前へ出る曲、登場人物がすぐそばで話しているように感じる曲、遠くから物語を語る曲があります。

表面のかすれや力強さを真似する必要はありません。
参考にできるのは、ひとつの声を守ることより、曲が誰の言葉なのかを考えて声の量を変える姿勢です。

CHiCOさんの歌声がどう変わったかを時系列でたどると、教えられた声が、選べる声へ変わっていった過程がさらに分かります。
CHiCOさんの高音から物語が見えるのは、生まれ持った明るさだけでなく、表現を足すことも引くことも覚えたからです。

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